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ヤイトムシ目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤイトムシ目
Hubbardia pentapeltis
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモガタ綱 Arachnida
階級なし : 蛛肺類 Arachnopulmonata
階級なし : 四肺類 Tetrapulmonata
階級なし : 脚鬚類 Pedipalpi
階級なし : 有鞭類 Uropygi
: ヤイトムシ目 Schizomida
学名
Schizomida
Petrunkevitch, 1945
  • ケリヤイトムシ科 Calcitronidae
  • サワダムシ科 Hubbardiidae
  • ムカシヤイトムシ科 Protoschizomidae
  • ヤイトムシ科 Schizomidae

ヤイトムシ目学名Schizomida)は、鋏角亜門クモガタ綱に所属する節足動物の分類群。ヤイトムシ(ヤイトムシ類)と総称される小さな土壌生物である。

サソリモドキと似通った外見を持ち、英名も「short-tailed whipscorpion」(尻尾の短いサソリモドキ/ムチサソリ)と呼ばれている。両者は系統的にも類縁であり、かつてヤイトムシ自体がサソリモドキに含まれた[1]

形態

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ヤイトムシの体
PP:propeltidium
MS:mesopeltidium
MT:metapeltidium
T1:後体第1節(腹柄)
T2-T9:後体第2-9節
AP:後体第12節(尾部第3節)
FL:尾節(雄)

大きさは1cmに満たない小動物である。胴体は縦長く、分節のある前体(頭胸部)と楕円形の後体(腹部)からなり、その間はややくびれる。

前体は細長く、背甲は3セットの「peltidium」という外骨格に分かれる[1]。前の1枚(propeltidium)は鋏角から第2脚までを覆う。そこにある眼は往々にして退化的である[1]。残りの2枚(mesopeltidium・metapeltidium)はそれぞれ第3と第4脚に対応しており、いずれも更に中心から左右2枚に分かれる。この特徴は「分かれた中心」を意味する学名「Schizomida」の由来ともなる。前体の腹側は、前後に三角形の腹板をもつ[1]

鋏角サソリモドキのように、はさみ型に近い亜鎌状となる。触肢は頑強で垂直に畳んだ鎌状となり、捕獲用の付属肢となる。第1脚は細長く歩行には用いず、前に伸ばして触角のように使う。残りの3対の脚は歩行に用いられる[1]

後体は楕円形で12節からなり、前体とつながる第1節はやや狭まる(腹柄)。次の第2節は生殖口蓋と1対の書肺をもつ[1]サソリモドキとは異なって第3節は書肺を欠如しており、これは二次的退化による結果と考えられる[1]。末端の3節(尾部)は短い環状で細くなり、短い尾節を持つ[1]

Hubbardia pentapeltis の雄の尾節
Rowlandius potiguar の雌(左)と雄(右)、触肢(矢先)に性的二形をもつヤイトムシの1種。尾節の相違点にも注目。

性的二形尾節から明瞭に見られる[1]。雌の尾節は単純の短い糸状で3-4節に分かれるが、雄の尾節は特殊化して節に分かれていない。一部の種類では、雌に比べて雄の触肢は明らかに長くなる個体をもつ[2]

習性

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肉食性。湿度が高くて暗い場所を好み、落ち葉や石の下、洞窟内などで生息する[3]

配偶行動としては、婚姻ダンスを行うものが知られている。雌は雄の尾節に掴まり、前後につながって移動し、雄が地上においた精包を受け取る。産卵時には雌は地中に小さな穴を掘って潜り、卵を腹につけて孵化まで保護する。

分布と分類

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世界の熱帯を中心に広く分布する。日本では琉球列島にヤイトムシ、ウデナガサワダムシ、小笠原諸島にサワダムシなどを産する。

サソリモドキ

クモガタ類の中で、ヤイトムシとサソリモドキは近縁であり、かつてヤイトムシがサソリモドキに含まれる時期もあった(有鞭類#定義の変遷、およびサソリモドキ#呼称も参照)。この2群は、形態と繁殖行動に少なからぬ共通点をもち[4]、まとめて有鞭類(Uropygi)を構成する[5]

下位分類

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  • ケリヤイトムシ科 Calcitronidae
  • サワダムシ科 Hubbardiidae
  • ムカシヤイトムシ科 Protoschizomidae
  • ヤイトムシ科 Schizomidae

参考画像

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参考文献

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  • 内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、中山書店。

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i A., Dunlop, Jason; C., Lamsdell, James. “Segmentation and tagmosis in Chelicerata” (英語). Arthropod Structure & Development 46 (3). ISSN 1467-8039. https://www.academia.edu/28212892/Segmentation_and_tagmosis_in_Chelicerata. 
  2. ^ Santos, Adalberto J.; Ferreira, Rodrigo Lopes; Buzatto, Bruno A. (2013-05-22). “Two New Cave-Dwelling Species of the Short-Tailed Whipscorpion Genus Rowlandius (Arachnida: Schizomida: Hubbardiidae) from Northeastern Brazil, with Comments on Male Dimorphism” (英語). PLoS ONE 8 (5): e63616. doi:10.1371/journal.pone.0063616. ISSN 1932-6203. PMC 3661548. PMID 23723989. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0063616. 
  3. ^ ヤイトムシhttps://kotobank.jp/word/%E3%83%A4%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%A0%E3%82%B7コトバンクより2020年10月17日閲覧 
  4. ^ Shultz, Jeffrey W. (2007-06-01). “A phylogenetic analysis of the arachnid orders based on morphological characters” (英語). Zoological Journal of the Linnean Society 150 (2): 221–265. doi:10.1111/j.1096-3642.2007.00284.x. ISSN 0024-4082. https://academic.oup.com/zoolinnean/article/150/2/221/2607396. 
  5. ^ Garwood, Russell J.; Dunlop, Jason (2014-11-13). “Three-dimensional reconstruction and the phylogeny of extinct chelicerate orders” (英語). PeerJ 2: e641. doi:10.7717/peerj.641. ISSN 2167-8359. https://peerj.com/articles/641/. 

関連項目

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