ムラサキシキブ
ムラサキシキブ | |||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Callicarpa japonica Thunb. (1784)[1][2] | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Japanese beautyberry |
ムラサキシキブ(紫式部、学名: Callicarpa japonica)はシソ科[注 1]の落葉低木である。日本各地の林などに自生し、また果実が紫色で美しいので観賞用に栽培される。
特徴[編集]
落葉広葉樹の低木で[3]、高さ3メートル (m) 程度に成長する。小枝はやや水平に伸びる。
葉は対生で長楕円形、鋭尖頭(先端が少し突き出すこと)、長さ6 - 13センチメートル (cm) 。細かい鋸歯がある。葉色は黄緑で洋紙質、薄くて表面につやはない。初めは表側に細かい毛があることもある。葉の裏側には黄色の腺点がある[3]。
花期は初夏から夏(6 - 7月ごろ)[3]。対になって葉腋から集散花序を出して、小さな淡紫色の花が咲く[3]。秋に果実が熟すと紫色になる。果実は直径3ミリメートル (mm) で球形。栽培品種には白実のものもあり、シロシキブ(学名: Callicarpa japonica var. japonica f. albibacca[4])とよばれる[3]。
名前の由来は、紫色に熟す実を、平安時代の女性作家である紫式部に例えたものだというのが通説である[3]。しかし、この植物にこの名が付けられたのはもともと「ムラサキシキミ」と呼ばれていたためと思われる。「シキミ」とは重る実=実がたくさんなるという意味。[要検証 ]
スウェーデンの植物学者のカール・ツンベルクが学名を命名した[2]。
分布など[編集]
北海道、本州、四国、九州、琉球列島まで広く見られ、日本国外では朝鮮半島、中国、台湾に分布する[3]。山野[3]や低山の森林にごく普通に見られ、特に崩壊地などにはよく育っている。ムラサキシキブ(コムラサキ、シロシキブ)の名所として、京都・嵯峨野の正覚寺が有名である。
変異[編集]
非常に変異の幅が広い植物で、栽培もされるため、園芸品種もある。特に果実が白いものはシロシキブと呼ばれ、よく栽培される。その他に果実の小さいコミムラサキシキブ、葉の小さいコバノムラサキシキブなどの名称で呼ばれるものもある。ただし栽培品には下記のコムラサキもあるのでその点には注意されたい。
オオムラサキシキブ[編集]
より大きな変異としては変種として扱われるものにオオムラサキシキブ(学名: Callicarpa japonica var. luxurians[5])がある。岩手県の準絶滅危惧の種に指定されている[6]。基本変種に比べて葉は厚く大きく、長さ20cmにも達する。枝や花序も一回り大きい。本州以南に見られるとされ、やや南よりの分布を持つ。『琉球植物誌』では琉球列島のものはすべてこれであると判断している。しかし、この二者は典型的なものでは一目で全くの別物と思えるほどに異なるのに、中間的なものが結構あり、明確な判断が難しい例も多い。
近似種など[編集]
コムラサキ[編集]
コムラサキ(学名: Callicarpa dichotoma[7])も、全体に小型だが果実の数が多くて美しいのでよく栽培される。別名コシキブ[7]。和名の由来は、紫色の実が美しく、平安時代の作家・歌人で知られる紫式部にちなむ[8]。落葉低木で、山麓や原野の湿地に自生する[8]。枝は細く、紫褐色をしている[8]。葉は倒卵状楕円形[8]。花期は夏(6 - 7月ごろ)で、葉の付け根から散形花序を出して、薄紫色の花を咲かせる[8]。果実は紫色に熟す[8]。本州、四国、九州、沖縄、朝鮮半島、中国、台湾に分布する[8]。岩手県で絶滅、その他多数の都道府県でレッドリストの絶滅寸前・絶滅危惧種・危急種・準絶滅危惧の種に指定されている[9]。庭木としての利用も多い[8]。
ムラサキシキブとは別種であるが混同されやすく、コムラサキをムラサキシキブといって栽培していることが大半である。全体によく似ているが、コムラサキの方がこぢんまりとしている。個々の特徴では、葉はコムラサキは葉の先端半分にだけ鋸歯があるが[8]、ムラサキシキブは葉全体に鋸歯があることで区別できる。また、花序ではムラサキシキブのそれが腋生であるのに対して、コムラサキは腋上生で、葉の付け根から数mm離れた上につく。
ウラジロコムラサキ[編集]
ウラジロコムラサキ(学名: Callicarpa parvifolia[10])は、環境省のレッドリストで絶滅寸前の種に指定されている。小笠原諸島の固有種で父島では絶滅し、兄島に少数の個体が残っている[11]。
絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)
その他[編集]
○○ムラサキシキブという名は、ムラサキシキブの品種または、変種に付けられている。ムラサキシキブ以外のムラサキシキブ属の植物には、○○ムラサキと言う名が付けられている。
そのほか日本に自生する似たものにはヤブムラサキC. mollis、トサムラサキC. shikokiana などがあり、同属は東アジア、東南アジア、アメリカ大陸、オーストラリアなどに数十種がある。
利用[編集]
庭木や花材にするほか、まっすぐで丈夫な幹からとれる材は道具の柄に使われた[3]。
その花と、むしろ果実を愛でる目的で栽培されることがある。ただし、上記のように、この名で栽培されているものは往々にしてコムラサキである。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa japonica Thunb. ムラサキシキブ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月7日閲覧。
- ^ a b “Callicarpa japonica Thunb.(ムラサキシキブ)” (英語). ITIS. 2011年9月16日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 153.
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa japonica Thunb. var. japonica f. albibacca H.Hara”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月7日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa japonica Thunb. var. luxurians Rehder オオムラサキシキブ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月7日閲覧。
- ^ “日本のレッドデータ検索システム(オオムラサキシキブ)”. エンビジョン環境保全事務局. 2011年9月16日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa dichotoma (Lour.) K.Koch コムラサキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 152.
- ^ “日本のレッドデータ検索システム(コムラサキ)”. エンビジョン環境保全事務局. 2011年9月16日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa parvifolia Hook. et Arn.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月7日閲覧。
- ^ “植物絶滅危惧種情報検索(ウラジロコムラサキ)”. 生物多様性情報システム. 2011年9月16日閲覧。
参考文献[編集]
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日。ISBN 4-522-21557-6。