プレニル基転移酵素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

プレニル基転移酵素(プレニルきてんいこうそ、prenyltransferase)はプレニル二リン酸のプレニル基を基質に移す転移酵素の総称である。プレニルトランスフェラーゼとも。

反応様式から3つに大別できる[1][2]

  1. イソペンテニル二リン酸の先端にプレニル基を移すことでプレニル二リン酸を伸長させる酵素群。イソプレン単位の分岐構造のどちらの炭素に転移反応を起こすかによってシス-トランス異性体が生じるが、これは酵素によって決まっており、cisトランスフェラーゼ、transトランスフェラーゼ、のように区別する。ファルネシル二リン酸シンターゼゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼなど。
  2. プレニル二リン酸のピロリン酸基近くにもう一つのプレニル二リン酸のプレニル基を移すことで、根元同士で繋がったような分子を生じる酵素群。スクアレン合成酵素フィトエン合成酵素など。
  3. イソプレノイド以外の分子にプレニル基を移す酵素群。ユビキノンクロロフィルの合成や、タンパク質のプレニル化などに関わる。

transトランスフェラーゼ[編集]

transトランスフェラーゼは、生体内で利用される様々な長さのポリプレニル鎖を合成する非常に重要な酵素群である。反応生成物を繰り返しイソペンテニル二リン酸に転移できるものが多く、結果的に鎖長の異なるプレニル二リン酸が生成されるが、概ね鎖長の短いグループ、中程度のグループ、長いグループと3つに分けることが出来る[3]


短鎖トランスフェラーゼ[編集]

炭素数25、イソプレン単位5つまでのプレニル二リン酸を合成する。産物の鎖長はアミノ酸配列中に存在するDDx2-4Dモチーフ周辺のアミノ酸残基からある程度予測することができる[2]

産物 鎖長
(炭素数)
EC番号 酵素名
ゲラニル二リン酸 10 2.5.1.1 ジメチルアリルtransトランスフェラーゼ
ファルネシル二リン酸 15 2.5.1.10 (2E,6E)-ファルネシル二リン酸シンターゼ
ゲラニルゲラニル二リン酸 20 2.5.1.29 ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ
ゲラニルファルネシル二リン酸 25 2.5.1.81 ゲラニルファルネシル二リン酸シンターゼ

中鎖トランスフェラーゼ[編集]

炭素数30または35、イソプレン単位6または7のプレニル二リン酸を合成する。

産物 鎖長
(炭素数)
EC番号 酵素名
ヘキサプレニル二リン酸 30 2.5.1.82
2.5.1.83
ヘキサプレニル二リン酸シンターゼ (ゲラニルゲラニル二リン酸特異的)
ヘキサプレニル二リン酸シンターゼ ((2E,6E)-ファルネシル二リン酸特異的)
ヘプタプレニル二リン酸 35 2.5.1.30 ヘプタプレニル二リン酸シンターゼ

長鎖トランスフェラーゼ[編集]

炭素数40から50、イソプレン単位8から10までのプレニル二リン酸を合成する。産物はユビキノンメナキノンプラストキノンなどの側鎖として利用されるほか、ある種の天然ゴム(ペルカゴム・ガタパーチャの樹脂)の生合成に使われる。

産物 鎖長
(炭素数)
EC番号 酵素名
オクタプレニル二リン酸 40 2.5.1.90 all-trans-オクタプレニル二リン酸シンターゼ
ノナプレニル二リン酸 45 2.5.1.84
2.5.1.85
all-trans-ノナプレニル二リン酸シンターゼ (ゲラニル二リン酸特異的)
all-trans-ノナプレニル二リン酸シンターゼ (ゲラニルゲラニル二リン酸特異的)
デカプレニル二リン酸 50 2.5.1.91 all-trans-デカプレニル二リン酸シンターゼ

参考文献[編集]

  1. ^ Liang et al. (2002). “Structure, mechanism and function of prenyltransferases”. Eur. J. Biochem. 269 (14): 3339–3354. doi:10.1046/j.1432-1033.2002.03014.x. 
  2. ^ a b Bouvier et al.. “Biogenesis, molecular regulation and function of plant isoprenoids”. Prog. Lipid Res. 44 (6): 357–429. doi:10.1016/j.plipres.2005.09.003. 
  3. ^ Ogura & Koyama (1998). “Enzymatic Aspects of Isoprenoid Chain Elongation”. Chem. Rev. 98 (4): 1263–1276. doi:10.1021/cr9600464.