フォックストロット型潜水艦

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フォックストロット型潜水艦
キューバ海軍のフォックストロット型潜水艦
艦級概観
艦種 航洋型潜水艦
計画番号 641計画
艦名 原則として「B + 1桁~3桁の番号」
一部の艦は共産党に関する艦名が付随。
同型艦 58隻
1番艦就役:1957年
前級 611型潜水艦
次級 641B型潜水艦
性能諸元
排水量 水上:1,952tトン、水中:2,475トン
全長 90m
全幅 7.4m
吃水 5.9m
予備浮力
機関 ディーゼル・エレクトリック方式
ディーゼル×3基(6,000馬力
電動機×3基(5,400馬力)
3軸推進
電池
最大速力 16ノット(水上)
15ノット(水中)
9ノット(シュノーケル航行時)
潜航深度 230m
航続力 水上:20000海里/8ノット
シュノーケル航行時:700海里/2ノット
乗員 78名
探索装置
武装 533mm魚雷発射管×10門(艦首6門、艦尾4門)
魚雷×22本または魚雷×6本+機雷32個

フォックストロット型潜水艦(フォックストロットがたせんすいかん、Foxtrot class submarine)は、ソヴィエト/ロシア海軍通常動力型潜水艦である。

フォックストロット型NATOコードネームであり、ソ連海軍の計画名は641型潜水艦Подводные лодки проекта 641)である。

開発[編集]

第二次世界大戦後に初めて建造されたズールー型潜水艦は、第二次大戦中に設計されたUボートXXI型を基にしており、能力の旧式化は必至であった。フォックストロット型潜水艦は、1950年代後半にズールー型の改良型として開発が開始される。開発を担当したのは、ズールー型と同じくルービン設計局である。設計思想面では前型の運用思想を継承し、遠距離通信能力や機雷敷設能力、対潜水艦戦闘を想定した偵察能力などを重視した一方で、欠陥であった振動問題・船体形状の改善、および可能潜航深度・水中行動力・居住性の向上などが図られている。技術的特徴としては、高出力の大型ソナーや水中聴音器を艦首部に装備し、水中聴音能力の向上を図っているのが見られる。

運用[編集]

1957年から建造が開始され、合計58隻が竣工した。また、輸出用としても建造が行われ、20隻が竣工した。ロシア海軍では2000年までに全艦が退役したが、一部の国家では現在も運用中である。

艦体が大型化したことで洋上での運用に適した艦となった641型潜水艦だが、洋上での居住性や搭載された兵器管制装置・センサー類には改善の余地があった。本型の改良型としてタンゴ型潜水艦1971年から建造されることとなった。

1962年10月27日キューバ危機の際、米海軍によるキューバの海上封鎖海域でキューバに向かっていた貨物船を護衛していた同型艦のB-59では、米海軍の爆雷攻撃に対抗して核魚雷を発射すべきか否か艦内で揉め、副艦長ヴァシーリイ・アルヒーポフ(1961年7月4日、K-19の副艦長として、同艦の原子炉の冷却水漏れ事故を収拾した人物)の反対で発射をとりやめたことが2002年に初めて公になった。このとき世界は核戦争に一番近づいたとされている。

運用国[編集]

 ソビエト連邦海軍
 インド海軍
1967年から1974年に8隻を購入し、カルヴァリ級として運用していた。2010年9月12日をもって全てが退役。退役した7隻のうち1隻が博物館で展示中。
 リビア海軍
1978年から1982年に6隻を購入。うち2隻が現在も在籍するが、2隻とも1984年以降潜航せずに運用されている。
 キューバ海軍
1978年から1983年に6隻を購入したが、全艦既に退役。
 ポーランド海軍
1987年から1988年にソ連海軍から2隻の中古艦(「ヴィルク英語版ポーランド語版」「ヂク」)を取得したが、2003年に揃って退役。
 ウクライナ海軍
1997年ロシア海軍B-435を購入。ザポリージャに改名して編入したが、運用されずに保管・修理を繰り返した後に、2007年に外国への売却が発表された。しかしその後も処遇が二転三転し、ドック入りして修理中だったが、2012年にウクライナ海軍へ再就役したが、2014年クリミア危機でロシア軍がセヴァストポリを占拠と同時にその港に係留されているサポリージャも接収され半ば強引に編入された[1]

登場作品[編集]

シークエスト
環境テロリスト捕鯨船を撃沈するのに使用。
スターゲイトSG-1
バミューダ・トライアングル
バミューダ海域の調査船として登場。
『メイポート沖の待ち伏せ』上下(新潮文庫
P.T. デューターマン作の小説。

脚注[編集]

関連項目[編集]