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ナガエツルノゲイトウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナガエツルノゲイトウ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ヒユ科 Amaranthaceae
: ツルノゲイトウ属 Alternanthera
: ナガエツルノゲイトウ
A. philoxeroides
学名
Alternanthera philoxeroides
(Mart.) Griseb.
和名
ナガエツルノゲイトウ
アリゲイターウィード
英名
Alligator weed
花期の本種
オーストラリアにおける群生

ナガエツルノゲイトウ(長柄蔓野鶏頭、学名Alternanthera philoxeroides)は、ナデシコ目ヒユ科に分類される多年草の1南アメリカ原産[1]

現在では世界中に外来種として定着しており、「地球上で最悪の侵略的植物」と呼ばれる[2]こともある。2005年に外来生物法の施行と同時に特定外来生物に指定された[3]

形態

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草本で高さ 0.5 - 1.0 m以上に成長する。は太さ 4 mmほどで、中空構造になっており水に浮き、茎の断片からでも流れ着いた先で繁殖する[4][5][2]。根元の方の茎は横に這いながら枝分かれし、節から根を伸ばしていく。陸地でも海浜でも育つ。主根を50 cm以上土中深くまで伸ばすため、引き抜いて駆除しようとしても、わずかにでも主根が残っていればそこから再生する[4][2][6]。葉は対生で、長さ2.5 - 5 cm。倒卵形ないし倒披針形[4][5]。わずかに細かい毛のような鋸歯が確認できる。花期は4 - 10月だが1年中開花することもある。葉腋から名前の由来となった長さ1 - 4 cmの花茎を伸ばし、その先に白色ないし灰白色をした直径12 - 16 mmの球形の花序をつくる。増殖は日本ではもっぱら栄養繁殖により、花は咲くが種はできない[5]

日本における類似種

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類似種との識別

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近縁種とは花の付き方が違う[8]。本種の花は葉腋に付き、特に茎の先端部の葉腋だけに付く。同属でアジア原産のツルノゲイトウ (A. sessilis) などは茎の途中であってもよく花を付け、また花に柄はなく葉腋から直接花が咲いているように見える。

生態

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湿地およびその周辺に生息する。アジア原産のツルノゲイトウと似たような環境に出現するが、環境への適応力はより高く乾燥と過湿のどちらにも強い[9]。茎は中空で水に浮くことから、水面にもシュートをよく伸ばす。

本種が繁茂する水域ではミジンコの孵化が阻害されるといい、なんらかのアレロパシーがあると見られている[10]

分布

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南アメリカのパラナ川流域を原産地とする[1]アメリカ合衆国オーストラリアニュージーランドリビア日本台湾に移入分布する[1][11]

名前

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和名ナガエツルノゲイトウはアジア原産のツルノゲイトウ(A. sessilis)に分類的に近く、形態的にも蔓状に茎を伸ばすこと、花に長い柄を持つという形態的な特徴に基づく命名である。中国や台湾では日本よりも早く存在が知られており、村田(1989)によれば、台湾人植物学者で日本に留学していたこともある許建昌の著作『台湾常見植物図鑑 第1巻』(1971年)にこの和名が確認できるという[8]。山岡(1976)も台湾の植物調査で許からこの草の説明を受け、「ナガエツルノゲイトウ」と書き記している[12]。 英名由来からワニグサ(鰐草)と呼ばれることがある。

人間との関係

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外来種問題

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在来種の植物と競争するほか、水面上にマット状に繁茂することで水流を停滞させたり、船の通行を妨げたりする[13]

アメリカ合衆国では、1897年アラバマ州で初めて確認された[14]。その後1956年には水草として販売・流通が禁止されるも、ごとに警告が出されるほど深刻な事態に陥っている[2]。中国の事例では1930年代に飼料目的で持ち込まれたというのが、有力視されているという[15]

日本での定着の初報告は1989年に兵庫県尼崎市の水田で採取された見慣れない草を、植物学者の村井源が同定し発表したものとされている[8]

観賞用の水草として流通していた本種は、本州以南の千葉県印旛沼[2]、ほか)、茨城県[16][17]神奈川県静岡県滋賀県琵琶湖[2])、京都府奈良県[18]大阪府、兵庫県(尼崎市、伊丹市稲美町、ほか、本州地域)[2]淡路島(本田池など〈洲本市域〉[2][注 1])、徳島県香川県島根県宍道湖[19])、福岡県佐賀県熊本県鹿児島県沖縄県といった広い範囲に分布が拡大している[11][20]。琵琶湖、印旛沼など、ブラックバス等の生息地で発見されることが多いため、釣り人が媒介している可能性が指摘されている[2]

本種はオオバナミズキンバイと共通の生態的特徴をもっており、ともに水陸両生で水面を広範囲で覆い陸上でも生育し、茎の断片からも根を出し繁殖するため爆発的に生育面積を増やす性質があるほか、河川や湖沼、水田等の水域近辺という似た環境で生育し混生することもある[21][22]。そのため、この二種をセットにして扱われることも多い[21]

人的駆除

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本種の防除対策として、日本では、遮光シートで太陽光を遮断することによって光合成を妨げる方法で枯殺を図り、少なくとも繁殖を抑え込む[23][2]ほか、人力[23]、時には重機(建設機械)を利用した物理的除去が行われる。ただし、茎の断片からでも再生する繁殖力の強さがあり、安易な除去は問題を拡散させる可能性があることに留意しなければならない[23]淡路島本田池の場合、すでに近くの水路や下流のへの拡散が確認されたので、それ以上の拡散を防ぐために池の周辺をで囲った上で駆除を行なっている[2]。駆除作業後は、衣服と靴、道具、車両のタイヤなどに茎や根が付着していないか確認する必要もある[2]

除去した草の処分については、特定外来生物であることから草が拡散しないよう管理して枯殺・焼却しなければならない[24]

水田を対象に除草剤使用による駆除の研究も進められている[25]

生物的防除

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ナガエツルノゲイトウノミハムシ
ナガエツルノゲイトウノミハムシの幼虫と成虫

ナガエツルノゲイトウに対する古典的生物的防除として、南米原産のナガエツルノゲイトウノミハムシ Agasicles hygrophila が知られている。本種は成虫および幼虫がナガエツルノゲイトウの葉を食害する昆虫で、米国では1960年代から防除目的で導入された。 英語では alligatorweed flea beetle と呼ばれるナガエツルノゲイトウノミハムシは、ハムシ科ノミハムシ亜科に分類される甲虫の一種で、ナガエツルノゲイトウを寄主植物とし、成虫および幼虫が主に葉を食害する。本種は、ナガエツルノゲイトウに対する古典的生物的防除の代表的な昆虫として知られ、米国では1963年に導入が承認され、1965年に定着が確認された。

本種は、ナガエツルノゲイトウの水面に広がる群落に対して高い防除効果を示すことがあり、米国南東部では同植物の生物的防除に大きく寄与したとされる。コーネル大学の生物的防除資料では、本種は雑草の生物的防除を象徴する成功例の一つとして紹介され、フロリダ北部の初期放飼地では導入から4年以内にナガエツルノゲイトウがほぼ除去されたとされる。

このためナガエツルノゲイトウノミハムシはナガエツルノゲイトウの生物的防除において最も重要な天敵昆虫の一つとされるが、本種は冬季の休眠性を欠くため、低温に弱く、寒冷地では個体群の維持が難しい場合があり、本種による防除効果は気温や水域環境に影響され、寒冷地や陸生化した群落では効果が限定される場合がある。米国の資料では、内陸北部地域では越冬できないため、再放飼が行われることがあるとされる。 また、ニュージーランドの研究機関は、本種が23〜27℃程度の温暖な条件でよく発育し、同国の気候では条件が限界的になる場合があるとしている。また、近縁植物への非標的影響の可能性も研究されており、新たな地域への導入には生態系リスクの評価が必要である。

Arcola malloi

国立環境研究所の侵入生物データベースでは、米国において天敵として、ナガエツルノゲイトウノミハムシのほかにクダアザミウマ科Amynothrips andersoniメイガ科Arcola malloi の2種の草食性昆虫も原産地の南米から持ち込み、ナガエツルノゲイトウの増殖抑制に一定の効果を得ているという[26]

利用

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根からメタノール抽出で得られたサポニントリテルペン配糖体)に腫瘍細胞への毒性を示すものがあるという[27]

本種または本種の加工品はカドミウムなどの重金属を効率的に吸収するといい、水質浄化などへの応用も考えられている[28][29]


脚注

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注釈

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  1. 2021年(令和3年)4月に発見されたが、数年前に侵入したと推定されている[2]。発見時、水面の約6割を覆っていた[2]

出典

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  1. 1 2 3 『日本の外来生物』 2008 [要ページ番号]
  2. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 「地球上最悪の侵略的植物」淡路島で繁殖、拡大しつつあり完全除去に10年以上か」『読売新聞オンライン』読売新聞社、2021年4月13日。オリジナルの2021年4月13日時点におけるアーカイブ。2021年4月13日閲覧。
  3. 特定外来生物等一覧 日本の外来種対策 外来生物法”. 環境省. 2023年11月12日閲覧。
  4. 1 2 3 農水省 水路やため池の通水障害を起こす外来生物の見分け方_ナガエツルノゲイトウ https://www.maff.go.jp/j/nousin/kankyo/kankyo_hozen/gairai_soukihakken_nagaetsurunogeitou.html
  5. 1 2 3 環境省 特定外来生物 同定マニュアル https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/manual/10hp_shokubutsu.pdf
  6. 根絶難しい特定外来生物の水草、陸上にも拡大…稲を倒すなど農業被害の懸念”. 読売新聞 (2022年10月21日). 2022年10月22日閲覧。
  7. 1 2 3 水路やため池の通水障害を起こす外来生物の見分け方 ナガエツルノゲイトウ - 農林水産省、2025年12月閲覧
  8. 1 2 3 村田源 (1989) ナガエツルノゲイトウ尼ケ崎に帰化. 植物分類,地理 40(5-6), p.178. doi:10.18942/bunruichiri.KJ00001078643
  9. Chen Y, Zhou Y, Yin T-F, Liu C-X, Luo F-L (2013) The Invasive Wetland Plant Alternanthera philoxeroides Shows a Higher Tolerance to Waterlogging than Its Native Congener Alternanthera sessilis. PLoS ONE 8(11): e81456. doi:10.1371/journal.pone.0081456
  10. 林紀男 (2024) 侵略的外来水生植物の代謝産物がミジンコ休眠卵の孵化に及ぼす影響. 日本水処理生物学会誌 60(1), p.19-24. doi:10.2521/jswtb.60.19
  11. 1 2 NIES 侵入生物Db, 2021年4月13日閲覧.
  12. 山岡文彦 (1976) 中華民国(台湾)の植物調査. 桜美林短期大学紀要(15) 家政学編, p.105-135. doi:10.11501/2215452(国立国会図書館デジタルコレクション)
  13. 『日本の外来生物』 2008 [要ページ番号]
  14. NISIC.
  15. PAN Xiao-Yun et al. (2007) Invasive Alternanthera philoxeroides: biology, ecology and management. J Syst Evol 45(6), p.8884-900.
  16. 県内の特定外来生物対策”. 茨城県 (2016年5月15日). 2016年10月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月22日閲覧。
  17. 茨城県 県民生活環境部 環境政策課 生物多様性 (2021年4月5日). 茨城県内の特定外来生物”. 茨城県. 2021年4月13日閲覧。
  18. 奈良の世界遺産にはびこる外来生物 関西情報サイト Kansai Window。[リンク切れ][出典無効]
  19. 山室真澄(陸水学者、東京大学教授) (2016年9月12日). 宍道湖にナガエツルノゲイトウが侵入!”. 研究者の個人ブログ. Limnology 水から環境を考える. 2021年4月13日閲覧。
  20. 久米 2012 [要ページ番号]
  21. 1 2 “[https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/files/oobana_nagae.pdf オオバナミズキンバイおよびナガエツルノゲイトウの 防除の手引き]”. 環境省. 2026年5月14日閲覧。
  22. 印旛沼・手賀沼の外来水生植物”. 千葉県. 2026年5月14日閲覧。
  23. 1 2 3 サガテレビ除去しても繁殖するやっかいなヤツ!びっしりと生い茂る水草の正体は?【佐賀発】」『FNNプライムオンライン』フジニュースネットワーク (FNN)、2019年8月10日。2019年8月10日閲覧。
  24. 北九州市環境局 環境監視部 環境監視課. オオキンケイギクは、「特定外来生物」です!”. 北九州市. 2019年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月10日閲覧。
  25. 井原希, 嶺田拓也, 吉村泰幸, 芝池博幸, 小荒井晃 (2022) 特定外来生物ナガエツルノゲイトウ(Alternanthera philoxeroides (Mart.) Griseb.)に対する水稲用・水田畦畔用除草剤の効果. 雑草研究 67(1), p.1-12. doi:10.3719/weed.67.1
  26. Gary R. Buckingham (1996) Biological Control of Alligatorweed, Alternanthera philoxeroides, the World's First Aquatic Weed Success Story. Castanea 61(3), pp.232-247.
  27. 松尾侑希子, 井口巴樹, 黒田明平, 三宅克典, 加藤宏直, 木村優花, 三巻祥浩 (2024) 特定外来生物ナガエツルノゲイトウ Alternanthera philoxeroides地下部から 単離されたトリテルペン配糖体とそれらの腫瘍細胞毒性. 生薬学雑誌 78(1), p.109-114. doi:10.24684/jspharm.78.1_109
  28. Yu Yang, Zhongbo Wei, Xiaolong Zhang, Xu Chen, Dongmei Yue, Qian Yin, Lin Xiao, Liuyan Yang (2014) Biochar from Alternanthera philoxeroides could remove Pb(II) efficiently. Bioresource Technology 171: 227-232. doi:10.1016/j.biortech.2014.08.015
  29. Dajiang Yan et al. (2023) Physiological Changes and Antioxidative Mechanisms of Alternanthera philoxeroides in Phytoremediation of Cadmium. Environment & Health 1(2), pp.90-101. doi:10.1021/envhealth.3c00009

参考文献

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書籍、ムック
雑誌、広報、論文、ほか

外部リンク

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