デュタステリド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
デュタステリド
Dutasteride.svg
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Avodart
Drugs.com monograph
MedlinePlus a603001
胎児危険度分類
  • US: X
  • Not to be handled by pregnant women
法的規制
投与方法 Oral
薬物動態データ
生物学的利用能 60%
血漿タンパク結合 99%
代謝 Hepatic (CYP3A4-mediated)
半減期 5 weeks
排泄 Fecal
識別
CAS番号
(MeSH)
164656-23-9 チェック
ATCコード G04CB02 (WHO)
PubChem CID: 6918296
IUPHAR/BPS 7457
DrugBank DB01126 チェック
ChemSpider 5293502 チェック
UNII O0J6XJN02I チェック
KEGG D03820  チェック
ChEBI CHEBI:521033 チェック
ChEMBL CHEMBL1200969 ×
別名 GG-745, GI-198745
化学的データ
化学式 C27H30F6N2O2
分子量 528.53 g/mol
ザガーロ 包装
ザガーロ カプセル

デュタステリド(Dutasteride)は、テストステロンからのジヒドロテストステロン(DHT)生成を阻害する5α-還元酵素トリプル阻害薬英語版である[1]前立腺肥大症および男性型脱毛症の治療に用いられる。商品名はアボルブ(前立腺肥大症)、ザガーロ(男性型脱毛症)。

勃起不全[2]または性欲減少[3]のリスクが増加する。

効能・効果[ソースを編集]

前立腺肥大症[ソースを編集]

0.5mgカプセルは前立腺肥大の改善作用を承認されている[4][5]。日本国内で実施された前立腺容積30cc以上の前立腺肥大症患者に対して実施された二重盲検比較試験で、用量依存的な前立腺容積の減少が認められた。24週間の連日投与により0.5mg 前立腺容積は平均3/4に縮小し、プラセボに比して有意な差を示した。またI-PSS(国際前立腺症状スコア)と最大尿流率の改善も確認されている。

男性における男性型脱毛症[ソースを編集]

0.1mgカプセルおよび0.5mgカプセルは、男性における男性型脱毛症の治療薬として認定されているが、保険収載はされていない(自費治療自由診療[6]。抜け毛の防止効果はフィナステリドと上回ることが確認されており、フィナステリドでは不十分だった増毛効果もある。ただし毛根が失われた箇所については再生しない。増毛効果は、毛が長く太くなることと、単一毛根から複数の毛が生える事による。円形脱毛症等には効果がない。また20歳未満での安全性および有効性は確立されていない。女性には使用できない。

禁忌[ソースを編集]

女性、小児・幼児・乳児・新生児、重度の肝機能障害のある患者、製剤成分に過敏症の既往歴のある患者 には禁忌である[4][6]フィナステリドに過敏症を示した患者にも使用してはならない。

妊娠中にデュタステリドや他の5α-還元酵素阻害薬を服用すると、児に悪影響を与える。これらの薬剤は皮膚から吸収されるので、妊婦または妊娠の可能性のある女性は薬剤を取り扱わない事が望ましい。カプセルの内容物に触れてしまった場合は、直ちに石鹸および流水で洗い流す事。

デュタステリド服用中の患者は献血してはならない。血中半減期が長い為、投与中止後6ヶ月間は献血できない[7]

副作用[ソースを編集]

重大な副作用として、肝機能障害(アボルブ:1.5%、ザガーロ:頻度不明)・黄疸(頻度不明)が記載されている。

前立腺肥大症の日本国内臨床試験での副作用発現率は10.9%で、主な副作用は勃起不全(3.2%)、リビドー減退(1.7%)、乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感)(1.5%)であった[4]。男性型脱毛症の第II/III相国際臨床試験での副作用発現率は17.1%で、主な副作用は勃起不全(4.3%)、リビドー減退(3.9%)、精液量減少(1.3%)であった[6]

性的影響[ソースを編集]

この系統の薬剤は勃起不全の副作用を持つ[2]。この副作用はQOL低下を来し、社会的ストレスの一因となる[2]。また性欲低下の原因ともなる[3]。薬剤服用中止後もこれらの副作用が継続し得るとの報告がある[3]

前立腺癌[ソースを編集]

デュタステリドの前立腺癌発生リスクに関する上昇・低下・中立的影響は確立していない。良性前立腺腫瘍の肥大および有病率を低下させることを示唆するデータがあるが、米国FDAはデュタステリドについて高悪性度前立腺癌のリスクが上昇する旨を警告している[8]

デュタステリドが前立腺癌を増やすのか減らすのかという影響とは別に、デュタステリドやフィナステリド等の5α-還元酵素阻害薬英語版は、血清PSAの値を低下させ、PSA高値と根拠とした前立腺癌の確定診断の検査を受ける機会を減少させることが懸念されている。デュタステリドを服用中に前立腺癌が発生した場合、PSAの値が低く抑制されていることで診断が遅れ、早期治療の機会を逃して後期ステージに進展する可能性がある[9]

その他のリスク[ソースを編集]

死亡リスクや他の重篤な事象の危険性を減少させるか否かについては充分なデータがない[10]

作用機序[ソースを編集]

デュタステリドは5α-還元酵素阻害薬英語版に属する薬剤で、3-オキソ-5α-ステロイド-4-デヒドロゲナーゼを阻害してテストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に変換される過程を遮断する。DHTはテストステロンよりも強力なアンドロゲンであり、前立腺に作用する主要なアンドロゲンである[11]:20。またDHTは頭髪の毛乳頭細胞に作用して毛周期の内の成長期を短縮させて硬毛を軟毛へと変え、最終的に脱落させる[12]:21。従ってDHTの生成を抑える事で、前立腺の肥大および頭髪の脱毛が抑制される。

デュタステリドとフィナステリドの比較[ソースを編集]

フィナステリド前立腺肥大症(BPH)や男性型脱毛症(AGA)の治療薬として承認されている同種同効薬である。

デュタステリドは5α-還元酵素のSRD5A1英語版SRD5A2英語版SRD5A3英語版を阻害する。一方のフィナステリドはSRD5A2およびSRD5A3を阻害する[1]。半減期はデュタステリドの方が長く、3.4±1.2週間である。(フィナステリドは4時間[13]。)

承認取得状況[ソースを編集]

2001年11月、米国でFDA前立腺肥大症治療薬として承認[14]

2009年7月、日本で厚生労働省が前立腺肥大症治療薬として承認[15]

2015年9月、日本で男性型脱毛症治療薬として承認[16]

出典[ソースを編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b Yamana K, Labrie F, Luu-The V (January 2010). “Human type 3 5α-reductase is expressed in peripheral tissues at higher levels than types 1 and 2 and its activity is potently inhibited by finasteride and dutasteride”. Hormone Molecular Biology and Clinical Investigation 2 (3). doi:10.1515/hmbci.2010.035. 
  2. ^ a b c Gur, S; Kadowitz, PJ; Hellstrom, WJ (January 2013). “Effects of 5-alpha reductase inhibitors on erectile function, sexual desire and ejaculation.”. Expert opinion on drug safety 12 (1): 81–90. doi:10.1517/14740338.2013.742885. PMID 23173718. 
  3. ^ a b c Traish, AM; Hassani, J; Guay, AT; Zitzmann, M; Hansen, ML (March 2011). “Adverse side effects of 5α-reductase inhibitors therapy: persistent diminished libido and erectile dysfunction and depression in a subset of patients.”. The journal of sexual medicine 8 (3): 872–84. doi:10.1111/j.1743-6109.2010.02157.x. PMID 21176115. 
  4. ^ a b c アボルブカプセル0.5mg 添付文書” (2016年1月). 2016年7月4日閲覧。
  5. ^ Slater, S; Dumas, C; Bubley, G (March 2012). “Dutasteride for the treatment of prostate-related conditions.”. Expert opinion on drug safety 11 (2): 325–30. doi:10.1517/14740338.2012.658040. PMID 22316171. 
  6. ^ a b c ザガーロカプセル0.1mg/ザガーロカプセル0.5mg 添付文書” (2015年10月). 2016年6月27日閲覧。
  7. ^ FDA prescribing information” (2011年6月). 2013年9月15日閲覧。
  8. ^ 5-alpha reductase inhibitors (5-ARIs): Label Change - Increased Risk of Prostate Cancer | U.S. Department of Health & Human Services
  9. ^ Walsh, PC (Apr 1, 2010). “Chemoprevention of prostate cancer.”. The New England Journal of Medicine 362 (13): 1237–8. doi:10.1056/NEJMe1001045. PMID 20357287. 
  10. ^ Wilt TJ, MacDonald R, Hagerty K, Schellhammer P, Kramer BS (2008). “Five-alpha-reductase Inhibitors for prostate cancer prevention”. Cochrane Database Syst Rev (2): CD007091. doi:10.1002/14651858.CD007091. PMID 18425978. 
  11. ^ アボルブカプセル0.5mg インタビューフォーム (PDF)”. グラクソ・スミスクライン (2014年5月). 2015年10月3日閲覧。
  12. ^ ザガーロカプセル0.1mg/ザガーロカプセル0.5mg インタビューフォーム (PDF)”. グラクソ・スミスクライン (2015年9月). 2015年10月3日閲覧。
  13. ^ プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg 添付文書” (2016年7月). 2016年7月31日閲覧。
  14. ^ Drug Information » FDA Approved Drugs » 2001 » Dutasteride”. Center Watch. 2015年10月3日閲覧。
  15. ^ 前立腺肥大症治療薬「アボルブ」、承認取得”. グラクソ・スミスクライン (2009年7月7日). 2015年10月3日閲覧。
  16. ^ 5α還元酵素1型/2型阻害薬「ザガーロカプセル0.1mg」「ザガーロカプセル0.5mg」、「男性における男性型脱毛症」の効能・効果で承認取得”. グラクソ・スミスクライン (2015年9月28日). 2015年10月3日閲覧。

関連項目[ソースを編集]

外部リンク[ソースを編集]