フィナステリド

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フィナステリド
Finasteride.svg
Finasteride-3D-balls.png
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
胎児危険度分類
  • X (奇形の危険性有り)
法的規制
投与方法 経口
薬物動態データ
生物学的利用能 63%
代謝 肝臓
半減期 年配者: 8時間
成人: 6時間
排泄 代謝物として糞(57%)、尿(39%)
識別
CAS番号 98319-26-7
ATCコード G04CB01 D11AX10
PubChem CID: 194453
DrugBank APRD00632
ChemSpider 51714
KEGG D00321
化学的データ
化学式 C23H36N2O2
分子量 372.549 g/mol

フィナステリド
形状 白色結晶性粉末
水への溶解度 ほぼ不溶
出典 プロペシア添付文書

フィナステリド(finasteride, 商品名 Proscar, Propecia, Fincar, Finpecia, Finax, Finast, Finara, Prosteride)は米メルク社が開発した抗アンドロゲン薬の1つであり、男性ホルモンテストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)へ変換する酵素である2型5-α還元酵素を阻害することによって作用する。前立腺肥大症に対して低用量で、前立腺癌に対しては高用量で使用される。ドキサゾシンと組み合わせて用いることにより、前立腺肥大症の病状が進行する危険性を低減することが示されている。

また男性型脱毛症(AGA)の治療薬として、プロスカープロペシアの商品名で多くの国で発売されている。日本ではプロペシアのみが、米メルク社の日本法人であるMSD社(旧万有製薬)から発売されていたがジェネリックのフィナステリド錠がファイザーから発売された。同作用の薬にデュタステリド(dutasteride, 商品名 アボルブ)があるが、こちらはフィナステリドの作用しない1型5-α還元酵素をも阻害する上、2型5-α還元酵素もフィナステリドの3倍強く阻害するなど作用が強い。

開発の経緯[編集]

1991年にフィナステリドの開発が始まり、初め1992年に米国で前立腺肥大の治療薬としてプロスカー(5mg錠)の商品名で認可された。しかし、その後1mg用量での研究によって、男性型の脱毛症において毛髪の成長が見られることが明らかにされ、1997年12月22日、FDAはフィナステリドを男性型脱毛症の治療薬として認可した。2006年現在では世界60か国以上で承認されている。日本では、1年間の臨床試験を終え、2005年10月に厚生労働省に承認され、同年12月に発売となった。日本では前立腺肥大症治療薬としては認可されていない。

前立腺疾患[編集]

前立腺癌予防試験 (Prostate Cancer Prevention Trial, PCPT) において、(脱毛症への通常の処方量よりも多いが)前立腺癌に対しては一般的な処方である5mg/日の投与では、プラセボ(偽薬)を与えた患者よりも25%前立腺癌の進行が遅れた、という結果が得られた[1]。しかしながら、フィナステリドを与えた患者のうち進行が見られた場合については、癌の増加と拡大の率がプラセボより大きかった。その原因については明らかになっていない。研究者はそれらの患者の癌が特に強いものであるかについて、経過を観察している。低用量でもこのような効果があるのかは不明である。

作用機序[編集]

DHTは前立腺の受容体と結びつき、成長を促して肥大や癌を招くが、このDHTの生成を阻害することで、前立腺の正常な体積を維持する。なお慢性前立腺炎には効果が薄く、デュタステリドが用いられることが多い。

脱毛症[編集]

DHTによる脱毛作用を抑止するものであり、決して発毛に作用する薬ではないが、臨床試験では服用者の多くにある程度の発毛が認められる。日本では2005年12月に万有製薬(現:MSD)から発売された。海外では既に60か国以上で承認されている。DHTという髪の成長を妨げる原因物質を抑えることで効果を発揮する。アメリカ食品医薬品局 (FDA) が認めた男性型脱毛症(いわゆる、若ハゲ)に有効な薬は、このプロペシアとミノキシジル(商品名ロゲインなど)のみである。なお、男性型脱毛症以外の脱毛症(円形脱毛症など)には効果はない。

作用機序[編集]

DHTは皮脂腺の受容体と結びつき、過剰な皮脂を分泌させ、毛穴を塞いで男性型脱毛を誘発するが、このDHTの生成を阻害することで効果を発揮する。

男性型脱毛症は、時間と共に進行していくものであり、髪が薄くなっていくことを抑える事がまず大切である。少なくとも進行をくい止められたという意味では、フィナステリドは、98%の人に3年間効果があった。髪が増えてくる人も多く、国内の臨床試験では半年で48%、1年で58%、2年では68%、3年で78%と髪が増える人が経時的に増えていった。また髪が増えるだけでなく、髪の質(長さ、太さ)なども改善することも分かっている。頭頂部(頭のてっぺん)だけでなく、髪の毛の生え際などの前髪にも効果がある点も、従来の育毛剤とは異なる。

副作用[編集]

国内臨床試験時では、1mgのプロペシアで胃部不快感、性欲減退など6%程度の副作用が認められたが、この副作用の発現頻度は、プラセボで起こった副作用の頻度と同程度だとの意見がある[2]。特に重篤な副作用は報告されていないとされているが、万有製薬(現:MSD)はプロペシア錠を飲むことによって、頻度不明ながら、肝機能障害が起こり得ると重大な副作用を追加した(2007年9月)。

1%以上5%未満に性欲減退の副作用が発現する他、1%未満に勃起機能不全、射精障害、精液量減少が発現する[3]。その他、発現率不明の副作用として、睾丸痛、男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等)、乳房圧痛、乳房肥大、抑鬱症状、眩暈、そう痒症、蕁麻疹、発疹、血管浮腫(口唇、舌、咽喉及び顔面腫脹を含む)、AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、γ-GTP上昇が添付文書に記載されている[3]

服用方法[編集]

0.2mg又は1mg錠を1日1回服用する。なお、必要に応じて適宜増減できるが、1日1mgを上限とする。服用時間は自由である。服用は成人の男性に限られる。女性、未成年は服用できない。

禁忌(下記の人には使えない)

  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳中の婦人

また服用中は献血していはいけない。献血には、最低でも1ヶ月の休薬期間をとる必要がある[4]

価格[編集]

医師の処方が必要である。また医師の処方する他の医療用医薬品とは異なり、薬価基準未収載品であるため健康保険で算定されない。そのため、薬剤費を含め、診療費、調剤料などは全額自己負担になり、その負担額は医療機関によって異なる(卸からの仕入れ価格などにより病院、薬局ごとに異なる)。販売元の万有製薬(現:MSD)では、参考薬剤価格として1錠250円(税抜き)という目安を出しているが、薬剤費とその他の負担額(診察料、調剤料)などを含めると1か月9,500円~13,000円程度のところが多いとされる。都市圏ほど安く処方する医療機関が多い。

AGAチェック[編集]

AGAチェックは血液や毛髪のDNA配列を解析することによってAGA(男性型脱毛症)のリスクとフィナステリドの効果を判定する検査であり、専門の医療機関で受けることができる。

AGAの主な原因とされているDHTは毛乳頭細胞のX染色体上にあるレセプター(男性ホルモン受容体)に作用して症状を発現させるが、X染色体にはこのレセプターを覆い隠すような三次元構造を持つ特殊なDNA配列が存在する。「c,a,g」という三つの塩基が繰り返すことから「cagリピート」と呼ばれるこの構造は長さ(繰り返し回数)に個人差があり、生まれつきcagリピートの長さが異なる。

cagリピートが長ければDHTが作用しにくくなるためAGAのリスクは低く、短ければリスクが高くなる。cagリピートの長さはフィナステリドの効果にも影響する。cagリピートが短ければDHTの作用を強く受けるため、DHTの生成を抑える薬剤であるフィナステリドの効果は高くなる。AGAチェックはこのcagリピートを測定するものであり、血液を採取するか、後頭部の毛髪を10本程度採取して検査する。cagリピートは年齢によって変化することがないため、この検査は1回だけ受ければいい。

AGAチェックは女性が受けることもできるが、女性に対するフィナステリドの使用には制限が多い。特に妊娠中の女性については胎児へのリスクが高く禁忌である。

ドーピング[編集]

フィナステリドは、体内で男性ホルモンに影響し筋肉増強剤の使用を隠す効果があるため、世界アンチ・ドーピング機関などでドーピング剤として認定されていたが、2009年1月1日より世界アンチ・ドーピング機関は禁止リストより除外しており現在ではドーピングに当たらないとの判断がなされている[5]

2007年3月13日オーストラリア元代表のサッカーDF選手スタン・ラザリディスがドーピング検査で陽性反応を示したと所属サッカークラブパース・グローリーが発表した。報道では、彼が利用していた発毛薬で使われるフィナステリドに反応したと報じた。米国スケルトン男子のザック・ランドがフィナステリドが原因でトリノ五輪出場を逃した。

日本では、2007年8月10日ソフトバンク所属のリック・ガトームソン投手がドーピング検査でフィナステリドに対し陽性反応を示し20日間の出場停止処分が下された。

2009年1月1日、分析技術の進歩によりフィナステリドを使用しても禁止物質の使用を判別することが可能となったため、世界アンチ・ドーピング機関は禁止リストから除外した。

脚注[編集]

  1. ^ "Can Prostate Cancer Be Prevented?" American Cancer Society, May 25, 2005.
  2. ^ 川島眞 他 臨床皮膚科 2006 ; 60(6): 521-530.
  3. ^ a b プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg 添付文書” (2014年3月). 2015年9月14日閲覧。
  4. ^ "東京都赤十字血液センター 献血の基準"
  5. ^ "World Anti-Doping Agency Q&A: Status of Finasteride"

関連項目[編集]

外部リンク[編集]