コンテンツにスキップ

サミュエル・P・ハンティントン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サミュエル・フィリップス・ハンティントン
Samuel Phillips Huntington
人物情報
生誕 (1927-04-18) 1927年4月18日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市
死没 (2008-12-24) 2008年12月24日(81歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国マサチューセッツ州マーサズ・ヴィニヤード
出身校 ハーバード大学
シカゴ大学
イェール大学
学問
時代 20世紀 - 21世紀
研究分野 国際関係論
研究機関 ハーバード大学
コロンビア大学
博士課程指導学生 ファリード・ザカリア
主な指導学生 フランシス・フクヤマ
学位 Ph.D.(ハーバード大学)
主要な作品 文明の衝突
学会 アメリカ政治学会
主な受賞歴 グロマイヤー賞(1992年)
テンプレートを表示

サミュエル・フィリップス・ハンティントン(Samuel Phillips Huntington、1927年4月18日 - 2008年12月24日[1])は、アメリカ合衆国国際政治学者ハーバード大学教授、会長。アメリカ民主党右派(中道派)支持者。

研究領域は政軍関係論、比較政治学国際政治学などに及び、軍事的プロフェッショナリズム、発展途上国の民主化、冷戦後の世界秩序での文明の衝突などの研究業績を残している。リアリズム理論家の代表人物。

生涯

[編集]

ニューヨーク市でホテル業界紙の発行者であった父親と小説家の母親との間に一人っ子として生まれた。1939年第二次世界大戦が勃発したことを契機として国際問題への関心を深めた。18歳でイェール大学を優れた成績で卒業し、陸軍に志願する。復員してからシカゴ大学で修士号取得。ハーバード大学政軍関係の研究に従事して博士号を取得した。1950年から1958年までハーバード大学政治学部の教員として教鞭を執った。しかし、ハーバード大学が終身在職権付与を拒絶したため、1958年からコロンビア大学政治学部准教授となり、同大学の戦争と平和研究所副所長も兼任した(1962年まで)。1963年ハーバード大学からの終身在職権付招聘に応えてハーバードに復帰し終生在職した。1967年からジョンソン政権の国務省でベトナム戦争に関する報告書を執筆し、また大統領選でニクソンと争ったヒューバート・ハンフリー候補の選挙対策として演説原稿を執筆してもいる。カーター政権でもアメリカ国家安全保障会議に加わり、ブレジンスキーの下で勤務しており、ブレジンスキーと共に1978年に「アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)」を創設している。彼はハーバード大学での教育研究に尽力し、2008年マサチューセッツ州の介護施設で死去した。

リアリズム(現実主義)を基調とした、保守的な思想で知られる国際政治学者である。彼はもともと近代化とそれに伴う社会変動や民主化の理論で政治理論家としての名声を築いた。しかしその名を一躍世界に広めたのはかつての教え子フランシス・フクヤマが提示した歴史の終わりに呼応[2]する形でアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所でのハンティントンの講義[3]をもとに「フォーリン・アフェアーズ」誌に投稿した論文から派生した著書『文明の衝突』である。ハンティントンは、冷戦以後の世界を文明アイデンティティを求める諸国家の対立として描いた。コソボ紛争やトルコのEU加盟などさまざまな国際的な事例を引きつつ、文明同士のブロック化が進む世界を分析した。この主張は世界各国で反響を呼び、イランモハンマド・ハータミー文明の対話やトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアンスペインホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロとともに提案した文明の同盟構想に影響を与え、彼の名を世界的なものにした。なお彼は、「ホワイトハウスの政治顧問」としても活躍した経験をもち、アメリカのアイデンティティの混迷を描いた『分裂するアメリカ』などの著書もある。

しかしエマニュエル・トッドのような若手の文明研究家からは、「国家観が古い」と批判を受ける場合もある。

著書

[編集]

単著

[編集]

共著

[編集]
  • Political Power: USA/USSR, with Zbigniew Brzezinski, (Viking Press, 1964).
  • The Crisis of Democracy: Report on the Governability of Democracies to the Trilateral Commission, with Michel Crozier and Joji Watanuki, (New York University Press, 1975).
    綿貫譲治監訳『民主主義の統治能力 (ガバナビリティ)』(サイマル出版会, 1976年)
  • No Easy Choice: Political Participation in Developing Countries, with Joan M. Nelson, (Harvard University Press, 1976).
  • Civil-military Relations, with Andrew J. Goodpaster, Gene A. Sherrill and Orville Menard, (American Enterprise Institute for Public Policy Research, 1977).

編著

[編集]
  • Changing Patterns of Military Politics, (The Free Press of Glencoe, 1962).
  • The Strategic Imperative: New Policies for American Security, (Ballinger Publishers, 1982).

共編著

[編集]
  • Authoritarian Politics in Modern Society: the Dynamics of Established One-party Systems, co-edited with Clement H. Moore, (Basic Books, 1970).
  • Global dilemmas, co-edited with Joseph S. Nye, Jr., (University Press of America, 1985). *Understanding Political Development: An Analytic Study, co-edited with Myron Weiner, (Little & Brown, 1987).
  • Reorganizing America's Defense: Leadership in War and Pace, co-edited with Robert J. Art and Vincent Davis, (Pergamon-Brassey's, 1985).
  • Culture Matters: How Values Shape Human Progress, co-edited with Lawrence E. Harrison, (Basic Books, 2000).
  • Many Globalizations: Cultural Diversity in the Contemporary World, co-edited with Peter L. Berger, (Oxford University Press, 2002).

脚注

[編集]
  1. ^ “「文明の衝突」のS・ハンチントン氏が死去”. ロイター. (2008年12月28日). http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-35648020081228 2011年2月15日閲覧。 
  2. ^ Official copy (free preview): The Clash of Civilizations? , Foreign Affairs , Summer 1993
  3. ^ "U.S. Trade Policy – Economics". AEI. 2007-02-15.

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]