サバンナ・バナナズ

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サバンナ・バナナズ
Savannah Bananas
創設 2016年
所属リーグ
コースタル・プレイン・リーグ英語版 (2016 - 2022)
歴代チーム名
本拠地
ジョージア州サバンナ
獲得タイトル
リーグ優勝
2016・2021・2022
成績(タイトル以外)
球団組織
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サバンナ・バナナズ: Savannah Bananas)は、アメリカ合衆国ジョージア州サバンナに拠点を置く野球チームである[1]。2016年創設で、主にサバンナ市のグレイソン・スタジアム英語版を拠点とする。2022年までは夏期大学野球チームとしてコースタル・プレイン・リーグ英語版(CPL)西地区のチームの一つとして参加し[2]、3度のプリカップ優勝(2016年、2021年、2022年)を果たした実績を持っていたが[1]、バナナズによって生み出された「バナナボール」と呼ばれる独自のプレー方式が成長を見せて以降は、パーティー・アニマルズ、ファイヤー・ファイターズなどのパートナーチームなどを相手としてエキシビション・マッチを開催する体制に完全に移行している[3]。プレー中にフィールド上でダンスをするなどの奇想天外と評される[4]プレースタイルはESPNウォール・ストリート・ジャーナルCNN10スポーツ・イラストレイテッドなどのメディアに特集された[5][6]

沿革[編集]

サウス・アトランティック・リーグのサバンナ・サンドグナッツ英語版サウスカロライナ州コロンビアに移転したことを受け、2015年9月22日、コースタル・プレイン・リーグ英語版(CPL)は2016年度より同リーグに加入するチームがサバンナに創設されることを発表した。命名コンテストなどを経て、2016年2月25日、「バナナズ」のチーム名やチームロゴ、チームカラーが正式に球団より発表された[7][8]

2016年、バナナズは第1シードとしてシーズンを終え、プレーオフを本拠地で戦うこととなった。第1戦ではアシュボロ・カッパーヘッズ英語版を3対2で、第2戦ではフォレストシティ・アウルズ英語版を2対0でそれぞれ破り、西地区優勝を果たすと共に、プチカップチャンピオンシップをぺニンスラ・パイロッツ英語版と争うことが決まった。チャンピオンシップ第1戦は本拠地のグレイソン・スタジアム英語版で開催され、8対4でパイロッツに勝利した。続く第2戦はバージニア州ハンプトンに移動して開催されたが、3対4で敗れた。優勝が決まる第3戦で、バナナズは9対7でパイロッツを下し、創設初年度でプチカップ優勝を果たした[9]

2022年度の夏期リーグ終了後、バナナズは大学野球チームとしての活動を終了し、「バナナボール」のプレーのみに専念することを発表した[1]。2022年8月には、バナナズについて特集したESPNの番組「バナナランド」(Bananaland) が配信された[10][11]。2023年時点で、チーム公式のTikTokアカウントのフォロワー数は600万件超を数え、この数字はどの大リーグ球団のそれよりも多くなっている[3]

2023年、プロソフトボール選手のジョセリン・アロ英語版が女子選手として初めてバナナズの一員として試合に出場し、打席に立った。2024年、バナナズはアロと1か月の選手契約を締結し、チーム初の女子選手として正式に所属することとなった[12]

バナナボール・ワールドツアーの沿革[編集]

バナナズのマスコットキャラクター「スプリット」(Split) 。

2021年[編集]

2021年3月、バナナズは「ワンシティ・ワールドツアー」(The One City World Tour) と称して、アラバマ州モービルハンク・アーロン・スタジアム英語版でエキシビションを2夜にかけて開催し、2日間で7000人の観客動員を果たした[13]

2022年[編集]

バナナズは「ワールドツアー」を開催する地域を4州6都市に広げ、計14試合が開催され、観戦チケットはいずれも完売となった[14]。大部分の試合はバートナー・チームであるパーティー・アニマルズとの対戦だった一方、別のチームとも対戦する「チャレンジャー・シリーズ」も行われた。最初のシリーズは5月5日と6日の2日間に渡って開催され、北米独立リーグアメリカン・アソシエーションに属するカンザスシティ・モナークスと対戦し、結果は1勝1敗だった[15]

2023年[編集]

チームがエキシビションの開催のみに専念する体制に移行した2023年には、「ワールドツアー」として80試合以上が開催された[16]。この「ワールドツアー」は同年2月17日のフロリダ州ウェストパームビーチの試合に始まり、ニューヨーク州クーパーズタウンダブルデイ・フィールドの試合で終わる約7か月間の日程だった[17]。このツアーにおいては、チャールストン・ダーティーバーズサザンメリーランド・ブルークラブスフローレンス・ヨールズ、MLB選手OB会などとのチャレンジャー・ゲームや、カンザスシティ・モナークスとの再戦なども組まれていた。更にオーストラリアのプロ・大学混合チームであるオージー・ドロップベアズとも対戦した。ドロップベアズはバナナズが対戦した初の海外チームだった[18]

バナナボール[編集]

バナナボール: Banana Ball)は、サバンナ・バナナズが作り上げた、標準的な野球規則を改変した独自の試合形式である[19]。この試合形式は、2020年6月以降、ほとんどの主催試合やエキシビションで採用されており、2023年のチャレンジ制度の導入など、時間の経過とともに改善が加えられている。「バナナボール」の規則は試合ペースの速さと娯楽性に重点が置かれており[20]、2023年時点の規則は以下の通りである[21][22]

  1. 勝敗は「得点」ではなく「ポイント」で決する。各得点がポイントとして計上される最終イニングを除き、1イニングごとにより多くの得点をした方のチームに1ポイントが与えられる。
  2. 試合には2時間の時間制限がある。試合開始から1時間50分を経過して以降は、新たなイニングを開始することが出来ない。
  3. 打者は打席を外すことが出来ない。外した場合、ストライクが自動的にカウントされる。
  4. 打者はバントをすることが出来ない。バントをした場合、退場が自動的に宣告される。
  5. 打者は打席中のどのタイミングにおいても、一塁への盗塁を試みることが出来る。
  6. 投手が4球目のボール球を投じた場合、四球ではなく「スプリント」となり、守備側が投手以外の野手全員に送球するまで、打者は先の塁まで安全に進塁することが出来る。
  7. コーチや野手がマウンドに寄ることは出来ない。
  8. 観客がファウルボールを捕球した場合、打者はアウトが宣告される。
  9. 制限時間を経過しても両チームが同ポイントの場合は、「ショーダウン・タイブレーカー」が行われる。ショーダウン・タイブレーカーのハーフイニングは攻撃側が得点するかアウトになるかすると終了し、勝者が決まるまで順に3つの「ショーダウン・ラウンド」が行われる。第1ラウンドは投手、捕手、そして1人の野手と、1人の打者との対戦、第2ラウンドは投手、捕手と1人の打者との対戦、第3ラウンドは満塁での投手、捕手、1人の野手と、1人の打者との対戦である。第3ラウンドにおいては、各得点が1ポイントと計上される。どのラウンドにおいても、打者が柵越えの本塁打を打った場合、攻撃側チームのサヨナラ勝利となる。
  10. 各チームのコーチおよび観客の代表者はフィールド上での審判の判定につきチャレンジをすることが出来る。ただしチャレンジに失敗した場合、以降その試合の中でチャレンジをする権利を失う。
  11. ゴールデン・バッター・ルール - 各チームは試合中に一度だけ、ラインナップ中の任意の打者1人を別の打順で打席に立たせることが出来る。

チーム創設者のジェシー・コールは、上記のようなプレー形式が誕生したのは、観客が試合途中なのにも関わらず球場を後にするなど野球に退屈する態度を見せていることを受けて、ファン第一主義に基づくルールを自身で考案しようと試みたのがきっかけであると語っている[23]。試合中には、マウンド上で投手と野手が踊りだしたり、側転しながら投球をしたり、竹馬に乗ってプレーしたりするなどのパフォーマンスがとられる[4]

脚注[編集]

  1. ^ a b c Savannah Bananas fold collegiate team, focus on taking Banana Ball nationwide”. Savannah Morning News. 2023年8月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月24日閲覧。
  2. ^ Savannah Bananas announce they will play Banana Ball year round” (英語). wtoc.com (2022年8月24日). 2023年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月24日閲覧。
  3. ^ a b 'More than baseball': how the Savannah Bananas became the greatest show in sports”. The Guardian (2023年5月26日). 2023年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月26日閲覧。
  4. ^ a b スカートユニ、燃えるバット… なんでもありな“奇想天外”球団にMLB公式注目”. Full-Count (2022年6月18日). 2024年5月12日閲覧。
  5. ^ Heupel, Shannon (2022年3月17日). “Going Bananas! Two wild nights of 'the greatest show in baseball' coming to Montgomery”. Montgomery Advertiser. オリジナルの2023年8月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230823022850/https://www.montgomeryadvertiser.com/story/entertainment/2022/03/17/savannah-bananas-bringing-greatest-show-baseball-montgomery/7081610001/ 2022年3月20日閲覧。 
  6. ^ Inside Taiwan’s secretive microchip factory that powers the world economy (英語). www.youtube.comより2024年4月1日閲覧
  7. ^ Savannah Baseball Announces Team Name and Unveils Logo”. Coastal Plain League (2016年2月25日). 2017年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月25日閲覧。
  8. ^ Savannah's new baseball team: The Bananas”. SavannahNow.com. Savannah Morning News (2016年2月25日). 2016年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月25日閲覧。
  9. ^ Bananas Win CPL Championship”. The Savannah Bananas (2016年8月17日). 2023年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月23日閲覧。
  10. ^ New series 'Bananaland' to debut Friday” (英語). WJCL (2022年8月18日). 2023年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月24日閲覧。
  11. ^ Bananaland: Savannah Bananas get original series on ESPN+” (英語). WJXT (2022年8月19日). 2023年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月24日閲覧。
  12. ^ World, Mason Young Tulsa (2024年4月26日). “Former OU softball star Jocelyn Alo becomes first woman to sign with Savannah Bananas baseball team”. Tulsa World. 2024年5月12日閲覧。
  13. ^ Savannah Bananas bring their 'One City World Tour' to Mobile” (英語). WKRG News 5 (2021年3月29日). 2023年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月29日閲覧。
  14. ^ Savannah Bananas World Tour sites unveiled | Ballpark Digest” (英語) (2021年10月19日). 2023年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月29日閲覧。
  15. ^ Savannah Bananas deliver a dance party to Legends Field” (英語). The Pitch (2022年5月9日). 2023年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月29日閲覧。
  16. ^ 2023 Banana Ball World Tour Schedule”. thesavannahbananas.com. 2023年8月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月14日閲覧。
  17. ^ Savannah Bananas 2023 tour: Schedule, tickets and more to know about baseball's most entertaining team” (英語). www.sportingnews.com (2023年3月1日). 2023年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月29日閲覧。
  18. ^ Zimmer, Amy (2023年6月9日). “Savannah Bananas welcome Aussie Drop Bears in first-ever International Challenger”. オリジナルの2023年8月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230823022855/https://www.wjcl.com/article/savannah-bananas-welcome-aussie-drop-bears-in-first-ever-international-challenger/44134885 2023年8月14日閲覧。 
  19. ^ “Fans catching foul balls for outs? No walks allowed? Rules for this baseball team are bananas”. (2021年4月12日). オリジナルの2023年8月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230823022850/https://www.ksat.com/sports/2021/04/12/fans-catching-foul-balls-for-outs-no-walks-allowed-rules-for-this-baseball-team-are-bananas/ 2022年8月20日閲覧。 
  20. ^ Hstory | Banana Ball”. The Savannah Bananas. 2024年5月12日閲覧。
  21. ^ Banana Ball”. The Savannah Bananas. 2023年9月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月15日閲覧。
  22. ^ Rules | Banana Ball”. The Savannah Bananas. 2024年5月12日閲覧。
  23. ^ 世界にはこんなハッピーな野球がある。バナナボールを生み出した「サバンナ・バナナス(Sabannah Bananas)」のありえない話”. Esquire (2023年6月28日). 2024年5月12日閲覧。

関連資料[編集]

外部リンク[編集]