カート (植物)

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カート
Catha edulis.jpg
Catha edulis
保全状況評価
LOWER RISK - Least Concern
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
Status iucn2.3 LC.svg
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ニシキギ目 Celastrales
: ニシキギ科 Celastraceae
: アラビアチャノキ属 Catha
: アラビアチャノキ C. edulis
学名
Catha edulis,
(Vahl) Forssk. ex Endl.
和名
アラビアチャノキ
英名
Khat

カート(英:Khat)は、和名でアラビアチャノキ(学名Catha edulis)は、熱帯高地に自生するニシキギ科の常緑樹の一種。アフリカのエジプトから南アフリカの高地林に自生し、北東アフリカやアラビア半島南部で生産される。その国の呼称ではガットチャットミラーなど様々に呼ばれる[1]。ニシキギ科であり、ツバキ科チャノキとは近縁ではない。

カートはエチオピアジブチソマリアケニアイエメンでは嗜好品として嗜まれている[1]。カートの葉には、興奮性の物質であるカチノンおよびカチンが含まれる[2]。それぞれ向精神薬に関する条約のスケジュールIとIIIに指定され、国際的な管理下にある[3]。アラビアチャノキ自体には国際的な規制はないが、欧州でも15か国で規制下にある[2]

別名[編集]

英語のカートはアラビア語から取り入れたものである[1]。他国での表記は、アラビア語: قات‎ 、ソマリ語: qaat:発音:[ˈkæt]、ゲエズ文字:ጫት: č̣āt)である。

ケニアのスワヒリ語でミラー (miraa)、ソマリアのソマリ語でガット (qat)、ウガンダのガンダ語などバンツー系諸語ではマイルンジ (mayilungi)[1]。エチオピアでは公用語アムハラ語のチャットが一般的で、オロモ語のジマ (jimaa) も広く用いられ、スラングはバルチャ (barcha) [1]。別の文献では、イエメンでカート、ソマリ語でチャットやカート、ケニアでミラー、南部ソマリアでもケニアの影響でミラーと呼ぶ人が多いとされる[4]

他の別名, qaat, quat, jaad, chad, chaadなど。

生態[編集]

和名はニシキギ科アラビアチャノキ属アラビアチャノキという常緑樹[1]。原産地は不明である[1]

標高1200-2500メートルの高地での育成が多いが、500メートル程度でも可能である[1]。アフリカではエジプトから南アフリカまで高地林に自生し、生産地はエチオピアやケニアなど北東アフリカの高原地域や、アラビア半島南部のイエメンである[1]。抽出液は、苦味、甘味、芳香性がある[1]

効果と使用方法[編集]

カチノンの構造

カートの葉には、アンフェタミンに似た覚醒作用をもたらすアルカロイドの一種カチノン(Cathinone、(S)-1-フェニル-2-アミノ-1-プロパノン)が含まれており、新芽の葉を噛むことで高揚感や多幸感が得られる[5]他、食欲を抑制する効果もある[5]が、効果は非常に弱いものであり、コーヒーなどの刺激物を飲みなれている人間にはほとんど効かない。使用方法としては、新鮮な若葉を噛み潰し、頬の片側に噛みくずを貯めながら、汁を飲み下していく。枝単位で売られており、葉を何枚かちぎりながら噛んで行き、最終的には一枝を噛み潰す。

使用地域[編集]

カートを噛む男性、サナア、イエメン

東アフリカの一部の先住民族では伝統的な薬である[2]。飲酒の禁じられているイスラム世界のうち、アラビア半島から東アフリカにかけての地域においては、酒などの代用として嗜好品として需要が高いが、イスラム世界のほとんどの国ではその特性のため非合法となっている。先進国でも、多くの国では非合法とされている。

エチオピアジブチソマリアケニアイエメンでは法的な規制はなく、主にムスリム(イスラム教徒)で嗜好品として、また換金作物として国際的に取引される[1]

カートはイエメンでは合法であり、イエメン人の社交生活にカートはなくてはならないものである[5]。イエメンでは午後になるとカートの若葉を噛みながら街角に集まり、和やかに談笑している光景が見られる。エチオピアでも合法とされており、ムスリムを中心とする多くの人々に噛まれているらしい。ソマリアでもカートは流通しており、ソマリア沖の海賊の身代金の一部がカートで支払われることもある。また、海賊行為や戦闘に出る時に噛んで恐怖心の抑制や気分高揚を図る事もある。

外貨獲得の手段[編集]

カート売り、ブラオソマリランド

エチオピアの経済は外貨獲得の6割以上をコーヒー豆の輸出が支えるモノカルチャー経済である。だがコーヒー豆の国際価格は一時期に比べて激しく下落しており、ドキュメンタリー映画『おいしいコーヒーの真実』によると、コーヒー農家はせいぜい豆1kg(コーヒー80杯分)あたり2ブル程度(1ブル≒0.12USドル)の収入しか得られない。子供の教育や安全衛生までをカバーする最低限の生活には豆1kgあたり10ブル程度の価格が必要であるといわれており、コーヒー栽培に適した農地は他の作物を栽培するのに適していないため、コーヒー農家の多くは生活のためにコーヒーの木を伐採してカートの栽培に乗り出しており、カートが非合法とされている国を含む他国への輸出が彼らの外貨獲得に大きな役割を果たしているといわれる。

経済への悪影響[編集]

イエメンはモカ・コーヒーが特産であり、またある程度の降雨があるため農業も行われているが、カートの人気によってそれらの農地がカート畑に転換され、GDPの農業部門において3分の1を占めている[5]。カートの栽培には大量の水が必要であり、それを賄う為に大量の地下水を汲み上げることによる水資源の枯渇や地盤低下が懸念されている[5]。イエメン政府は、栽培や消費を抑制して、カートへの依存を減らそうとしているが、イエメンにおける全雇用の15%がカート関連産業であり、本格的な対策は取り難い[5]

規制[編集]

含有される物質については向精神薬に関する条約において、カチノンはスケジュールI、カチンはスケジュールIIIである[3]

しかし、アラビアチャノキ自体は国際的管理下にはない[2]。エチオピア、ジブチ、ソマリア、ケニア、イエメンでは規制されていない[1]。ベルギー、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、フランス、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロベニア、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、スイスでは規制下にある[1]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 落合雄彦 『アフリカ・ドラッグ考―交錯する生産・取引・乱用・文化・統制』 晃洋書房〈龍谷大学国際社会文化研究所叢書〉、2014年、103-104頁。ISBN 978-4-7710-2506-6
  2. ^ a b c d Khat drug profile (英語) 欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)
  3. ^ a b 松下正明(総編集) 「IV 国際向精神薬条約」『薬物・アルコール関連障害』 編集:牛島定信、小山司、三好功峰、浅井昌弘、倉知正佳、中根允文、中山書店〈臨床精神医学講座8〉、1999年6月、113, 115、109-123頁。ISBN 978-4521492018
  4. ^ 高野秀行 「第2章3 知られざる覚醒植物カート」『謎の独立国家ソマリランド』、200。 ISBN 978-4860112387
  5. ^ a b c d e f 朝日新聞 2014年4月1日

外部リンク[編集]