エロス (小惑星)

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エロス
433 Eros
NEARシューメーカーが撮影した エロスの画像
NEARシューメーカーが撮影した
エロスの画像
仮符号・別名 1898 DQ
分類 地球近傍小惑星
軌道の種類 アモール群
火星横断
発見
発見日 1898年8月13日
発見者 C. G. ヴィット
軌道要素と性質
元期:2007年4月10日 (JD 2,454,200.5)
軌道長半径 (a) 1.458 AU
近日点距離 (q) 1.133 AU
遠日点距離 (Q) 1.783 AU
離心率 (e) 0.223
公転周期 (P) 1.76 年
軌道傾斜角 (i) 10.83
近日点引数 (ω) 178.68 度
昇交点黄経 (Ω) 304.38 度
平均近点角 (M) 104.01 度
物理的性質
三軸径 34.4 × 11.2
× 11.2 km
質量 7.2 ×1015 kg
平均密度 2.67 g/cm3
表面重力 0.0059 m/s2
脱出速度 0.0103 km/s
自転周期 5.270 時間
スペクトル分類 S
絶対等級 (H) 11.16
アルベド(反射能) 0.25
表面温度
最低 平均 最高
~312 K
色指数 (B-V) 0.921
色指数 (U-B) 0.531
Template (ノート 解説) ■Project

エロス[1](433 Eros)は、地球近傍小惑星 (NEAs) の一つ。1898年8月13日ドイツのウラニア天文台の所長カール・グスタフ・ヴィットによって写真観測により発見され(同日にオーギュスト・シャルロワも発見していたが発表が遅れた)、ギリシア神話の恋心と愛のエロースにちなんで命名された。これは、小惑星に初めて男性名が命名されたケースである。

エロスは初めて発見された地球近傍小惑星でもあり、アモール群に属する。太陽からの平均距離は1.46天文単位(およそ2億1900万km。火星の軌道の内側)で、地球へ最大2300万kmまで接近する。なお、地球近傍小惑星の中で2番目に大きい(最大の小惑星は (1036) ガニメド)。

2012年1月31日には地球まで0.18天文単位まで接近した[2]。地球への接近は35年ぶりで、次の接近は2056年

近接探査[編集]

1975年ゴールドストーン電波望遠鏡によりエロスのレーダー観測が小惑星としては初めて行われ、形状が推定された[3]

1996年に打ち上げられた無人探査機「NEAR」は2000年2月15日にエロスの周回軌道に入り、おびただしいデータを送ってきた。以前から、エロスが変光する事が知られていたので、その形は細長く、しかも自転しているものと推定されてきたが、撮影された写真から、エロスはピーナッツ形をしていることが分かった。そして2001年2月12日(アメリカ時間)、探査機はエロスへの軟着陸を果たし、2週間にわたってデータを送信し続けた。ミッション終了後、NEARは「NEARシューメーカー」と改称された。

地形[編集]

エロスの10kmに渡って窪んでいる部分は発見当時"Saddle"()とあだ名が付けられ、後にギリシア神話の慕情の神の名を取りヒメロス (Himeros) と命名された。ヒメロスはエロスで最大のクレーターである。NEARシューメーカーが着陸したシューメーカー・クレーターはヒメロスの端の方にある。エロスで2番目に大きいクレーター、プシュケ (Psyche) はヒメロスの反対側にあり、直径は4.8Kmある。

エロスのクレーターには、恋愛に関係の深い神話や伝説、文学作品などに由来する名がつけられた。日本からは源氏物語の"Genji"(源氏)と"Fujitsubo"(藤壺)の名がクレーターに付けられている。

物理的性質[編集]

NEARシューメーカーが着陸直前に撮影したエロスの地表。レゴリスに覆われていることが分かる。表示されている範囲は約12.0メートル (39.4 ft)

エロスは細長い形状のため、地点によって重力や温度が大きく変わる。また、小物体が衝突すると衝撃で星全体が揺さぶられて表面のレゴリスが崩れるため、エロスには小クレーターが1km2あたり平均40個ほどしかない。

なお、NEARシューメーカーに搭載されたX線-ガンマ線分光器 (XGRS) による分析から、エロスはカンラン石輝石などを含む珪酸塩で構成された普通コンドライトで出来ていると見られている。

NEARシューメーカーの調査と着陸[編集]

NEARシューメーカー探査機は、1998年に短時間のフライバイを行い、2000年には軌道を周回し、その表面を広範囲に撮影した後、2度にわたってエロスに接近した。2001年2月12日、ミッションの最後に、マニューバジェットを使用して小惑星の表面に着陸に成功した。

地球近傍小惑星に初めて探査機によって接近したのはこれが初めてであった[4]

エロスが登場する作品[編集]

小説とテレビのシリーズ「エクスパンス -巨獣めざめる-」では、エロスを貫くトンネル内に住む民間人に、謎の物質プロト分子による壊滅的な科学実験が解き放たれた。「エロス事件」では、小惑星が通常の軌道を外れ金星に衝突した[5]

オースン・スコット・カードの小説エンダーのゲーム映画に登場し、エロスは人類の拠点となった[6]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『オックスフォード天文学辞典』(初版第1刷)朝倉書店、59頁。ISBN 4-254-15017-2 
  2. ^ Asteroid 433 Eros Getting Close to The Earth Orbit, Scienceray, 2012年1月30日2013年9月11日閲覧
  3. ^ Eros: Calibration of Radar-Based Shape Constraints from First NEAR Images
  4. ^ Svitil, Kathy A. (February 2001). “The end is near: The remarkable journey of a tough little space probe to the place where killer asteroids lurk”. Discover Magazine. http://discovermagazine.com/2001/feb/cover 2019年9月30日閲覧。. 
  5. ^ Scott Snowden (2019年12月13日). “'The Expanse': Here's a Recap of Seasons 1-3 Ahead of Season 4 on Amazon Prime”. Space. https://www.space.com/the-expanse-seasons-1-3-recap.html 2022年12月18日閲覧。 
  6. ^ Ender's Game and Philosophy: The Logic Gate is Down. John Wiley & Sons. (2013). p. 117 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]


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