イワレンゲ属

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イワレンゲ属
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ上類 Superrosids
: ユキノシタ目 Saxifragales
: ベンケイソウ科 Crassulaceae
: イワレンゲ属 Orostachys
学名
Orostachys Fisch.[1][2]
タイプ種
Orostachys malacophylla (Pall.) Fisch.[2]
和名
イワレンゲ属
  • 本文参照
Orostachys fimbriata
Orostachys spinosa
ツメレンゲ
アオノイワレンゲ
イワレンゲ

イワレンゲ属(イワレンゲぞく、学名Orostachys)は、ベンケイソウ科の1つ[1]

特徴[編集]

多肉多年草であるが、開花すれば枯死する一稔性植物。花後に葉腋から腋芽や走出枝をだして繁殖する。地下に根茎はない。根出葉は顕著なロゼット状に開き、を密生させる。葉に葉柄がなく、葉の先端が歯牙状または針状にとがることがある。ロゼットの中央の軸部分が円錐状に伸長して花茎になり、多数のを密につける。花序には葉状のがつき、花柄の基部に小苞がある。短日性で、秋咲き。花序の下の方から順に咲いていく。は緑色の肉質で、裂片は5個で基部で合生する。花弁は5個で、白色、まれに紅色または黄色をおび、花弁全長の基部の4分の1ほどが合生する。雄蕊は2輪で10個あり、葯は2室で底着し、縦に裂ける。雌蕊は5個でほぼ離生し、子房の基部は柄状に細まり、背面に蜜腺がある。果実は5個の袋果になり、子房は花時と変わらない形状をしている。種子は楕円形で長さ約1mmになる[1]

分布[編集]

ウラル山脈以東のシベリア中国大陸朝鮮半島から日本にかけて分布する[1]

生育環境[編集]

分布地の内陸部または海岸部の岩上に生育する。建物の屋根上に生えるものもある[1]

名前の由来[編集]

属名 Orostachys は、ギリシャ語でOros「山」とStachys「穂」による合成語で、「山に生え、穂状花序であること」からによる[3]

[編集]

この属に属する種は、The Plant List, Orostachys では12種、日本の植物学者大場秀章は、『改訂新版 日本の野生植物 2』では一部の種を変種やその他の属として扱い、8種あるとしている[1]

The Plant Listによる種[編集]

(学名 - 分布地)

  • Orostachys aggregate (Makino) H. Hara
  • Orostachys cartilaginea V.N.Boriss. - 中国大陸
  • Orostachys chanetii (H.Lév.) A.Berger - 中国大陸
  • Orostachys fimbriata (Turcz.) A.Berger - 中国大陸、朝鮮半島、モンゴルロシア
  • Orostachys iwarenge Hara
  • Orostachys japonica A.Berger - 中国大陸、日本、朝鮮半島、ロシア
  • Orostachys malacophylla (Pall.) Fisch. - 中国大陸、日本、朝鮮半島、モンゴル、ロシア
  • Orostachys minuta (Kom.) A.Berger - 中国大陸、朝鮮半島
  • Orostachys paradoxa (Khokhr. & Vorosch.) Czerep.
  • Orostachys sikokiana (Makino) Ohwi
  • Orostachys spinosa (L.) Sweet - 中国大陸、朝鮮半島、モンゴル、ロシア
  • Orostachys thyrsiflora Fisch. - 中国大陸、カザフスタン、モンゴル、ロシア

『日本の野生植物』による、日本に分布する種[編集]

ツメレンゲ節 Sect. Appendiculatae - 葉先がガラス質となり、短針状突起がある。
  • ツメレンゲ Orostachys japonica (Maxim.) A.Berger[4] - ロゼットの葉は披針形で、先端に短針状突起がある。夏のロゼットは径12cmになる。花茎は高さ8-30cmになり、花弁は白色。本州の関東地方以西、四国、九州、朝鮮半島、中国大陸(東北部)に分布する。日当たりよ良い岩上や屋根上に生育する[1]。準絶滅危惧(NT)(2017年、環境省レッドリスト)。
    • ヤツガシラ Orostachys japonica (Maxim.) A.Berger f. polycephala (Makino) H.Ohba[5] - 古くから園芸種として各地で観賞用に栽培されてきたもので、多数の腋生枝をだす品種。「八頭」として園芸的に珍重されている[1]
イワレンゲ節 Sect. Orostachys - ガラス質が発達せず、葉先に針状突起がない。
  • ゲンカイイワレンゲ Orostachys malacophylla (Pall.) Fisch. var. malacophylla[6] - ロゼットの葉は長楕円形または長楕円状さじ形で、先端は鈍頭または円頭になる。ロゼットは径10cmになり、花茎は高さ10-20cmになる。日本の九州北部と対馬、朝鮮半島、中国大陸(東北部)、ロシアの沿海地方サハリンなど、日本海沿岸地域に広く分布する[1]。絶滅危惧II類(VU)(2017年、環境省レッドリスト)。
    • アオノイワレンゲ Orostachys malacophylla (Pall.) Fisch. var. aggregeata (Makino) H.Ohba[7]; Syn. Orostachys aggregeata (Makino) H.Hara - ロゼットの葉は扁平、倒卵状披針形から楕円形、先端は鈍頭から円頭になる。ロゼットは径1.5-3cm、花茎は高さ10cmになり、白色の花をつける。葯は赤紫色。南千島、北海道、本州の東北地方、ロシア沿海地方、サハリンに分布する。海岸の岩上に多いが内陸部の岩上にも生育する[1]
      • ウスベニレンゲ Orostachys malacophylla (Pall.) Fisch. var. aggregeata (Makino) H.Ohba f. rosea (Sugaya) H.Ohba[8] - 花弁や葯が淡紅色になるアオノイワレンゲの品種[1]
    • イワレンゲ Orostachys malacophylla (Pall.) Fisch. var. iwarenge (Makino) H.Ohba[9]; Syn. Orostachys iwarenge (Makino) H.Hara - ロゼットの葉は倒卵状披針形、先端は鈍頭から円頭になる。ロゼットは径10cm、花茎は高さ10-20cmになり、白色の花をつける。アオノイワレンゲに似るが、全体に白緑色。葯は黄色。日本固有種。本州の関東地方以西、九州に分布する。海岸の岩上や屋根上に生育する[1]。絶滅危惧II類(VU)(2017年、環境省レッドリスト)。
    • コモチレンゲ(レブンイワレンゲ)Orostachys malacophylla (Pall.) Fisch. var. boehmeri (Makino) H.Hara[10]; Syn. Orostachys boehmeri (Makino) H.Hara - ロゼットの葉は倒卵形から倒披針形、先端は鈍頭から円頭になる。ロゼットは径2-4cm、花茎は高さ3-6cmになり、白色の花をつける。イワレンゲに似るが、全体に小型。葯は汚淡紅色。日本固有種。北海道の函館日高礼文島に布する。海岸の岩上に生育する[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 『改訂新版 日本の野生植物 2』pp.220-221
  2. ^ a b Orostachys Fisch., Tropicos
  3. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1470
  4. ^ ツメレンゲ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ ヤツガシラ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  6. ^ ゲンカイイワレンゲ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  7. ^ アオノイワレンゲ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  8. ^ ウスベニレンゲ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  9. ^ イワレンゲ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  10. ^ コモチレンゲ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献[編集]