アンフィスバエナ

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アンフィスバエナをあしらった紋章。

アンフィスバエナ古希: Αμφισβαινα, : Amphisbaena)は、ローマなどの博物誌関連の書物などに登場する伝説生物。身体の両端に頭のついている双頭のだとされているが[1]、後世には尾の先にもう1つの頭のついている双頭のドラゴンとして表現されるようになった。

概要[編集]

名称はギリシア語で「両方」を意味する「アンフィス」と「行く」を意味する「バイネイン」に由来し、「両方向に進める」という意味を持つ[1][2]。ギリシャの詩人ニカンドロス英語版はこの名前を、身体の頭と尻尾に双方の顔を持つアンフィスバエナを体現した名前と評している[1][3]

双頭の蛇として描かれたアンフィスバエナ。
双頭のドラゴンとして描かれたアンフィスバエナ。

プリニウスは著書『博物誌[注釈 1]において、アンフィスバエナが双頭を持つ理由として、「毒を吐き出すのに、一つの口では足りないようだ」[2][3][4]と言及している。

古代ローマの詩人マルクス・アンナエウス・ルカヌスの『内乱(ファルサリア)英語版』にもアンフィスバエナは登場する[5]。そこでは、リビアを移動中のカトーの軍を襲った多数の蛇のうちの1匹として名前が挙げられている。ルカヌスの説明によれば、ギリシア神話ペルセウスが、斬り落としたメドゥーサの首を片手にリビア砂漠を越えた時、彼女の生首から零れ落ちた血液からアンフィスバエナが生まれたのだという[1]。またその住み処は北アフリカの砂漠であるという[5]

セビーリャのイシドルス(セビリャのイシドロ)の説明によれば、アンフィスバエナは他の蛇に比べてきわめて寒さに強く[1][4]、それは温血動物であるためだという[1]

アンフィスバエナは「蟻の母」とも呼称され、神話の世界では頭と尻尾にある両方の口でを食べる蛇として描かれる[要出典]

古い時代では、アンフィスバエナはしばしば毒々しい双頭の蛇として描かれた[4]が、中世以降になると、鱗に覆われた脚や蝙蝠のような翼がついた、双頭のドラゴンのような姿で描かれることが増えた[1][5][6]。 動物寓話集の挿絵には、前方の頭が後方の頭にかみついてタイヤのように転がって移動する様子を描いたものもある[1][5]が、多くの場合、2本の脚、背中の翼をもつ姿で表現される[5]

アンフィスバエナは、ワイバーンリントヴルムと同じく、ヨーロッパ紋章に描かれていることも多く、尾の先にもう1つの頭が付いたドラゴンとして表現されている[4]

アンフィスバエナは詩にもその名前を多数見せる。ニカンドロス、ジョン・ミルトンアレキサンダー・ポープパーシー・ビッシュ・シェリーアルフレッド・テニスンアルフレッド・エドワード・ハウスマンなど、多くの詩人が、自ら作った詩の中でアンフィスバエナに言及している[要出典]

のちに、ミミズトカゲ亜目の学名「Amphisbaenia」は、アンフィスバエナの名前に因んで決められた[7]

脚注[編集]

注釈[編集]

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  1. ^ 書籍[4]によっては、『博物誌』ではアンフィスバエナの生息地をエチオピアとしていると説明するものがある。

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 幻想世界を歩む会 『幻想世界幻獣事典』 スタジオエクレア編集、笠倉出版社2011年11月ISBN 978-4-7730-8576-1
  • 草野巧 『幻想動物事典』 新紀元社〈ファンタジー事典シリーズ〉、1997年5月ISBN 978-4-88317-283-2
  • 松平俊久 「アンフィスバエナ」『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』 蔵持不三也監修、原書房2005年3月、152-153頁。ISBN 978-4-562-03870-1
  • アラン, トニー 「アンフィスバエナ」『世界幻想動物百科 ヴィジュアル版』 上原ゆうこ訳、原書房、2009年11月(原著2008年)、76-77頁。ISBN 978-4-562-04530-3
  • ローズ, キャロル 「アンフィスバエナ」『世界の怪物・神獣事典』 松村一男監訳、原書房〈シリーズ・ファンタジー百科〉、2004年12月、41頁。ISBN 978-4-562-03850-3

関連項目[編集]

外部リンク[編集]