おおいぬ座ガンマ星

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おおいぬ座γ星[1]
Gamma Canis Majoris
仮符号・別名 ムリフェイン[2], Muliphein[3][4]
星座 おおいぬ座
視等級 (V) 4.12[1]
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α) 07h 03m 45.49305s[1]
赤緯 (Dec, δ) -15° 37′ 59.8300″[1]
赤方偏移 0.000107[1]
視線速度 (Rv) 32.00 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: -0.14 ミリ秒/年[1]
赤緯: -11.36 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 7.38 ± 0.21ミリ秒[1]
距離 441.73 ± 12.94光年[注 1]
(135.50 ± 3.97パーセク)[注 1]
絶対等級 (MV) -1.540[注 2]
Canis Major IAU.svg
Cercle rouge 100%.svg
γ星の位置
物理的性質
半径 5 R[5]
質量 4.3 M[5]
スペクトル分類 B8II [1]
光度 685 L[5]
表面温度 13,600 K[5]
色指数 (B-V) -0.12[6]
色指数 (U-B) -0.48[6]
色指数 (R-I) -0.10[6]
別名称
別名称
おおいぬ座23番星[1],
23 CMa[1], BD-15 1625[1],
FK5 271[1], HD 53244[1],
HIP 34045[1], HR 2657[1],
SAO 152303[1]
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おおいぬ座γ星(おおいぬざガンマせい、γ CMa)はおおいぬ座の4等

概要[編集]

青白いB型輝巨星。2等級以上の明るさを持つ星が多いおおいぬ座の中で、4等星のこの星にγの符号が与えられていることは奇妙に見える[5]が、おおいぬ座の他の星に付けられたバイエル符号から、バイエルはおおいぬ座の星々には北から順に符号を付けたのではないかと考えられている[5]

一方で、バイエルが符号を付けた頃は現在よりも暗かったのではないか、という疑問が持たれることもある[5]。事実、「1670年には姿を消し、1693年まで見えなかった」とする文献もあり[5]ボーデの大判星図ウラノグラフィア』(1801年)やアメリカの『バリット星図』(1835年[注 3])などではこの星に変光星の表示がなされるなど、一時期は変光星と考えられたこともあった。しかしながら、そのような減光を起こすメカニズムは知られていない[5]。例えば星間塵の影響だとすると、星の色はより赤くなるはずだが、この星の色にそのような異常は見られない[5]

名称[編集]

ムリフェイン[2] (Muliphein[3][4]) という固有名を持つ。ケンタウルス座γ星も同じアラビア語由来の固有名 Muhlifain を持つが、別の星である[3]。2016年8月21日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) は、Muliphein をおおいぬ座γ星の固有名として正式に承認した[4]

この名前は、イタリアの天文学者でシチリア島にあるパレルモ天文台の台長を務めたジュゼッペ・ピアッツィの『パレルモ星表』(1814年)から見られるようになったことから、ピアッツィによる命名と考えられている。

al-Muḥlifān は、アラビア語で「誓い」を意味する語根 ḥ-l-f- の受動分詞双数形で、「互いに誓い合う二つのもの(=一組の星)」というような意味合いがある。双数形を取っていることから、ペアとなっているもの(この場合は星)を指しているものと考えられる。しかしながら、実際にどの星のペアを指しているのかよくわかっていない。「ケンタウルス座α星β星説」と「はと座α星β星説」がある[7]

日本でも、この名の意味はかなり錯綜している。「両人の偽誓への誘惑者」[8][要ページ番号]というのは、al-Muḥlifān ではなくその別名 al-Muḥnithān ([アル=ムフニサーン]、「偽りの宣言をすることを唆す」という意味)の語根 ḥ-n-th- の受動分詞・双数形で「偽誓を誘発させる二つのもの(=一組の星)」という意味合い)と取り違えたものである。また、「犬の頭」としているものもある[9][要ページ番号]。いずれも語源となったアラビア語の本来の意味ではない。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算(誤差も同様)、光年はパーセク×3.26より計算。各有効桁小数第2位
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。有効桁小数第3位
  3. ^ 同書の初版は1833年だが、復刻も含め1835年版が広く流布しているので、ここでは出版年を1835年とした。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s SIMBAD Astronomical Database”. Results for gam CMa. 2016年11月4日閲覧。
  2. ^ a b 原恵 『星座の神話 - 星座史と星名の意味』 恒星社厚生閣、2007年2月28日、新装改訂版第4刷、239頁。ISBN 4-7699-0825-3
  3. ^ a b c Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations (2 ed.). Sky Publishing. pp. 22-23. ISBN 978-1-931559-44-7. 
  4. ^ a b c IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年11月4日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j Jim Kaler. “Muliphein”. STARS. 2016年11月4日閲覧。
  6. ^ a b c 輝星星表第5版
  7. ^ Paul Kunitzsch, p. 23.
  8. ^ ヨアヒム・ヘルマン 『カラー天文百科』 小平桂一平凡社1976年3月25日、初版第1刷。
  9. ^ 藤井旭 『星座ガイドブック秋冬編 - 小型カメラと小望遠鏡による星座めぐり』 誠文堂新光社1974年ISBN 9784416275047

参考文献[編集]

  • Allen, R. H., Star Names: Their Lore and Meanings, (rep.), New York, Dover Publications., 1963 (1st:1899), p. 130.
  • Kunitzsch, P., Arabische Sternnamen in Europa. Wiesbaden, Otto Harrassowitz, 1959, pp. 187-188.