高山気候

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高山植物

高山気候(こうざんきこう)とは気候区分のひとつである。ケッペンの気候区分には無い区分で、後にトレワーサらによる修正版で加えられた。記号にはHを用いる。

アリソフの気候区分では、ヒマラヤ山脈などが高山気候地域に位置づけられている[1]

分布

概ね標高2000m以上の高地に分布するが、明確な基準はない。以下は主な分布地である。

なお日本にも富士山をはじめ標高2000m以上の高山は多数存在するが、気候区を形成するほどの広範囲にわたって高地が広がる箇所が無く局地的に存在しているのみであるため通常はこれらの山々に高山気候が分布しているとは言わない。

特徴

通常、標高が100m高くなるごとに気温は0.6℃下がる。この気温の逓減率により、この気候帯に属する高地では同緯度の低地よりも気温が低くなる。低緯度地域では気温の年較差が小さいという低地の熱帯気候の特徴を保ったまま全体的に気温が下がるため緯度の割には1年を通じて涼しい、いわゆる「常春」と呼ばれる気候になる。例えばエクアドルの首都キト赤道直下に位置するにもかかわらず標高2800mを超える高地に位置しているため、月平均気温は1年中13.5℃前後でほとんど変化が無い。

一方、中・高緯度地域では同緯度の低地で温帯亜寒帯気候であるため低緯度地方とは異なり年較差が小さくなく寒帯に似た気候を示す。なお、いずれの場合も気温の日較差は大きい。

代表的な都市

同緯度の低地に比べて涼しいため低緯度地域では古くより高山都市が発達しマヤ文明アステカ文明インカ文明が栄えた。一方、中緯度以上の地域でもその数は多くはないもののやはり高山都市が存在する。以下はこの気候区に属する都市のうち代表的なものである。

なおケッペンの気候区分にはこの高山気候は無く、この気候区分は後にトレワーサらによる修正版で加えられたものである。オリジナルのケッペンの気候区分ではラパスはCwc、キト・メキシコシティ・アディスアベバ・ラサはCwb、サンタフェはBSkに、それぞれ分類されている。

植生

キリマンジャロ山など低緯度地域に位置する高山では低地の熱帯雨林サバナから標高が上がるにつれて温帯の落葉広葉樹林、亜寒帯の針葉樹林、寒帯のツンドラ、頂上近くの永久氷雪地帯へと高度別に段階的な植生の変化が見られる。一方中・高緯度地域でも広葉樹林・針葉樹林から始まる高度別の植生の変化は見られるが、森林限界、植物限界ともにその標高は低緯度地域に比べて低くなる。なお、高山に見られるツンドラを寒帯のツンドラと区別して高山ツンドラという。

乾燥帯においては標高に伴って気温が下がることによって乾燥限界が下がり、また冬季の降雪によって降水量が増えることもある。そのため同緯度の低地で砂漠であっても、高地では背丈の低い草が生育するステップになる。さらに標高が上がると乾燥限界がさらに下がり、乾燥地帯から湿潤地帯へと変化する。アメリカ合衆国アリゾナ州北部、フラッグスタッフ市付近にそびえる独立峰、ハンフリーズ・ピーク(Humphreys Peak、標高3,850m)ではその植生は山麓の高地砂漠(実際はステップ)から山岳森林、高山ツンドラへと変化する。

脚注

  1. ^ 矢澤(1989):355ページ

参考文献

外部リンク