金のはさみのカニ

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金のはさみのカニ』(きんのはさみのかに、原題・フランス語: Le Crabe aux pinces d'or英語: The Crab with the Golden Claws)は、ベルギー漫画家エルジェによるコミックシリーズ『タンタンの冒険』の第9巻である。この作品より、後にタンタンの最大の理解者の一人となるハドック船長が登場する。ナチスのベルギー攻略の影響を受けて、今までシリーズを掲載していた『Le Petit Vingtième(20世紀こども新聞)』の廃刊に伴い、ベルギーの新聞『Le Soir』に連載されたもので第一作となる。上記でも述べたように、第二次世界大戦真っ只中、ベルギーがナチス・ドイツによって占領されていた頃に描かれた作品の一つであり、これ以降は政治的なテーマを避けて純粋な冒険物語に焦点を当てた作品となる。

本エピソードは『Hergé's Adventures of Tintin』と『The Adventures of Tintin』で2度テレビアニメ化され、さらにピーター・ジャクソン製作、スティーヴン・スピルバーグ監督による3Dモーションキャプチャ映画『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(2011年)でも原作の一つとなった。

あらすじ

いつものように愛犬スノーウィと一緒に散歩中のタンタン。スノーウィがゴミ箱に顔を突っ込み、缶詰の空き缶が鼻にはさまる。缶を取ってやったタンタンはデュポンとデュボンに偶然出会い、ある溺死体の遺留品の中に、スノーウィが鼻を突っ込んだ缶と同じカニの絵が描かれたラベルを見つける。そのラベルの破れ方から見て、スノーウィの見つけた缶から破られたものと考えたタンタンは空き缶のあったゴミ箱に急ぐが、さっきの缶はなくなっていた。遺留品のラベルの裏には「カラブジャン」と書いてあり、デュポンからの情報でそれが港に停泊している貨物船の名前だと知ると、タンタンは港へ向かいカラブジャン号に乗り込む。

カラブジャン号に乗り込んだタンタンは、船倉でアヘンが入った同じラベルのカニ缶を発見するが、背後から殴り倒され船倉に閉じ込められてしまう。かろうじて船倉から脱出したタンタンは船長室へ忍び込み、そこで貨物船の船長であるハドックと出会うが、彼は一等航海士のアランの仕業でに溺れて船長室に閉じ込められていたために、麻薬密輸の事実を知らなかった。タンタンはハドックと協力してカラブジャン号から脱出し、彼らを始末すべくやってきた敵の水上飛行機を奪取。陸地へ向かおうとしたがに巻き込まれ、飛行機は北アフリカモロッコサハラ砂漠に墜落してしまう。

砂漠を彷徨う羽目となったタンタン達だったが、ハドックは蜃気楼に翻弄され、両者ともにたちまち行き倒れてしまう。しかし、偶然通りかかったフランス外人部隊ラクダ騎兵に救助され、駐屯地で司令官のデルクール中尉と出会う。そこでカラブジャン号がタンタン達を襲った嵐によって沈没したことを知る。タンタンとハドックは中尉に事情を話し、カラブジャン号が次に寄航する予定だった港町バクハルへと向かう。その道中で盗賊に襲われるが、盗賊に酒のボトルを撃ち抜かれた事で激昂したハドックはライフル銃を振り回しながら突撃。盗賊は恐れおののいて退陣し、運良く無線連絡を受けてタンタン達の後を追っていた中尉達の協力もあり、無事にバクハルへと到着する。

バクハルに着いたタンタン達は公安事務所へ向かうが、偶然アランを目撃する。タンタンはすぐさま追跡するが見失い、ハドックとも逸れてしまう。一方、ハドックはバクハルの港に停泊していた貨物船が嵐を利用して船名を変えたカラブジャン号だと気づく。そこへタンタンもやって来るが、目の前でハドックが一味に連れ去られてしまう、タンタンは、カラブジャン号から送信した無線を傍受してバクハルに到着したデュポンとデュボンに合流し、二人がカニ缶を見かけたという商店に向かうが、そのカニ缶は本物のカニが入った缶詰だった。しかし、店の主人からカニ缶の仕入れ先であるオマル・ベン・サラードという商人の情報を入手したデュポンらはサラードを調査し、タンタンはハドックを探しに行く。

タンタンがアランを見失った場所で変装をして見張っていると、彼がある民家に入っていくのを目撃し後を追う。民家の地下室で秘密の通路を発見し潜入すると、カラブジャン号の船倉にあった缶詰と同じものを発見。捕らわれていたハドックとも再会した。タンタンは敵の見張りをハドックに任せ、逃げ出したアランの後を追いかける。

時を同じくして、サラードは自身の屋敷でデュポンとデュボンに尋問を受けていた。嫌疑をかけられたサラードが激昂していると、突如棚の一つが開きアランが飛び出してくる。地下通路はサラードの屋敷へ繋がっていたのだった。サラードは直後に飛び出してきたスノーウィに気絶させられ、デュポンらに逮捕された。

逃走するアランをタンタンらが追う展開となり、港でモーターボートによる激しい追走劇を繰り広げ、その末にアランは逮捕された。桟橋へと戻ってきたタンタンは、アパートの前で連れ去られカラブジャン号に閉じ込められていた日本人刑事の倉木文治(くらき ぶんじ)から事件の経緯を知り、事件は幕を閉じた。


関連項目