通信機能抑止装置
通信機能抑止装置(つうしんきのうよくしそうち)とは無線通信を妨害するための無線設備である。通信抑止装置、電波抑止装置などとも呼ばれる。特に携帯電話やPHSの通信を妨害するための無線設備を指してこう呼ぶことが多い。
概要
劇場、コンサートホール、映画館などでは、開演中に携帯電話の着信音等が鳴り響くと、観客が演劇、演奏、映画などを鑑賞する邪魔になり不快感をあたえることになるので、場内では携帯電話の電源を切ることが呼びかけられている。 しかし、意図してこれを守らない観客や悪意がなくても携帯電話の電源を切り忘れる観客がいる場合もあり、場内の携帯電話すべてについて着信音が鳴らないようにすることは困難である。 携帯電話が使用する周波数の妨害電波を発射できれば携帯電話の通信を妨害するので、場内にあるすべての携帯電話の着信音が鳴ることを確実に防止することができる。
圏外という表現について
通信機能抑止装置は一定の範囲の場所で携帯電話やPHSを圏外にするとメーカーや報道などで表現されることが多いが、 基地局からの電波を遮蔽して圏外を作り出すのではなく、 妨害電波を発射することで通話不能にしているのである。 このような場合でも携帯電話やPHSは圏外を表示する。
免許
通信機能抑止装置を設置して運用するには電波法第4条(無線局の開設)
の規定により免許が必要となる。ここで、
- 「無線局」とは、無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう。但し、受信のみを目的とするものを含まない。(電波法第2条第5号)
- 「無線設備」とは、無線電信、無線電話その他電波を送り、又は受けるための電気的設備をいう。(同法第2条第4号)
と定義されており、通信機能抑止装置が無線設備に該当し、無線設備の操作を行う者としては第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者を要する。
2006年(平成18年)より、「実験試験用」で空中線電力最大10mWの実験試験局として免許されている。これは、電波利用料を高額としないための措置 [1] による。
通信機能抑止装置は、簡易な免許手続の対象ではない為、予備免許の申請後に総合通信局(沖縄総合通信事務所を含む。)による落成検査を経ないと運用できない。なお、技術基準適合証明の対象でもない。
法的根拠
電波法第56条には、「混信等の防止」として、
無線局は、他の無線局又は電波天文業務(宇宙から発する電波の受信を基礎とする天文学のための当該電波の受信の業務をいう。)の用に供する受信設備その他の総務省令で定める受信設備(無線局のものを除く。)で総務大臣が指定するものにその運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用しなければならない。但し、第52条第1号から第4号までに掲げる通信については、この限りでない。
とあり、「第52条第1号から第4号までに掲げる通信」とは次のものである。
- 遭難通信
- 緊急通信
- 安全通信
- 非常通信
通信機能抑止装置の運用は他の無線局の業務(携帯電話・PHSは電気通信業務)を妨害するのに、免許を与えられ運用されている法的根拠は不明である。
用いられる場所
妨害する通信の種類
- 携帯電話
- PHS
- 盗撮ビデオカメラからのワイヤレス伝送電波[2]
最近の動向
銀行のATM での利用
振り込め詐欺において、詐欺を企てる者が、これから金を騙し取ろうとする相手をATMまで誘導し、相手と携帯電話やPHSで通話しながらATMを操作させ、振り込ませるという手法があり、これによる被害が多数発生している。 2008年(平成20年)12月10日より千葉銀行は全国初の取り組みとして、振り込め詐欺の被害を防止するために、ATMの近くで携帯電話やPHSで通話ができないようにATMコーナーに通信機能抑止装置を設置し、被害を減らそうという試みを始めた [3]。
不正受験防止での利用
2011年(平成23年)の大学入試問題ネット投稿事件を受け、不正防止の対策として通信機能抑制装置の導入を検討する大学が増加している[4]。
導入している企業や施設
以下、五十音順。
あ行
- RHK ホール(千葉県野田市)
- 秋田中仙町町民ホール
- アクトシティ
- アクロス福岡
- 朝日放送ザ・シンフォニーホール(大阪府大阪市)
- 朝日放送新社屋
- 足立区シアター 1010
- 伊賀市文化会館
- 生駒市コミュニティーセンターはばたきホール(奈良県)
- 石川県こまつ芸術劇場うらら 大ホール、小ホール
- 市原町市民文化会館(福島県原町)
- 梅田芸術劇場
- NHKホール
- NTT コムウェア
- 大分県立 iichiko 総合文化センター
- 大阪芸術大学
- オーチャードホール
- 大宮ソニックシティ 大ホール
か行
- 関西外国語大学
- 北上市文化交流センター 大ホール、中ホール(岩手県)
- 行田市教育文化センターホール(埼玉県)
- 群馬音楽センター(群馬県)
- 栗東芸術文化会館 大ホール、小ホール(滋賀県)
- 神戸文化ホール 大ホール、中ホール
- 国立劇場おきなわ 大劇場、小劇場
- 国立能楽堂 本舞台 パルコ劇場
- 国立文楽劇場 大ホール、小ホール(大阪市中央区)
- 越谷コミュニティセンター 大ホール、小ホール(埼玉県)
さ行
- 堺市立東文化会館
- 札幌コンサートホール 大ホール、小ホール
- サンエール鹿児島
- サントリーホール
- シアターコクーン
- 島根大学医学部附属病院 (ICU)
- 松竹座
- 昭和女子大学 人見記念講堂
- 新宿明治安田生命ホール
- 新橋演舞場
- スパイラルホール(東京都港区)
- 仙台市青年文化センター
た行
- 高崎シティギャラリーコアホール(群馬県)
- 高崎市文化会館(群馬県)
- 高砂市文化会館 大ホール、中ホール(兵庫県)
- 高松シンボルタワー
- 宝塚大劇場
- 宝塚劇場バウホール
- 千葉銀行
- 東京オペラシティ
- 東京慈恵会医科大学附属病院 (ICU)
- 東京女子医科大学病院 (ICU)
- 東京・新・グローブ座
- 東京宝塚劇場 紀尾井ホール 中ホール、小ホール
- 東邦大学医療センター
- 東邦大学医療センター 大森病院 (ICU)
な行
- 成田病院(救急外来)
は行
- 阪神淡路大震災記念人と防災未来センター(兵庫県宝塚市)
- 博多座
- 福井県立音楽堂 大ホール、中ホール
- 福野文化創造センター円形劇場ヘリオス(富山県)
ま行
- 舞鶴市総合文化会館
- 南座
- ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川県)
- 室蘭市市民会館
や行
- やまと郡山城ホール 大ホール、小ホール(奈良県大和郡山市)
- 四日市市文化会館
脚注
- ^ 平野亜矢 (2007年1月9日). “あえて“圏外”を作る「NHKホールの携帯電話抑止装置」”. 日経パソコン 2011年11月5日閲覧。
- ^ 『電波新聞』1999年(平成11年)12月15日
- ^ ATMコーナーに電波抑止装置 千葉銀が振り込め詐欺対策 YOMIURI ONLINE 2008年12月10日
- ^ 『毎日新聞』2011年3月3日
参考文献
携帯電話抑止装置 テレ・ポーズSP - 導入実績(マクロスジャパン)
関連項目
外部リンク
- 総務省
- 携帯電話等の通信抑止装置について 関東総合通信局
- 携帯電話等の通話抑止装置の使用について 東海総合通信局
- メーカー