被爆者
被爆者(ひばくしゃ)とは、空襲や爆撃による被害を受けた人のことを指す。今日では原子爆弾あるいは水素爆弾に代表される核爆弾による攻撃の被害を受けた人を指して呼ぶことが多い。
「被爆」とは何か
一般的に「被爆」は核爆弾による被害を受ける事を指し、英語でも「Hibaku」は同じ意味で使われる。よく似た言葉に「被曝」があるが、こちらは放射能(放射線)にさらされた場合を指す(詳しくは『被曝』の項目を参照のこと)。厳密にいえば、核爆弾による直接攻撃を受けた者は「被爆者」、直接の被害は受けず、核爆発に伴う残留放射能を浴びた者は「被曝者」であるが、今日では便宜上最初の事例を「一次被爆者」、後の事例を「二次被爆者」と呼ぶことが多い。また胎児の時に被爆した者を「胎内被爆者」、被爆者の子は「被爆二世」、その孫は「被爆三世」と呼ばれる。また人間だけでなく、被爆した建造物は「被爆建造物」と呼称されることもある。
健康への影響
核爆弾による被曝をすると、直接的な外傷(火傷など)を受けるだけでなく、特に深刻な外傷が見られなくても頭髪の脱毛、皮下出血、歯茎からの出血、下痢や嘔吐など、慢性的な白血病や甲状腺がんなどを発症する割合が高くなる傾向が強い。これらの健康障害を特に原爆症という。原爆症の認定審査は厚生労働省の原子爆弾被爆者医療分科会が行っている。
胎内被爆者については、高放射線量を浴びた16週から25週の胎児については知的障害児の誕生頻度が上昇する。それ以外の胎児については有為な変化は見られない。
胎内被爆者以外の被爆二世については、健康への影響は存在しない。放射線影響研究所は2007年に、被爆二世による遺伝的な影響は、死産や奇形、染色体異常の頻度、生活習慣病を含め見られないと発表した[1][2]。
なお、日本の法律上の被爆者の定義は、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(被爆者援護法)に規定される被爆者健康手帳を交付された者をいう。
主な被爆者(被爆の実例)
- 広島市と長崎市の原爆投下攻撃による被爆者
- 広島市と長崎市で、それぞれ数十万人が被爆。
- 日本人被爆者の他に、原爆投下当時、広島市と長崎市にいた韓国人、朝鮮人、中国人や捕虜として収容されていた兵士(主に英軍、蘭軍兵)の被爆者が存在する。[3]
- 1945年8月6日の広島市、同年8月9日の長崎市、人類史上二回の原子爆弾投下であるが、そのどちらにも居合わせ、相次いで被爆した「二重被爆者」がいることが、2005年に国立広島原爆死没者追悼平和祈念館の調査で判明した。2009年3月24日、長崎市は、広島・長崎市の原子爆弾投下による二重被爆体験者である山口彊に対し、二重被爆を証明する内容を被爆者健康手帳に追加記載した[4]。
- 爆心地から離れた病院などで救護中に残留放射線を浴びた被爆者を「救護被爆者」と言う。また、原爆の被爆者救護などで放射線を浴びた3号被爆者の認定を巡り裁判が続いている。
- 南太平洋
- ビキニエニウェトク環礁におけるアメリカ軍が実施した核実験による二次被爆者(詳しくは『第五福竜丸』の項目を参照のこと)。
- アルジェリア
- アルジェリアの砂漠にてフランスが実施した大気圏核実験の影響による被爆者[5]。
- チベット
- チベット高原にて中国が実施した大気圏核実験の影響による被爆者[6]。
- 東トルキスタン
- 新疆ウイグル自治区にて中国が実施した核実験の影響による被爆者。
- カザフスタン
- セミパラチンスク周辺にて旧ソ連が実施した大気圏核実験の影響による被爆者[7]。
脚注
関連項目
- 日本への原子爆弾投下
- 原子爆弾
- 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
- 核戦争
- 原爆傷害調査委員会
- 佐々木禎子
- この子を残して
- その夜は忘れない
- 伊藤明彦(原子爆弾被爆証言取材の第一人者)
- 仲みどり(人類史上初めて医学的見地から原爆症と認定された患者)
- 被爆者差別
- 二十四時間の情事
- 永井隆 (医学博士)