英語の人称代名詞

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英語の人称代名詞は、英語において、話し手、受け手、第三者を指す人称代名詞である。

人称代名詞の変化

以下に人称代名詞の変化を示す。

人称 主格 対格 再帰
1 単数 - I /aɪ/ me /mi/ myself /maɪˈsɛlf/
複数 - we /wi/ us /ʌs/ ourselves /aʊɹˈsɛlvz/
2 単数 - you /ju/ you /ju/ yourself /jʊɹˈsɛlf/
複数 - you /ju/ you /ju/ yourselves /jʊɹˈsɛlvz/
3 単数 男性 he /hi/ him /hɪm/ himself /hɪmˈsɛlf/
女性 she /ʃi/ her /hɚ/ herself /hɚˈsɛlf/
中性 it /ɪt/ it /ɪt/ itself /ɪtˈsɛlf/
複数 - they /ðeɪ/ them /ðəm/ themselves /ðəmˈsɛlvz/

英語は名詞を失っているが、you, it 以外の代名詞は主格対格 (目的格) とを区別する。母語話者にとって無標なのは対格形であり、前置詞の後やコピュラの補語としても用いる。また現代口語では主語の中で用いることもあるが、これは規範文法では、今でも一般に誤りとされる。

  • It's me. (通常) ← It's I. (正式とされるが古風)
  • You and me are good friends. (口語) ← You and I are good friends. (正式)
  • He is better at sports than me. (口語) ← He is better at sports than I (am) (正式)

は、名詞と同様に単数と複数を区別する。名詞の数がある言語で二人称代名詞の数が失われているのは珍しい。

再帰代名詞は、一・二人称では所有限定詞 + self/selves であり、三人称では対格 + self/selves である。

一人称

I は常に大文字で書く。これは 1 文字の小文字で書くと見失いやすいからである。なお同じ理由で、間投詞の O も大文字で書く。しかし不定冠詞のaは小文字でも書かれる。

英語は通常、一人称複数の包括形(受け手を含む)と除外形(受け手を含まない)の区別をしないが、唯一、let's は必ず包括形であり、let us は一般に除外形、時々包括形である[1][2]

  • Let's go. (行こう。 - 包括形)
  • Let us go. (我々を行かせろ。 - 除外形)

君主は we を自分を指すのに使う。これを尊厳の複数と呼ぶ。この時、再帰形は ourself /aʊɹˈsɛlf/ である。

二人称

元々、英語の二人称単数代名詞は thou であった。以下に、現在でも時々用いられる古風な二人称代名詞を示す。

人称 主格 対格 再帰
2 単数 - thou /ðaʊ/ thee /ði/ thyself /ðaɪˈsɛlf/
複数 - ye /ji/ you /ju/ yourselves /jʊɹˈsɛlvz/

複数では、対格が主格にも使われるようになり、ye が消えた。またフランス語tu/vous と同様に、複数形 you を単数敬称としても用いた。英語ではこの敬称が普通になり、親称の thou が消えた。

しかし数の区別ができないのは不便なので、方言俗語では二人称複数代名詞が新たに作られた。主なものに、主にアメリカ西部の you guys /ˈjugaɪz/、アメリカ南部および黒人英語の y'all /yɔl/スコットランドアイルランドの youse /juz/ などがある。この内、アメリカでは you guys が最も普通と考えられており[3]ホワイトハウスで使われたこともある[4]。名詞の guy はガイ・フォークスに由来し、男性しか指さないが、you guys は女性だけの集団を指すことができ、文法化が進んでいる。他に you boys, you girls, you folks なども聞かれるが、これらは対象が boys, girls, folks でなければならない。

一般の you

一般的な事柄について語るとき、しばしば you を使う。これを一般の you (generic you) と呼ぶ。この you に受け手の意味はない。かつては不定代名詞の one が用いられたが、現在は古風で硬く、あまり使われない。

  • The older you get, the more you learn about life. (人は年を取るにつれ、人生について学ぶようになる。)
  • The older one gets, the more one learns about life. (〃)

マーク・ピーターセンは、この一般の you を受け手と取ることは母語話者にとって異様であると述べ、村上春樹が『キャッチャー・イン・ザ・ライ』で一般の you を「君」と訳していることを厳しく批判している[5]

三人称

英語はインド・ヨーロッパ語族でありながらを失っており、三人称単数代名詞の性は対象の人間性別に従う。中性の it は人間以外または性別の定かでない赤ん坊(特に新生児)を指す。ただし、動物国家自動車などに擬人的に he または she を使うことがある。なお、動物の雄、雌を表す接頭辞 he-, she- はこれに由来する(例えば he-goat, she-goat)。

不定代名詞の someone, everyone などを受けるのは従来 he であったが、これは男性形であるため、近年は they で受けることも増えている[6]

  • If anyone calls, tell them I'll be back at six. ← If anyone calls, tell him I'll be back at six.

参考文献

  1. ^ Wales, Katie (1996), Personal Pronouns in Present-Day English, Cambridge University Press, ISBN 978-0521471022 
  2. ^ Levinson, Stephen C. (1983), Pragmatics, Cambridge University Press, ISBN 978-0521294140 
  3. ^ Jochnowitz, George (1983). “Another View of You Guys”. American Speech 58 (1): 68-70. doi:10.2307/454759. 
  4. ^ Rios, Delia M. (2004年6月1日). “'You-guys': It riles Miss Manners and other purists, but for most it adds color to language landscape”. The Seattle Times. http://archives.seattletimes.nwsource.com/cgi-bin/texis.cgi/web/vortex/display?slug=youguys01&date=20040601 2007年3月30日閲覧。 
  5. ^ ピーターセン, マーク (2004), ニホン語、話せますか?, 東京: 新潮社, ISBN 978-4105445010 
  6. ^ “they”, Dictionary.com Unabridged (v 1.1), Random House, (2008), http://dictionary.reference.com/browse/they 2008年2月12日閲覧。