能面
能面(のうめん)は、能楽や一部の神楽で用いられる仮面である。伎楽面や舞楽の仮面などの影響を受けている。
概要
鬼神・老人・男・女・霊の5種類に大別される。女面、少年面、青年面は一部を除いて何れも白塗りの厚化粧、引眉で、お歯黒を付けており、これらは何れも、能が成立した時代の習慣を残したものである。
なお、『翁』の面は特徴的で、他の能面と異なり、
- 眼が全てくり抜いてある
- ぼうぼう眉(綿や毛が植えてある)
- 面が口の部分で上下で切り離してあり、後ろのところで結んである(顎が動く)
古式でおおらかな面である。
能面は木(桧が多い)を彫り、彩色して製作するが、この工程を「面を打つ」という。また、顔に付けることを「面を掛ける」という。この場合「面(おもて)」と読み、「能」がつくと「能面(のうめん)」と読む。近年は和紙製の張子面も登場している。
能楽に面を使用した記録に残る最も古い例は、弘安6年(1283)の春日神社での猿楽に三番、延命冠者、父尉などの面が使われたことが知られている。一般的に、能面が本格的に作られ始めたのは14世紀中頃に活躍した赤鶴吉成を初めとすると言われる[1]。当時の代表的な面打師とその系譜は江戸時代中期に喜多方能が著した『仮面譜』によって、十作・六作・三光坊などに分類された。
十作とは日光、弥勒、赤鶴など、室町時代に今日の能面の基本形を創作した人々とされるが、実在が不確かな人物も含まれている[1]。六作には千種、福来など、能楽発達後から安土桃山時代にかけて活躍した人々が挙げられている。三光坊は六作の中の一人だが、後の能面三家と呼ばれる越前出目家、近江井関家、大野出目家の始祖とされる人物である。
なお現在能(亡霊ではなく現在進行形として演じられる形式の能)の成年男性役には能面を用いないで演じられる。しかし役者が顔の表情を作って表現することは禁じられている。この能役者の素顔を「直面(ひためん)」と呼び、その名のとおり自分の素顔を能面と見立てて演ずる。 能のワキはすべて現在成年男性であるために直面で演じられている。
能面の例
- 女性の面
- 若い女性
- 小面(こおもて)、小姫(こひめ) 可憐な娘。
- 万眉(まんび)、孫次郎(まごじろう)、若女(わかおんな) 小面より若干年上。
- 増(ぞう)、増女(ぞうおんな)、節木増(ふしきぞう)、増髪(十寸神とも)(ますかみ) 清澄な神女。
- 中年女性
- 深井(ふかい) 理知的、都会風。
- 曲見(しゃくみ) 情感的、田舎風。
- 老女
- 姥(うば) 老女。シテが尉をつけるとき、ツレが使う事がおおい。
- 痩女(やせおんな)
- 老女(ろうじょ)
- 霊女(りょうのおんな)
- 桧垣女(ひがきおんな)
- 鬼女
- 若い女性
- 若い男の面
- 武人の面
- 平太(へいだ) 赤ら顔の壮年武将。
- 中将(ちゅうじょう) 公達。
- 老人の面
- 小尉(こじょう) 品が良く、神体を表すのにも用いられる。
- 邯鄲男(かんたんおとこ) 『邯鄲』に用いられ、神体を表すのにも用いられる。
- 皺尉(しわじょう)、石王尉(いしおうじょう)、舞尉(まいじょう) 真ノ序ノ舞を舞う後シテ。
- 悪尉(あくじょう) 強く恐そうな顔の老人。
- 『翁』の面
- 白式尉(はくしきじょう) シテ
- 黒式尉(こくしきじょう) 三番叟
- 他の男の面
脚注
関連項目
- 小山清茂(交響組曲「能面」を作曲している)
- 般若
- 井伊直弼(不遇の時代に能面づくりに没頭した)
- FACT (バンド) (メンバー全員が能面をして活動している)
- 聖母・聖美物語(番組エンディング5秒で日替わりで能面を紹介する「今日の能面」というコーナーがある)