肴
肴(さかな)とは、酒を飲む際に添えて共に楽しむ対象を言う。必ずしも食品とは限らない。酒肴(しゅこう)、酒にあてがうことからアテと呼ぶ事もある。特に肴に向いていて手軽に食べられる食品・料理のことは、つまみもの(おつまみ)という。
語源
「酒菜」から。もともと副食を「な」といい、「菜」「魚」「肴」の字をあてていた。酒のための「な(おかず)」という意味である。したがって、「さかな」という音からは魚介類が想像されるかもしれないが、酒席で食される食品であれば、肴となり得る。室町時代頃までは、こうした魚肉に限らない用法が一般的だった[1]。
なお、魚類のことを「さかな」と呼ぶのは、肴から転じた言葉である。食べ物として酒と相性が良く肴の代表格であったことから、意味が変化した。古くは「うを」(後に「うお」)と呼んでいたが、江戸時代頃から「さかな」と呼ぶようになった[1]。
食品の肴
酒と共に楽しまれる食品である。何を楽しむのかは人それぞれであり、ある特定の食品を肴にしなければならないといった規則は存在しない。しかし、日本におけるビールに枝豆などのように、ある一定の食品が好まれるといったことも起きている。ワインにチーズ、テキーラに食塩など、有名な組み合わせが存在する。
いわゆる「おつまみ」として、肴向きに考案された食品・料理も生まれている。洋食のコース料理では、オードブルが、肴に当たるものとされる。スペインには、ピンチョスやタパスといった酒とともに楽しむ料理群がある。
肴は単体で出されることは極めて少なく、必ずと言って良いほど酒と一緒に出されるため脇役的な印象を受けるが、カラスミやコノワタ、キャビアやフォアグラと言った高額な肴も存在する。上に挙げた食材は、酒肴以外にも調理して食すことができる(例:カラスミのスパゲティ等)。
医学的には、食品を酒とともに摂取することは、飲酒の悪影響を軽減するために効果がある。空腹の状態での飲酒は急激に酔いが進むため健康によくないが、良質のたんぱく質を同時に摂取することで、アルコールの吸収が緩やかになるとされる[2]。飲酒のペースを緩やかにすることも利点である。アサヒビール株式会社によれば、枝豆や豆腐にはアルコールの分解を助ける成分が含まれているという。他方で、フライなどの油の多い食品は、医学的には肴としてあまり好ましくないという[3]。
食品以外の肴
その酒席に参加している者が楽める事柄であれば、何でも肴となり得る。例えば、盛り上がることのできる話題、盛り上がることのできる芸事、盛り上がることのできる遊びなど、どんな物でも構わない。つまり、酒席で提供される娯楽となり得るものが、食品以外の肴である。
酒の余興として演じられる出しものを指す言葉として、肴謡、肴浄瑠璃、肴舞といった言葉がある。
脚注
- ^ a b 草川昇『語源辞典 名詞編』(東京堂出版、2003年)より「さかな」の項。
- ^ 大阪精神保健福祉協議会(編)『アルコール健康読本』(大阪府、2007年)、p.22
- ^ “危険! 問題飲酒 こんなときにも気をつけよう 二日酔い”. 人とお酒のイイ関係. アサヒビール株式会社. 2010年5月9日閲覧。
参考資料
関連資料
- 成瀬宇平『酒とつまみの科学―天ぷら・寿司には白ワイン? チーズやキャビアに日本酒が合う?』(ソフトバンククリエイティブ、サイエンス・アイ新書、2009年)
関連項目
- ワインと食品のマッチング
- おかず
- 茶
- お茶と肴は相性が良いものが多い。