緒方亜香里

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獲得メダル
日本の旗 日本
柔道
世界柔道選手権
2010 東京 78kg級
2011 パリ 78kg級
ワールドマスターズ
2011 バクー 78kg級
2012 アルマトイ 78kg級
グランドスラム
2011 東京 78kg級
2009 東京 78kg級
2010 パリ 78kg級
2011 モスクワ 78kg級
2010 リオ 78kg級
2012 パリ 78kg級
2010 東京 78kg級
アジア大会
2010 広州 78kg級

緒方 亜香里(おがた あかり、1990年9月24日 - )は、熊本県宇城市出身の日本柔道家。階級は78kg級。

人物

阿蘇高校を卒業して、現在は筑波大学に在学[1]。身長は171cm、血液型はB型。兄が1人いる。

組み手は左組み、段位は2段、得意技は内股、寝技(特に三角絞めないしは三角絞めからの抑込技)。

好きな言葉は、「努力は人を裏切らない」「阿蘇魂」[2]

経歴

2008年まで

小学生の時は空手を習っており、小学校4年生の時には全国優勝を果たした[2]。しかし中学1年の時に兄に借りた柔道マンガの帯をギュッとね!や、柔道部物語に影響されたこともあり、空手をやめて柔道を始めた[2] [3]。中学3年の時には全国中学校柔道大会に出場して63kg級で3位に入った。

阿蘇高校2年の2007年8月にインターハイ70キロ級に出場するも、3回戦で小杉高校田知本遥袈裟固で一本負けした。2008年3月には全国高等学校柔道選手権大会の団体戦で、チームメイトの山本小百合とともに大活躍して、阿蘇高校の全国大会制覇に大きく貢献した。

5月にはフランスジュニア国際大会に出場するが3位に終わった。6月は都道府県対抗全日本女子柔道大会に熊本代表として出場して、この大会では際立った活躍は見られなかったものの、団体優勝を果たした。

8月のインターハイ個人戦78kg級決勝では、鹿児島南高校濱田尚里を開始早々の内股で破るなど、6戦全て一本勝ちで優勝した。さらに、団体戦でも6戦全て一本勝ちで阿蘇の団体戦優勝に大きく貢献して、個人戦団体戦の2冠を圧倒的な強さで達成した[4]。9月の全日本ジュニア体重別選手権大会決勝は、八幡工業高校佐藤瑠香が準決勝で怪我をして棄権したので不戦勝となり優勝した。この時には、「やっぱり試合をやって優勝したかった」と言い、さらには、「ロンドン五輪で金メダルを取ります」とこれからの目標について述べた[5]

10月の国体少年女子の部に出場し、熊本チームの一員として優勝に大いに貢献した。11月の講道館杯では決勝まで進出するも、ミキハウス穴井さやかに有効を取られて2位となる。その後嘉納杯にも出場するが、2回戦でカナダのエミー・コットン後袈裟固で一本負けした。

2009年

2009年2月にベルギー国際に出場し、トーナメント2回戦で佐藤瑠香に判定負けするものの、3位となる。同年4月、筑波大学に入学後選抜体重別に初出場するが、初戦で自衛隊体育学校池田ひとみに有効を取られて敗れた。続いて全日本柔道選手権に初出場するが、2回戦で綜合警備保障塚田真希横四方固で一本負けした。

5月にフランスジュニア国際に出場し、決勝で佐藤瑠香に技ありを取られて2位となる。6月に学生優勝大会に出場し、準々決勝で東海大学田知本愛に有効を取られて負け、チームも敗れた。7月の韓国ジュニア国際で優勝した。

9月の全日本ジュニア選手権決勝では、それまで不戦勝を除いては3敗していた佐藤瑠香に合技で一本勝ちするなどオール一本勝ちで2連覇を果たし、世界ジュニアの代表となった[6]。10月の世界ジュニアでは、準々決勝でブラジルのマイラ・アギアル崩上四方固、準決勝でドイツのルイーゼ・マルザンを内股、決勝で前回優勝したアメリカのケイラ・ハリソンに合技で一本勝ちするなど、オール一本勝ちで優勝した。なお、この大会では高校、大学でのチームメイトである山本小百合も一緒に優勝した[7]

11月の講道館杯では、準決勝で穴井さやかに崩上四方固で一本勝ち、決勝でも池田ひとみに指導2で優勢勝ちして優勝した。翌週、新設された学生体重別団体に出場し、オール一本勝ちで筑波大学の優勝に大きく貢献した。

12月のグランドスラム・東京では、初戦こそ技ありでの優勢勝ちだったものの、2回戦3回戦と一本勝ちし、続く準決勝では世界選手権3位であるドイツのハイデ・ウォラートに横四方固で一本勝ち、決勝では穴井さやかに有効2つ取られながらも横四方固で逆転の一本勝ちして優勝。「来年は世界選手権での優勝が目標」とコメントした[8]。また、今大会を放映したテレビ東京からは「柔道界のジャンヌダルク」と形容された(今大会では緒方の試合はテレビ放映されなかったが、テレビドガッチには試合の模様が配信された。また、そのような形容は翌年にもなされた)[9][10]

2010年

2010年1月、世界ランキング上位選手が集まるワールドマスターズ2010に出場するが、初戦で元世界チャンピオンであるフランスのセリーヌ・ルブラン小外掛で技ありを取られ、敗れた。2月のグランドスラム・パリでは、準決勝でフランスのリュシ・ルエットが下半身を攻撃してきたことにより、下半身への攻撃は一回で反則負けとなる新ルールが適用されて反則勝ちとなる。決勝では、準決勝でルブランに開始早々大内刈で一本勝ちした穴井さやかを終始圧倒し、残り20秒ほどのところで小外掛で一本勝ちし、オール一本勝ちでこの大会を制した。

その後、初優勝が期待された4月の体重別では、初戦で池田ひとみに大外落で一本勝ちしたものの、準決勝でコマツの佐藤瑠香に攻め込まれて指導3を取られて敗れた。しかしここ最近の国内外での活躍が評価され、世界選手権代表に選ばれた。続いて、全日本柔道選手権に出場し、2回戦は2週間前に敗れた佐藤に旗判定 (2-1) で辛うじて勝利するが、3回戦でこの大会9連覇を狙う塚田真希と昨年に続く対戦となり、終盤払腰で一本負けとなる。

5月にグランドスラム・リオデジャネイロに出場して、昨年の世界ジュニアに引き続き準々決勝でマルザンを内股一本、準決勝で地元のアギアールを指導2と有効ポイントで破る。決勝では佐藤瑠香に先に指導2を取られその後攻勢に出て指導2を取り返すも、その直後に合技で一本負けを喫して2位となり、グランドスラム大会3連勝はならなかった。6月に学生優勝大会に出場し、準々決勝で淑徳大学川戸郁香に大外刈で一本勝ちするものの、チームは敗れた。

9月に東京で開催された世界選手権では、初戦と2回戦を一本勝ちするも準々決勝でウクライナのマリナ・プライシェパに合技で一本負けする。敗者復活戦でフランスのルブランにリードされながら終盤に横三角からの絞め技で一本を奪い逆転勝ちし、3位決定戦でドイツのウォラートに先に有効2つを奪われながら内股で技ありを取り、続いて豪快な内股一本を決めて3位となった[11]。当初出場予定のなかった無差別にも塚田の代わりとして出場することになったが、3回戦で78kg超級の実力者であるロシアのテア・ドングザシビリに横四方固で一本負けを喫した[12]

10月にグランプリ・ロッテルダムに出場し、最初の2試合は一本と技ありで突破。準決勝はベルギーのキャサリン・ジャックに先に有効ポイントを取られるが合技で逆転勝ちし、決勝ではフランスのアンドレイ・チュメオと延長戦までもつれ込み、足車で一本勝ちして優勝した[13]。続いて学生団体体重別に出場するが、準々決勝の帝京大学戦では世界ジュニア78kg超級3位の山本恭奈に合技で一本勝ちするものの、チームは敗れた。

11月にアジア大会に出場し決勝まで順調に勝ち上がる。決勝で韓国の鄭敬美に後半袖釣込腰で一本負けを喫して2位となる[14]

12月にグランドスラム・東京に出場し、準々決勝で穴井さやかに一本勝ちするも、準決勝では2ヶ月前のグランプリ・ロッテルダムで破っているキャサリン・ジャックにすくい投げで一本負けを喫して3位となる[15]

2011年

2011年1月、ワールドマスターズに出場し、初戦で2010年の世界選手権2位のアギアルを三角絞め、準々決勝で2009年の世界チャンピオンであるオランダのマリンド・フェルケルクに大内刈でそれぞれ一本勝ちするが、準決勝で北京オリンピックのチャンピオンである中国の楊秀麗に指導2を取られて敗れ、3位となる。

2月にグランドスラム・パリに出場し、初戦は一本勝ちするが、2回戦でキューバのヤレニス・カスティージョに小外掛で技ありを取られて敗れ、この階級の国際大会では2010年1月のワールドマスターズ以来のメダル無しとなる。

4月に体重別に出場し、初戦は勝ったものの準決勝で自衛隊体育学校池田ひとみに指導2を取られて敗れた。しかしパリ世界選手権代表に選出された。

その2週間後には全日本柔道選手権に出場して、初戦でこの大会の優勝候補である78kg超級の世界ランキング1位である田知本愛と対戦して先に指導1を取られるが、後半大内刈で技有りを奪い、その後指導2を取られるも勝利した。しかし、続く上野巴恵との対戦では逆に大内刈で一本負けとなった。

5月にグランドスラム・モスクワに出場し、準々決勝でフェルケルクを大外刈の有効で破る。準決勝でアギアルを指導2で下し、決勝でハンガリーのアビゲール・ヨーから腕挫腕固で一本勝ちして、2010年10月のグランプリ・ロッテルダム以来久々の国際大会での優勝を遂げた[16]

6月に学生優勝大会に出場し、準々決勝で東海大学の烏帽子美久大外返で一本勝ちするものの、チームは敗れた[17]

8月にパリで開催された世界選手権では、1回戦でキューバのカリエマ・アントマーチから体落で技ありを取るとさらに終盤には三角絞で一本勝ち、2回戦ではハイチのゲナ・ナジェダに開始早々内股で一本勝ち。3回戦ではカナダのコットンとGSまでもつれこむが小外掛で有効を取って勝つと、準々決勝ではオランダのフェルケルクを盛んに攻め込んで指導4で反則勝ちを収めて、準決勝ではブラジルのアギアルを大内刈で技ありから横四方固の合技一本で破る。決勝ではフランスのチュメオに先に指導1を取られた後に出足払で一本負けで2位となる[18]

9月にパリで開催された日仏対抗親善柔道大会に出場し、チュメオに大内刈で技ありと指導3を取られて総合負けとなる[19]

10月に学生体重別団体に出場し、2回戦、3回戦ともに一本勝ちしたが、チームは環太平洋大学に敗れた。

11月の講道館杯決勝ではライバルの佐藤相手に組み勝って指導1を取り優勢に試合を進めていたものの、GS終盤に大内返で有効を取られて2位となる[20]

12月のグランドスラム・東京では初戦の池田と準々決勝のフェルケルクを大外刈の技有で破ると、続く準決勝のヴォラート戦も隅落の技有りで破る。決勝では2年ぶりの対戦となったハリソン相手に先に指導1を取られるも有効を取り返すと、最後には横四方固で一本勝ちして今大会2年ぶり2度目の優勝を飾った[21]

2012年

2012年1月に ワールドマスターズに出場し、準々決勝では2010年のアジア大会決勝で敗れた鄭に横四方固で一本勝ちする。準決勝で昨年の今大会で敗れた楊に先に大内刈で有効を取るものの、その後内股で逆転負けし、前回に続いて3位となる[22]

2月にグランドスラム・パリに出場し、3回戦では昨年の今大会で敗れたカスティージョに内股で一本勝ちするも、準決勝でハリソンに有効3つを取られた末に大腰で技ありを取られ3位となる[23]

5月の選抜体重別には右膝のケガを抱えながらも出場し、準決勝では穴井を残り2秒の内股で破ると、決勝では池田を終盤に大内刈の技ありで破って今大会初優勝を飾り、ロンドンオリンピック代表に選出された[24][25][26]

世界ランキング

IJF世界ランキングは1610ポイント獲得で、2位(2012年5月7日現在)。

戦績

IJFグランプリシリーズにおける獲得賞金一覧

大会 開催日 順位 獲得賞金
グランドスラム・東京2009 2009年12月11日 優勝 5,000ドル
グランドスラム・パリ2010 2010年2月6日 優勝 4,000ドル
グランドスラム・リオデジャネイロ2010 2010年5月22日 2位 3,000ドル
2010年世界柔道選手権大会 2010年9月9日 3位 2,000ドル
グランプリ・ロッテルダム 2010年10月17日 優勝 3,000ドル
グランドスラム・東京2010 2009年12月13日 3位 1,500ドル
ワールドマスターズ2011 2011年1月16日 3位 2,000ドル
グランドスラム・モスクワ2011 2011年5月29日 優勝 5,000ドル
グランドスラム・東京2011 2011年12月11日 優勝 5,000ドル
ワールドマスターズ2012 2011年1月15日 3位 2,000ドル
グランドスラム・パリ2012 2012年2月5日 3位 1,500ドル
総計
11大会 34,000ドル
  • 日本選手の場合は、獲得賞金の半分は全柔連の取り分となる[27]。なお、2010年のグランドスラム・パリの場合は、獲得賞金の20%がコーチの取り分となったので、優勝賞金は5,000ドルではなく4,000ドルとなった[28]

有力選手との対戦成績

(2012年2月現在)

対戦成績
国籍 選手名 内容
日本の旗 佐藤瑠香 3勝6敗(うち1不戦勝)
フランスの旗 オドレー・チュメオ 4勝2敗(6戦全て1本で勝敗が決している)
アメリカ合衆国の旗 ケイラ・ハリソン 3勝1敗(勝った試合は全て1本勝ち)
ブラジルの旗 マイラ・アギアル 5戦全勝(うち3戦1本勝ち)
オランダの旗 マリンド・フェルケルク 4戦全勝(うち2戦1本勝ち)
ドイツの旗 ハイデ・ウォラート 3戦全勝(うち2戦1本勝ち)
中華人民共和国の旗 楊秀麗 2戦2敗

柔道スタイル

左組み手から内股、大内刈、小外刈などをよく繰り出す。相手の奥襟を強引に引き付ける力強い組み手を見せるが、前半はあまり技が出ず指導を取られるケースも少なからずあるものの、最後まで逃げの姿勢は見せない。立ち技は比較的切れる方だが、より得意なのは寝技である。 特に三角絞めや、その体勢からの抑込技への移行が際立っている。

また、苦しい体勢からでも自分有利の組み手に持ち込めるような練習に最近は取り組んでいて、相手をよく見て動きを止めてから組み手をつくっていければさらに強くなれると語っている[29]

脚注

  1. ^ 筑波大学柔道部 部員紹介
  2. ^ a b c 「解体新書 緒方亜香里」近代柔道 ベースボールマガジン社、2010年1月号、98-101頁
  3. ^ スポ-ツの顔 78キロ級の新女王 緒方亜香里(体育1年) つくばスポーツOnline 2010年2月12日
  4. ^ 「第57回全国高等学校柔道大会」近代柔道 ベースボールマガジン社、2008年9月号、36-57頁
  5. ^ 柔道サイト eJudo: 第11回全日本女子ジュニア体重別選手権・結果詳細 柔道サイト eJudo 2008年9月14日
  6. ^ 柔道サイト eJudo: 【全日本ジュニア体重別選手権レポート】 柔道サイト eJudo 2009年9月30日
  7. ^ 2009年世界ジュニア柔道選手権大会日本代表メダルラッシュ金8個 柔道チャンネル 2009年10月26日
  8. ^ 【柔道】19歳・緒方「強くなった」 サンケイスポーツ 2009年12月11日
  9. ^ 柔道グランドスラム東京2009 テレビ東京
  10. ^ 柔道グランドスラム東京2010 テレビ東京
  11. ^ 緒方、悔しい銅「来年は金」/世界柔道 サンケイスポーツ 2010年9月9日
  12. ^ 鈴木らを起用=世界柔道・無差別級代表 サンケイスポーツ 2010年9月11日
  13. ^ 立山、吉田、緒方が優勝/柔道 日刊スポーツ 2010年10月19日
  14. ^ 杉本が金、穴井と緒方は銀=アジア大会・柔道 時事通信 2010年11月13日
  15. ^ 緒方亜香里「自分は未熟者」 日刊スポーツ 2010年12月13日
  16. ^ 【柔道】グランドスラムモスクワ大会 女子78キロ級、緒方制す 熊本日日新聞 2011年5月31日
  17. ^ 筑波大の緒方、大舞台へ弾み=全日本学生柔道 時事通信 2011年6月25日
  18. ^ 進化の“怪物”あと一歩…緒方、悔しさにじむ銀 スポーツニッポン 2011年8月27日
  19. ^ 復興支援の柔道日仏対抗引き分け パリで親善大会 47NEWS 2011年9月24日
  20. ^ 女子78キロで19歳・佐藤が初V…柔道 スポーツ報知 2011年11月12日
  21. ^ 緒方が世界女王破り2年ぶりV 日刊スポーツ2011年12月11日
  22. ^ 西山将が初優勝=上川は決勝で敗れる-柔道マスターズ大会 時事通信 2012年1月15日
  23. ^ 緒方、不安残す敗戦 グランドスラム・パリ大会 MSN産経ニュース 2012年2月6日
  24. ^ けが乗り越えた緒方=全日本選抜体重別柔道 時事通信 2012年5月12日
  25. ^ 緒方、残り56秒で技あり 体重別選手権 MSN産経ニュース 2012年5月12日
  26. ^ 女子78キロ緒方「ロンドンは私」/柔道 日刊スポーツ 2012年5月12日
  27. ^ 競技者規定 - 財団法人 全日本柔道連盟
  28. ^ Coaches will receive prize money
  29. ^ 緒方、優勝にも「内容よくない」 時事通信 2011年12月11日

外部リンク