福島原子力企業協議会

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福島原子力企業協議会(ふくしまげんしりょくきぎょうきょうぎかい)は、東京電力福島第一原子力発電所福島第二原子力発電所の定期検査、保修工事、委託業務に関わる元請企業とその協力会社を会員とする任意団体である。

沿革[編集]

元々、福島第一原子力発電所構内には四次下請けまで約250社の事務所が散在し、1982年までの実績でピーク時に約5000名の作業員が就労していた。しかし、これらの事務所は発電所の建設時に建てられたものであり、老朽化が進行していた。また、当時は1基の定期検査でも2000名の作業員を要すると見積もられたため、事務所を集中化することとなった[1]

このため、東京電力は福島第一原子力発電所構内西側に「請負企業センター」として定期検査や保修工事に従事する三次、四次下請け企業を収容する建物を建設し、事務所の集約を図った。請負企業センターは1982年4月に着工され、同年11月に完成した。この施設を管理、運営するため、東京電力は東双不動産管理を設立した。竣工時は下記のようになっていた[1]

  • 敷地面積:7万平方メートル[2]
  • 建物:各棟3階建て。事務所専用棟8棟、共用施設1棟(研修室、軽食堂等)。他に体育用グラウンド[2]
  • 建物延べ面積:1万4200平方メートル
  • 収容人員:4500名
  • 総工費:20億円

そして、この請負企業センターに入った下請企業側は同年11月、福島原子力工事協議会を組織し、技能訓練の向上や労働環境の改善を目標とした。その後、協議会は福島第二原子力発電所にも拠点を置いた。また、名称は1994年6月に福島原子力企業協議会に改められた[1]

それまで技能向上訓練や放射線管理教育は各社、各職種別々に実施していた。背景としては、原子力発電所の検査、保修では作業が職種ごとに進行する点もあった。この協会が設立されたことで、設備、組織両面から各社の共同研修が可能となり、情報交換や協業化も進める一助とする予定であった[1]

会員[編集]

会員は上記のように定期検査、保修工事に関わる元請企業と協力会社の全てだが、この他、特別会員が設けられ、元請企業及びこれに準ずる企業として理事会の承認を得た企業として、協力企業数十社と東京電力で構成されている[3]

特別会員一覧[4]

教育内容[編集]

福島県エネルギー政策検討会に提出された資料では下記のようになっている[5]

なお、東京電力はこの他、自社社員及び関係協力会社に対する訓練施設として、「福島原子力人材開発センター技能訓練棟」で研修、訓練活動を実施している。福島原子力人材開発センターは福島第一原子力発電所構内に設けられ、模擬原子炉建屋として同発電所3号機のフルスケールモデルや、共用訓練棟、制御棒駆動機構補修室、失敗に学ぶ教室などの建屋を有する[7]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 「東電、福島第1原発に請負企業センター完成へ 下請け250社収容、管理会社設立」『日経産業新聞』1982年10月5日3面
  2. ^ a b 「東京電力、福島第1原発内に請負センター完成 参加業者、協議会を設立」『日経産業新聞』1982年11月15日3面
  3. ^ 参考3-1 福島原子力企業協議会 『原子力発電所の安全確保について』東京電力株式会社(福島県エネルギー政策検討会幹事会説明用資料)スライド18ページ
  4. ^ 組織 福島原子力企業協会HP
  5. ^ 3(1)協力企業に対する研修体制・教育内容『原子力発電所の安全確保について』東京電力株式会社(福島県エネルギー政策検討会幹事会説明用資料)スライド17ページ
  6. ^ なお、鈴木智彦によれば、他の原子力発電所で働いた経験があっても福島第一、福島第二で働く際にはこの教育を受講しなければならないという。
    鈴木智彦「第四章 ついに潜入! 1Fという修羅場」『ヤクザと原発』P153
  7. ^ 参考3-2 福島原子力人材開発センター技能訓練棟 『原子力発電所の安全確保について』東京電力株式会社(福島県エネルギー政策検討会幹事会説明用資料)スライド22ページ

外部リンク[編集]