物理演算エンジン

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物理演算エンジンによる物理シミュレーション

坂の上へ落ちる物体の、物理演算によるシミュレーション4例。

  1. 物理シミュレーションなし
  2. 重力のみ。衝突判定なし
  3. 重力と衝突判定のみ。回転演算なし。
  4. 重力、衝突判定と回転演算。

物理演算エンジン(ぶつりえんざんエンジン、Physics engine)とは、質量速度摩擦といった、古典力学的な法則をシミュレーションするコンピュータソフトウェアである。多くの場合、ミドルウェアライブラリを指す。 略して物理演算物理エンジンPhysicsとも言う。

概要

物理演算の基本となるのは衝突判定ダイナミックシミュレーション(動的シミュレーション。静止した一点の力のかかり方のみを見るのではなく、現実と同様に動く物体の動き全体をシミュレーションするもの)である。その他に、流体シミュレーション・モーションコントロール(スクリプト言語によって物体の動作をコントロールする機能)・COLLADAなどの外部形式のオブジェクトやシーンを読み込める機能などがついたものも多い。

長年、学術的シミュレーションや3DCGアニメ製作の現場などの専門分野でのみ使われていたが、最近では高度な物理演算エンジンを搭載したゲーム機グラフィックカードの登場により、物理演算を利用した「リトルビッグプラネット」等のゲームソフトが人気を博すなど一般にもなじみが深いものとなっている。

また、物理演算を搭載した3DCGソフトウェアも、かつてはプロユーザーにしか手が出せなかったが、現在ではフリーのBlenderを初めとして一般人にも手が届く物がいくつも存在しているため、ゲームや映像を介して物理演算を実感するだけでなく自身で物理演算を利用した3DCGアニメーションを製作することも容易となっている。実際、BlenderやPhun等の物理演算を利用した動画が動画共有サイトに多数投稿されている。

応用

物理演算エンジンの主要な応用例は、科学技術計算とエンターテイメント分野である。

科学技術計算

最初の汎用計算機、ENIACは非常に単純な物理計算、すなわち弾道計算のために使われた。そしてコンピュータの発達とともに航空機の設計などへ応用されていった。

1980年代ごろから、スーパーコンピュータ天気予報のために、大気海流といった流体のシミュレーションのために使われるようになった。これらの分野は数値流体力学として知られている。

エンターテイメント

ゲームのようなエンターテイメント分野では、物理シミュレーションの正確さよりも速度、リアルタイム性が重要である場合が多い。そのため、正確さを犠牲にしても高速性を得られるような手法が取られる。PhysXのように、ハード/ソフトウェア両面から高速性を実現するアーキテクチャを採用するものもある。

物理演算エンジンの例

関連項目