物理モデル音源
物理モデル音源(ぶつりモデルおんげん)は、デジタル信号処理(DSP)を利用して、生楽器の発音構造や共鳴構造をコンピュータ上でいかに振動・共振するかをリアルタイムに演算し、音色を合成し仮想的にシミュレートして音を出す方式。生楽器だけでなく、実在しない楽器も作成することも可能である。この物理モデル音源は物理音源やDSP音源とも呼ばれる。
[編集] 特徴
持続系の管楽器や弦楽器など音色変化のある楽器のシミュレートを得意とするが、減衰系のピアノやドラムの音はPCM音源に比べて得意でない。
管楽器を鍵盤のついたシンセサイザーで、リアルさを追求しつつ演奏する場合は、コントロールする項目が多くなる。 管楽器のように息でリードを振動させて音を出すような楽器では、鍵盤を押すだけではリアルな音が出せず、ブレス・コントローラなどを利用して初めてリアルな音が出せる。 そのため、PCM音源のような手軽さはなく弾きこなすには慣れが必要だが、ブレスコントローラや、ウインドシンセサイザーの様な機器を使用することにより、鳴り始めから鳴り終わるまでの擦れるような細かな息遣いまで再現が出来るのは物理モデルの最大の特徴であり利点である。 プロ仕様のシンセサイザーや、エレクトーンに搭載されることが多く、1台で和音を演奏するような場合は安価に入手できない.
[編集] 歴史
世界で初めて1993年にヤマハのシンセサイザーVL1に搭載された。ヤマハはVL1に採用したこの音源方式をVirtual Acoustic音源の略としてVA音源と名付けた。その後、1994年にポリフォニック版で撥弦楽器のシミュレートに特化したVP1、そしてVL1の廉価版VL7、モジュール版VL1-mなどを発表した。
VL1発売当初はPCM音源がFM音源を駆逐していくように、いずれは物理モデル音源がPCM音源を駆逐していくかと思われた[誰?]が、発売から10年以上経過した現在でも、上記の理由であまり普及せず、波形の大容量化による音質の向上や音色のバリエーションの増加もあってPCM音源が主流のままである。
[編集] 現在までに搭載された製品
ヤマハではヤマハ・VL/VPシリーズ、ヤマハ・EXシリーズのEX5・EX5Rシンセサイザーに搭載。 また、シンセサイザーと、モジュール音源向けに発売された拡張ボードPLG150-VL・PLG100-VLがある。 近年では、1998年以降発売されたエレクトーンの上位機種や、現行機のSTAGEAの上位機種に搭載されている。
ヤマハ以外の製品では、コルグ社のZ1やProphecyなどのMOSS音源も物理モデル音源であり、米国スタンフォード大学とヤマハが所有する電子楽器の特許技術のSONDIUS-XGを応用した音源を搭載している。コルグ・Z1やコルグ・Prophecyともに2005年現在は生産完了しており、TRITONシリーズのオプションの拡張ボードと、OASYSやKRONOSの内蔵音源として搭載されている。
アナログシンセサイザーをデジタルで再現したNord Leadや、ローランドのJP-8000などのバーチャルアナログ音源は、この物理モデル音源を生楽器でなく、アナログシンセサイザーに特化したものである。
フランスのIRCAMでは物理モデル音源ソフトウェアModalysが開発されており、Max/MSPやOpenMusicと組み合わせて使用できる。この技術を応用して管楽器の音色を物理モデルで再現したBRASSというソフトウェア音源も発売されている。