煙霧

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ビル群をかすませている煙霧、シンガポール
海面に近い低空に広がる海辺の煙霧。海塩粒子によるもの
濃い煙霧が覆う高速道路沿いのビル街

煙霧(えんむ、: haze、ヘイズ)とは、目に見えないほど小さい乾いた固体の微粒子が空気中に浮いていて(エアロゾル)、視程が妨げられている現象のこと。

定義

によって地面から巻き上げられたぼこり、煤煙火山から噴出して降下している火山灰海塩粒子などが、風に流されて浮遊している状態を指す。火山灰と海塩粒子以外はいわゆる風塵と呼ばれる現象である。風塵は微粒子が舞い上がる現象、煙霧はそれによって視程が悪化する現象である。

日本気象庁は、「乾いた微粒子によって視界(視程)が10km未満となった場合」を煙霧と定義している。一般的には、靄(もや)や霞(かすみ)とも呼ばれ、文学等の表現としてはこちらも多用される。気象学上は靄に別の定義があるため、気象予報等では靄と煙霧を明確に区別する。航空や惑星科学の分野など、慣習的に煙霧・スモッグ・靄・霧などをすべてひっくるめてヘイズ(haze)と呼ぶ場合もある。

黄砂が飛来した場合は、黄砂による煙霧が発生する。気象庁の観測上は、煙霧と黄砂が別になっており、稀に薄い黄砂の場合は黄砂のみが観測されて煙霧が観測されない場合がある。

気象現象の記録としては複数の現象が記録されるが、「天気」の記録としては1つに絞る必要がある(たとえば、晴れと雨が同時に存在する天気雨の場合でも、その時の「天気」を報告する際は1つの現象に絞り込む必要がある。この場合は「雨」となる。)。煙霧、ちり煙霧、黄砂、煙、降灰のいずれかまたは複数が発生しており、かつ視程が1km未満となっている場合または、雲量が10の場合(晴れているのか雲が出ているのか分からない場合)、その時の「天気」を「煙霧」とすると規定されている。

風が止んだ後もエアロゾル粒子が空気中に浮いていて、視程が妨げられている現象は「塵煙霧(ちりえんむ)」と呼ばれる。気象現象としては、塵煙霧は視程が2km未満と定義されている。

煙霧と霧の区別

類似の現象として、液体の微粒子(おもに微小な水滴からなる。)が浮遊している「」や「」がある。目視だけでは、これらと煙霧を区別できない場合があり、以下のように湿度を基準に区別する。

気象庁は、煙霧または霧・靄と見られる現象が発生しているとき、湿度が75%以上ならば霧や靄、75%未満ならば煙霧と定義している。

煙霧の発生後に気温の低下によって湿度が高くなったりすると、煙霧と同時に霧や靄が発生することがある(個体の微粒子と液体の微粒子が同時に浮遊している状態)。よって、たとえ煙霧が発生していたとしても、霧が混じっている時は霧、靄が混じっているときは靄として、それぞれ扱われる。そのため煙霧として扱われる場合には湿度が低い場合が多い。

煙霧の原因と影響

煙霧が起きやすいのは、湿度が低く大気や地面が乾燥した状態が続いた後である。この状態で風が吹くと、エアロゾル粒子が舞い上がって浮遊し始める。

煙霧には非常に顕著な地域性がある。一般的に、砂漠や乾燥地帯では激しい煙霧(砂嵐)が発生する一方、森林や湿潤な草原では煙霧はほとんど発生しない。ただし、乾期を中心に大規模な森林火災が発生することがあり、この煙が風に流されて運ばれ煙霧となることがある。東南アジアでは熱帯雨林焼畑に伴う煙が流れ込んで頻繁に煙霧が発生しており、国際的な社会問題となっている。

季節により植生や地表の乾燥度が変わることで、煙霧の量も大きく変化する。

上や海岸では、しぶきの蒸発によってできる海塩粒子、砂漠や乾燥地域では砂嵐工業地帯都市では排煙などの大気汚染によって、それぞれ煙霧がおきやすい。

大気汚染による煙霧はスモッグとも呼ばれる。ただし、もともとスモッグは大気汚染により発生した、煙霧を含む濃い霧を指す言葉であり、現在の用法とは若干異なる。

湿度が低く霧や靄に分類されない霧でも、液体の微粒子が多少は含まれており、視程の低下に寄与している。そのため、例えば黄砂のかすみは、黄砂だけではなく、靄によるかすみも含まれている。

出典

関連項目