尾上縫

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おのうえ ぬい

尾上 縫
生誕 1930年(93 - 94歳)
職業 実業家霊媒師詐欺師
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尾上 縫(おのうえ ぬい、1930年 - )は、大阪府大阪市料亭「恵川」の元経営者である。

バブル絶頂期1980年代末、「北浜の天才相場師」と呼ばれ[1]、一料亭の女将でありながら数千億円を投機的に運用していた。しかしながら、景気の後退とともに資金繰りが悪化、金融機関を巻き込む巨額詐欺事件を引き起こした。

人物

自身が女将を務める料亭の客らに対して、占い神のお告げによって株式相場の上昇や競馬の勝ち馬などを見事に言い当てるとして評判となり、そのために料亭は繁盛した。バブル景気前夜の頃までには、それらの予想も神懸かり的なものとなり、多くの証券マン銀行マンらが尾上に群がるようになった[1]

巨額詐欺事件

自らも銀行から多額の融資を受けて株式の売買を行うようになった尾上は、バブル絶頂期の1988年昭和63年)には、2270億円を金融機関から借り入れ、400億円近い定期預金を持っていた。また、株取引では48億円の利益を得、割引金融債ワリコーを288億円購入し、55億円の金利を受け取っていた。

しかし、バブル景気に陰りが見えるとたちまち運用が悪化して負債が増加するようになった。以前から手を染めていた詐欺行為を本格的に始めた尾上は、かねて親交のあった東洋信用金庫支店長らに架空の預金証書を作成させ、それを別の金融機関に持ち込み、担保として差し入れていた株券や金融債と入れ替え、それらを取り戻すなど手口で犯行を重ねた。

やがて証書偽造が発覚、尾上は1991年平成3年)8月13日に詐欺罪で逮捕された。この時点までに尾上らは、「ナショナルリース」らノンバンクを含む12の金融機関から3420億円を詐取していた。金融機関からの借入金総額は、のべ2兆7736億円、支払額はのべ2兆3060億円に達しており、留置所破産手続きを行った際の負債総額は4300億円で、個人としては日本で史上最高額となった。

裁判で尾上の弁護人は、尾上に株式の知識が全くなく、周囲に踊らされていただけであり、責任能力はないと主張したが認められず、懲役12年の実刑判決を受けた。

巨額の融資を行った東洋信金は経営破綻により消滅し、預金保険機構の金銭援助を得て資産(正常債権)を三和銀行が、店舗網は府下の複数の信金へ譲渡された。また、ノンバンク最大の貸し手であるナショナルリースの担当社員が特別背任罪で逮捕されている。同社はこの期の不良債権をグループのサービサーへ債権譲渡し、1998年までに親会社の松下電器が未収債権について損失負担する形となり、2001年に松下クレジットとの合併を経て2010年に「住信・パナソニックフィナンシャルサービス」、さらに2012年に三井住友トラスト・パナソニックファイナンスとなっている。

信仰

1970年昭和45年)暮れ、清風学園創設者である平岡静人によって、高野山金剛峯寺報恩院で得度の路を開かれた。平岡によって名付けられた得度名は、純耕。

平岡一族との親交は深く、同一族が主催するチベット仏教寺院・ギュメ寺(南インド)への開眼ツアーにも参加している。この際、尾上は2,000万円をギュメ寺に寄進したが、平岡一族は寄進は自身らによるものだと主張している。また、同ツアーで尾上は、平岡ともども宗教指導者・ダライ・ラマに面会した。その後、平岡はダライ・ラマを念仏宗無量寿寺に紹介した。

脚注

  1. ^ a b 世界を騒がせた女の事件スペシャル 『偉大なるトホホ人物伝』 第29回 テレビ東京

関連項目