夕陽のギャングたち

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夕陽のギャングたち
Giù la testa
Duck, You Sucker
監督 セルジオ・レオーネ
脚本 ルチアノ・ヴィンセンツォーニ
セルジオ・レオーネ
セルジオ・ドナティ
製作 フルビオ・モルセッラ
出演者 ロッド・スタイガー
ジェームズ・コバーン
ロモロ・ヴァッリ
音楽 エンニオ・モリコーネ
撮影 ジュゼッペ・ルゾリーニ
配給 ユナイト映画
公開 イタリアの旗 1971年10月29日
日本の旗 1972年4月22日
上映時間 157分
製作国 イタリアの旗 イタリア
言語 イタリア語
スペイン語
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夕陽のギャングたち』(原題:Giù la testa、英題:Duck, You Sucker)は1971年製作のイタリア映画。セルジオ・レオーネ監督作品。メキシコ革命の動乱を舞台に、アイルランド人の革命家とメキシコ人の山賊の友情を謳いあげた革命の叙事詩である。本作品と、同じくレオーネの後期監督作品である『ウエスタン』と『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を併せて、それまでの「ドル箱三部作」に対して「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」と呼ぶこともある。

概要

レオーネは『夕陽のギャングたち』の製作に最初から深く関わってきたが、あくまで脚本の執筆など裏方の仕事のみに徹し、本人が監督をするつもりはなかったとされる。当初レオーネは本作品の監督としてピーター・ボグダノヴィッチや、レオーネ作品で長く助監督を務めてきたジャンカルロ・サンティを考えていたが、主演のロッド・スタイガージェームズ・コバーンがレオーネが監督しない限り降板すると言い張ったため、止む無くレオーネ本人が監督することになった[1]

配役の混乱、監督の変更など多くの困難を乗り越えて完成した『夕陽のギャングたち』だが、これまでの「ドル箱三部作」や前作の『ウエスタン』と比べて本作品は興行的にも批評的にも失敗、以後レオーネは次の監督作品で遺作でもある『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年公開)まで10年以上に渡り雌伏することになる。

公開当時からしばしばレオーネの他の監督作品に埋もれて省みられることの少なかった本作品だが、近年DVDが発売されるなど再評価の機運が高まってきている。

ストーリー


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


舞台は革命の混乱の最中にあるメキシコ。山賊一家の頭目フアン・ミランダと元IRAの闘士であるジョン・マロリーが出会うところから物語は始まる。爆発物のエキスパートであるジョンを仲間に引き入れて、かねてからの夢だったメサ・ヴェルデの国立銀行を襲撃しようとするフアン。最初はフアンをてんで相手にしていなかったジョンも、最終的にはフアンの計画に協力することになる。

ジョンの助力を得て意気揚々と銀行を襲撃するフアンとその一味だが、そこには現金の代わりに現政権に反抗する政治犯が収容されていた。ジョンに騙される形で心ならずも革命の英雄となってしまったフアンは、以後もジョンと共に革命の渦に巻き込まれていく。

キャスト

役名 俳優 日本語吹き替え
DVD版 TV版
ファン・ミランダ ロッド・スタイガー 富田耕生
ジョン・マロリー ジェームズ・コバーン 小林清志
アデリータ マリア・モンティ 渡辺美佐
ヴィエガ医師 ロモロ・ヴァッリ 大木民夫
ルイス大佐 アントワーヌ・ドミンゴ 若本規夫
ハイメ フランコ・グラジオーシ 後藤哲夫

タイトルについて

本作品は多くの異称があることでも知られる。当初レオーネは『Once Upon a Time... the Revolution』というタイトルを考えていたが、ベルナルド・ベルトルッチの『革命前夜』(英題:Before the Revolution)と紛らわしかったため断念した[2]。次にレオーネは映画中でしばしば使われる台詞である『Duck, You Sucker』にタイトルを変更するように主張した。レオーネ本人はこの台詞をアメリカで頻繁に使われる言い回しだと(アメリカ人俳優のジェームズ・コバーンとロッド・スタイガーがそのような言い回しを聞いたことがないと反対したにも関わらず)思い込んでいたと言われている[3]。本作品の興行収入が冴えなかったのは、映画の重厚な雰囲気にそぐわないこの軽薄なタイトルの所為だったとも指摘されている。映画公開数ヵ月後に低調な興行成績を危惧した製作会社により、ジェームズ・コバーンの演じる革命家が爆発物のプロであることから『A Fistful of Dynamite』にタイトルを再変更された[4]。映画公開後のタイトル変更という異例の事態を迎えた『夕陽のギャングたち』だが、元々イギリスでは『A Fistful of Dynamite』のタイトルで公開されていたため、当初の予想よりも混乱は少なかったという。

現在北米でリリースされているDVDでは『Duck, You Sucker』と『A Fistful of Dynamite』の両方が併記されている。

トリビア

  • レオーネは当初イーライ・ウォラックにフアン・ミランダ役のオファーを出したが、ウォラックは既に他の作品に関わっていたので辞退、止む無くロッド・スタイガーがフアン・ミランダを演じることになった。ウォラックはその後翻意しレオーネに出演する意思が有ることを伝えたが、既にスタイガーがオファーを受けた後であり、またスタジオもより知名度のあるスタイガーを望んだため結局ウォラックは出演できなかった[3]
  • ジョン・マロリー役のオファーを出されたものの、出演に気が進まなかったジェームズ・コバーンを、彼の友人でありかつてレオーネ作品に出演したことのあるヘンリー・フォンダが説得した。

脚注

  1. ^ Sergio Donati Remembers "Duck You Sucker"(『夕陽のギャングたち』の脚本家セルジオ・ドナティへのインタビュー、The Sergio Leone Anthology収録)
  2. ^ “AKA... MANY OTHER NAMES”(The Sergio Leone Anthology付録の小冊子より)
  3. ^ a b The Myth of Revolution - Sir Christopher Frayling Discusses Sergio Leone(レオーネの伝記作家クリストファー・フレイリングによる映画の解説、The Sergio Leone Anthorogy収録)
  4. ^ Restoration Italian Style(MGMの技術監督ジョン・カークによる映画の解説、The Sergio Leone Anthology収録)