垂直尾翼

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垂直尾翼(すいちょくびよく)とは、飛行機を始めとする航空機尾翼の一種の名称である。

概要

旅客機の垂直尾翼

垂直尾翼(すいちょくびよく)とは、飛行機を始めとする航空機尾翼の一種で、垂直についている部分。小さな(よって軽い)尾翼で十分なモーメントを発生できるように、ふつうは重心から離れた位置に取りつけられる。

いわゆる風見安定によって、航空機がヨー方向への安定性を保つ働きをする。胴体上部に取り付けられる一般的な垂直尾翼の場合、ロール方向の静安定を強める効果もある。垂直尾翼は単純に発生する揚力で効果を推し量ることができないため、その指標として垂直尾翼容積という値が使用される。

機体の中心線上に1枚備わるものが基本だが、機体規模から必要となった面積と比較して全体の空力や強度構造の最適化から求められたり、格納庫の天井高さなどの制約によって、左右に並べて2枚備える場合(F-15)、3枚備える場合(ロッキード コンステレーション)もある。その他の部位の空力との兼ね合いで、垂直尾翼が真上向けの文字通りの「垂直」ではなく、2枚構成でかつ外側向けて傾斜して装備される機体もある(F/A-18)。

固定翼機

固定の垂直安定板(英語: vertical stabilizer)と、後縁にある可動の方向舵英語: rudder)で構成される。

  • 着陸進入時など、横風を受けながら飛ぶときは方向舵を作動させて(切って)まっすぐに飛ぶ。横風着陸も参照。
  • 旋回飛行中、方向舵を切ることで力のつりあいを保つ。

垂直安定板はしばしばフィン(英語: fin鰭(ひれ)の意味)と呼ばれることもある[1]

ベントラルフィン

キューバ空軍MiG-21bis LAZUR
トルコ空軍ボーイング737 AEW&C

高迎え角で起動を行うジェット戦闘機や風の影響を受けやすい巨大レドームを持つ早期警戒管制機などでは、通常の垂直安定板だけでは横方向の安定性が不足することがある。この対策として、既存の垂直安定板を増積(大型化)するよりも、機体下部に下向けて第2の垂直安定板を追加したほうが小型の安定板で大きな安定効果を得ることができる[2]場合がある。この機体下部に備えられた小型の垂直安定板をベントラルフィン英語: ventral fin腹びれ)と呼ぶ。

ベントラルフィンの装着方法としては、F-105MiG-21のように機体中心線に1枚の場合もあれば、F-8ボーイング737 AEW&Cのように機体下部左右に振り分けて2枚の場合もある。ベントラルフィンが装着される機体後部下側は離着陸時に地面と接近する箇所なため、あまり上下方向に大型化することは難しい。

事例は少数だが、胴体から離れた主翼の中ほどやエンジン・ナセル英語版にベントラルフィンが装着されている機体もある。

回転翼機

方向舵の無いベル 212
垂直尾翼に方向舵を持つ回転翼機カモフ

ヘリコプターなどの回転翼機ではテイルローターを持つ機種がほとんどであるため、垂直安定板のみの垂直尾翼となっていることが多く、方向舵を持つ機体は少ない。またテイルローターによって常に機首方向を維持していることと、固定翼機にくらべて巡航速度が低いことから、垂直尾翼による風見効果はさほど期待されておらず、固定翼機に比べて小型である。

方向舵を持つ機種(テイルローターを持たない回転翼機)

無尾翼機

いわゆる無尾翼機は、水平尾翼を廃した航空機(固定翼機)の事であるが、さらに垂直尾翼を廃した例もある。垂直尾翼を廃した航空機は、スポイラーによってヨー制御を行う。

脚注・出典

参考書籍

  • 『世界の傑作機144 リパブリックF-105サンダーチーフ』文林堂、2011年。ISBN 978-4-89319-197-7 

関連項目