地獄
地獄(じごく)は、宗教的死生観において、複数の霊界(死後の世界)のうち、悪行を為した者の霊魂が死後に送られ罰を受けるとされる世界。厳しい責め苦を受けるとされる。素朴な世界観では地面のはるか下に位置することが多い。
各宗教の地獄
主な宗教における地獄は、以下の通り。
- 仏教
- 詳細は「地獄 (仏教)」を参照
- 六道の最下層。閻魔の審判に基づいて様々な責め苦を受けるとされる世界。対比されるべきは、本来なら六道の最上層・天界のはずだが、実際には、成仏した者が行く六道のいずれでもない浄土(浄土は数多くあり、極楽はその一つ)と対比させられることが多い。
- キリスト教
- 詳細は「地獄 (キリスト教)」を参照
- 一般的に、死後の刑罰の場所または状態[1]、霊魂が神の怒りに服する場所[2]とされる。しかし、キリスト教の教派により、地獄の概念や解釈は多少異なる。
- 反語は「天国」である。
- イスラム教
- 「ジャハンナム」と呼ばれる。世界の終末に際しての審判において、不信心者や悪事を成した者が灼熱の責め苦を受けるとされる世界。
- 反語は「天国 (イスラーム)」である。
- 北欧神話
- 詳細は「ヘルヘイム」を参照
- 女神ヘルが支配する、名誉の戦死を遂げられなかった者が行く世界。対比されるのは名誉の戦死を遂げた者(エインヘリャル)が行くヴァルハラ。
一方、地獄がない宗教としては、以下のような事例がある。
地獄と関連のある場所
- 現世
- 温泉、火山
- 地獄の口
- 熊野 - 古代日本では「死者の国」とされた。
- 泰山 ‐道教の聖地で、冥界とされる。
- 羅酆都、酆都、羅酆山 - 中国の死者の国
- プルートニオン - ギリシア神話における冥界の神プルートーの聖域。二酸化炭素濃度が高いなどの死の可能性のある地域が設定された。
- クルアハン (Cruachan) の城砦 - アイルランドにあるコナハト王国の首都だったとされる場所で、Oweynagat(猫の洞窟)が地獄の入り口とされている。
- 言い伝え
- 地獄側
- ヘルマウス - 巨大な怪物の口であり、地獄の入り口
- チンワト橋 - ゾロアスター教で死者が生前の業で、罪があれば 裁きが行われる druj-demana (嘘の家)に送られ、良き者は 歌の家に行くことが出来る。
- 枉死城 - 中国の民間信仰で不慮の死で亡くなった魂が集まる地獄にある場所。酆都大帝が管轄し、目連尊者が巡視している。
- 黄泉比良坂- 日本神話
比喩表現
宗教(主に仏教)上の地獄から派生して、非常に苦難な状況・境地・場所を地獄と例える。たとえば、「生き地獄」、「地獄の一丁目」など。
また、以下のような用法もある。
- 火山性ガスや温泉の蒸気熱などにより草木の生えない場所や、極めて高温の温泉が大量に湧出する源泉地帯。あるいは間欠泉などの一部の温泉の別名。例:「地獄温泉」、「地獄谷温泉」、「別府地獄めぐり」、「地獄釜(地獄蒸し)」、「雲仙地獄」
- 劇場において、舞台の下にある空間。奈落。
- 江戸時代において、格の低い売春婦。
- 銃・刃物といった人を死に至らしめるもの、麻薬・殺し・強盗といった人を狂気に陥れるもの、貧困・失業・汚物といった人に苦しい生活を強いるものが処理されることなく、吹き溜まり、そして蔓延るようになり、いつまでもその状態が続いている街や場所が呼ばれたりする。
- 非常な苦しみや試練が繰り返し続く状態や境遇。「試験地獄」(競争の激しい試験に合格するために大変な苦しみを味わうこと)や「今日の仕事は地獄だったよ」(その日の仕事の内容・状況が非常に苛酷であったこと)や「ヘル朝鮮」など。
脚注
- ^ 『キリスト教大事典 改訂新版』469頁、教文館、昭和52年 改訂新版第四版
- ^ モスクワ府主教マカリイ1世著『正教定理神学』526頁 - 529頁