仔牛肉
仔牛肉(こうしにく、「子牛肉」とも表記 英: Veal フランス語: veau)は、未成熟の若いあるいは幼い牛(
概要
仔牛肉は、外見は牛肉より明るいピンク色をしており、肉質が緻密で脂肪分が少なく、柔らかで、いわゆる「牛臭さ」がなく、淡泊な味わいである。欧米では普通の牛肉よりも高級な食材とされ、カツレツ(シュニッツェルなど)やソテーなど、様々な用途に使われている。特にフランス料理とイタリア料理では古くから好まれている食材である。
さらに幼い、乳離れしていない仔牛肉をmilk fed veal, 乳飲み仔牛肉 といい、いっそう淡泊な味である。
仔牛肉用には、成牛としての需要が少ない雄の乳牛の仔牛が充てられることが多い。日本ではまだ需要があまりないことから一部北海道などで少量生産にとどまっている。ほとんどは、海外オーストラリア・ニュージーランド・カナダなどで生産されたものが、冷凍肉として輸入供給されている。
生産方法
- ヌレ子ヴィール(乳飲み仔牛肉)
- 主にホルスタインの雄を生後数日~10日程度、母牛の乳主体で飼養し、体重45~70kgでと殺した仔牛肉。肉質は特別柔らかくはなく、繊維が細かく締まっている。
- ホワイトヴィール(ほ育仔牛肉)
- 最高級の仔牛肉。主に雄を、生後まもなくクレート(ストール:固定された囲い)へ収容し、18~20週の間、特別に調整された代用乳で飼養し、体重200kg前後でと殺したもの。明るく、ピンク色の肉であるほど、高級とされ、高値で取引される。
- 肉の色は子牛の筋肉の鉄分量と関係があり、子牛には鉄分の給与制限が推奨される[4]。代用乳には鉄分は微量しか含まれていない。鉄分不足を補うために、仔牛が鉄枠や自分の尿をなめたり(尿には少量の鉄分が含まれる)、牧草や土に含まれる鉄分を摂取するなどの行動を防ぐため、一般的に木の枠でできた、振り返って自分の尿をなめることができないサイズの、狭いクレート内で飼養される。鉄分不足により、肉は非常に明るく、淡いピンク色になる。また自由に動くことのできないクレートに収容することにより、筋肉が発達せず柔らかい肉ができる。
生産の問題点
牛は粗飼料を食べ、反芻する動物であるが、粗飼料には鉄分が含まれるため、子牛には与えられない。そのため、ルーメン(第一胃)の正常な発達が歪められ、胃潰瘍を含む消火器障害や、慢性的な下痢をもたらす[5]。また、狭いクレートの中で、子牛は自分の体のほとんどに舌を届かせることができず、毛づくろいをしたいと欲求が満たされないことや、自然界では1時間に6000回母牛の乳を吸う子牛が[6]、母牛の乳をはやく生産ラインにのせるために、生まれてすぐに母牛と子牛が引き離されることで、その欲求が満たされないこと、1日2回の食事に要する20分程度の時間以外に、狭いクレートの中何もすることがないこと、などから歯軋りをしたり、仕切りの側面を噛みつづけたり、尾を振り動かし続ける、舌を動かし続けるなどの、常同行動(同じ行動を繰り返し行う異常行動)が観察されている[7]。また子牛が出荷されるまでの死亡率は10~15%である[5]。 そのため、動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点から、仔牛のクレート飼いを禁止している国や州がある。
- 1990年、イギリスで仔牛のクレート飼育が禁止された
- 2007年、EU全域で仔牛のクレート飼育が禁止された。
- 2008年、アメリカ合衆国のカリフォルニア州で仔牛のクレート飼育を禁止する家畜虐待防止法が成立した。
カツレツ
日本へ伝わった「カツレツ」は、この仔牛肉のソテー料理である。その後、トンカツのように多量の油で揚げられる「カツ」が主流になってからは、仔牛肉を含む牛肉を使用したカツレツもカツも豚肉に主流が移って行った。