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乙嫁語り

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乙嫁語り
ジャンル 歴史漫画
漫画
作者 森薫
出版社 エンターブレイン
掲載誌 Fellows!
レーベル ビームコミックス
発表期間 volume 1(2008年10月14日) - 連載中
巻数 既刊4巻(2012年5月現在)
テンプレート - ノート

乙嫁語り』(おとよめがたり)は、森薫による日本漫画作品。『Fellows!』(エンターブレイン)volume1より連載中であり、同誌の看板作品となっている[1]

また『Fellows!(Q)』(エンターブレイン)創刊号にも番外編が掲載されている[1]

概要

物語の舞台は19世紀後半の中央アジアカスピ海周辺の草原地帯である。12歳の少年カルルクの元に嫁いできた8歳年上の娘アミルを主人公として、シルクロードに生きる遊牧民と定住民の生活を描く。
客であったスミスがエイホン家を去ってからは、スミスを主軸として中央アジアから目的地であるアンカラまでの道程とそこに住む人々の様子を描いている。

受賞歴

登場人物

エイホン家

元々は遊牧民だったが、何代か前に遊牧をやめて町に定住した一族。テュルク系民族。
主人公のアミル、夫のカルルクの他に、カルルクの父・アクンベクと母・サニラ、カルルクの父方の祖父・マハトベクとその妻・バルキルシュ、カルルクの姉・セイレケとその婿・ユスフおよびセイレケとユスフの子供・ティレケ・トルカン・チャルグ・ロステムの12人が同居する大家族である。

アミル・ハルガル
本作の主人公でありヒロイン、20歳。カルルクの妻。別の移牧民の一族から嫁いできた。
活発な性格で、カルルクの町ではほとんどする者がいなくなったの技に優れ、狩猟の腕も確かである。更に料理や刺繍等の、いわゆる「女性の仕事」も達者である。ただし縫い物に関しては、技術は高いものの、馬や鳥など、男らしいモチーフを多く選ぶ傾向にある。好物はザクロ
平均寿命が短く、子供の死亡率も高かった当時としては20歳は「嫁ぎ遅れ」と呼ばれる年齢(子供の人数が多ければ多いほどよいとされたため、早くに結婚する風潮があった)であり、実家や嫁ぎ先の遠縁にはあまり良い顔はされていない。しかし当の嫁ぎ先との関係は良好で、夫・カルルクに対してもやや過保護気味ながら仲は良好である。
作者いわく「明日死んでも悔いのないキャラ作り」をしており、「弓が上手」「姉さん女房」「なんでもさばける(鶏とか兎とか)」「野性」「天然」「強い」「でも乙女」「でもお嬢様」といった細かな人物設定が付与されている。
カルルク・エイホン
アクンベクとサニラの末息子。アミルの夫。末子相続であるため、エイホン家の後継。
まだ12歳のためアミルより身長も低く、見たところはあたかも姉弟か母子のような関係となっている。思いやりと思慮深さを持ち合わせた少年。
婚礼の際はアミルの年齢に驚いたものの、後に「もっと若かったらとか、仕方なく結婚したとか思っていない」とアミルに対して自分の気持ちをハッキリと告げた。アミルの実家の一族がやってきた際、無理矢理アミルを連れ戻そうとしたおじを短剣で突き刺し、妻を守り抜いた。
カルルクの名は、613世紀頃に活躍したテュルク系民族・カルルクからとられている。
マハトベク
カルルクの祖父。温和な人物。
バルキルシュ
カルルクの祖母。アミルと同じ一族から嫁いできた。
嫁入り道具として持参してきた弓矢を今なお扱える、迫力ある女傑。アゼルを射かけて追い返したこともある。里方の傍若無人な振る舞いの原因であるヌマジについても、多少は事情を知っているらしい。
アクンベク
マハトベクとバルキルシュの息子。カルルクの父。末子相続の風習のため、4世代の一家を率いる家長としては若い。
サニラ
アクンベクの妻。カルルクとセイレケの母。セイレケの子供達の祖母。おっとりとした美女。劇中で判明しているだけで既に4人も孫が居るが、早婚の時代背景のため、現代の感覚では非常に若い祖母である。
セイレケ
アクンベクとサニラの娘。カルルクの姉。賑やかな性格。定住民の習慣にうといアミルに振り回されることもある。
ユスフ
セイレケの婿。カルルクにとっては義理の兄。強気でしっかりした性格。
ティレケ
ユスフとセイレケの長女。カルルクの姪。父親似。しっかり者で刺繍は上手だが、何よりも鷹が大好きで鷹や鳥しか縫わないためセイレケを悩ませる。
トルカン
ユスフとセイレケの長男。カルルクの甥。父親似。よくロステムをからかって泣かせている。
チャルグ
ユスフとセイレケの次男。カルルクの甥。母親似。よくロステムをからかって泣かせている。
ロステム
ユスフとセイレケの三男。カルルクの甥。母親似。木工細工と山羊が好き。たびたび言いつけられた仕事を放り出し、後でセイレケに叱られる。
ヘンリー・スミス
エイホン家に居候していたイギリス人。中央アジアの歴史・民俗について研究している。子供のころ、子守から聞かされた旅行記から中央アジアに興味を持ち、それが高じてこの地まで来た。当初尋ねる予定だった族長の了解が得られたため、エイホン家を去った。グレート・ゲームの最中であり、ロシア帝国勢力圏に近づかないよう行動に注意している。
カラザの町で未亡人タラスと出会い、接するうちに互いに惹かれ合うようになった。しかし添い遂げることはかなわず、傷心のまま目的地であるアンカラへ向かった。アンカラへの道中で誤ってアラル海に転落し、助けてもらったライラ・レイリ姉妹の居住地であるムナクの村に滞在している。
劇中では主役、脇役を問わず登場場面が多い。作品全体のイメージビジュアルにもなっているのはアミルだが、単行本4巻の帯には「主人公のスミス」という記述がある。
バルキルシュの娘
第10話「布支度」にて名前のみ登場。それぞれが特徴的な刺繍を家に残していった。
シェルビイガ
体が弱く、刺繍をほとんど残さなかった。
チャルスバイ
大人しい女性で隣町に嫁ぎ、子供を5人作った。
スイナク
とても器用な女性で、10歳のときにハンカチに美しい刺繍を施し、13歳には近所の子に教えていた。「おかげで嫁入りには苦労しなかった」とバルキルシュが語った。
ティゼカン
刺繍は下手だったが気立てはよかった。

エイホン家の遠縁

遊牧生活を続けている一家。衣服の様式がエイホン家とは異なる。

ウマクおじさん
アクンベクに小刀の鞘の製作を頼んでいた。
結婚の報告がてら、完成した鞘を届けに行ったカルルクを歓迎するが、カルルクの妻が年かさであることを憂慮している。
ウマクの家族
老齢の父母、息子とその嫁(もしくは娘とその婿)、孫2人。他にも数名。
嫁(もしくは娘)は18歳にして既に2児の母であり、20歳で嫁いだアミルの異例さが強調されている。

エイホン家と同じ町の住人・パリヤの関係者

エイホン家と同じく、遊牧を止めた人々。狩りも行わなくなったため、弓を引ける者はほとんどいない。

パリヤ
年頃の少女で、嫁いできたアミルにとっては町で初めて出来た友人。パン焼きの際に勝手がわからないアミルに世話を焼き、お礼にと弓術を教えて貰ったりしている。
物事をはっきり言う性格や男性に対する免疫の無さが災いし、縁談をいくつか断られている。
パン作りが上手だが刺繍は苦手。刺繍は苛々すると発言している。
チャガップ
羊飼い老人。物事をおおげさに言う傾向がある。アミルが狩りに出たソマ湖周辺にが出るとカルルクに話す。
パリヤの父
陶器を商っている。活発ではっきり言う性格の娘に手を焼く。
パリヤの結婚相手候補
パリヤがカルルク達の付添としてついてきた市場で出会った若者。男性が苦手なパリヤから突き飛ばされてしまうが、本人はパリヤのことを気にいっている。

ハルガル家及び関係者

冬は決まった冬営地で暮らし、夏だけ移動する移牧民の一族。騎射(追物射)を日常的に行っており、冬には鷹狩りをしている。アミルの実家。大父の死後、年嵩連中が、娘達を政争の道具に利用し、好き勝手にしている。アミルを連れ戻すのに失敗した後はヌマジとは縁が切れたため、ロシアとの関係が深いバダンとの同盟を画策している。

アゼル
アミルの長兄。寡黙で生真面目な性格。父親の命令で、ヌマジという男に嫁がせるためにアミルを連れ戻そうとしているが、内心では葛藤している模様。
ジョルク
アゼルやアミルのいとこ。よく喋る性格で、アミルを連れ戻すことに対する疑問の念を隠さない。タレ目。「腹が減った」が口癖。ヌマジの力、土地や財産も相当であるとを認識しているが、同時に彼が女を酷く扱うことも知っているため、姻戚になることは良く思っていない。
バイマト
アゼルやアミルのいとこ。大柄。アゼルと同じく寡黙である。
アテルイ
アミルの妹。アミルの結婚後、政略結婚でヌマジに嫁いだが死亡。ヌマジに蹴られて骨折したのが死亡の原因といわれている。
カラヒガ
アミルの妹。アミルの結婚後、政略結婚でヌマジに嫁いだが死亡。
ヌマジ(一族)
一時期ハルガルと婚姻関係にあった部族。広大な土地と多数の家畜を持つが、嫁いできた女性を蹴って骨折させ死なせるなど粗野で傲慢。ハルガルより嫁いできた女性が次々と死に、最終的に手切れとなったがその際に多大な土地をハルガルより奪い、敵対関係となった。
バダン(一族)
ハルガルの遠縁で定住民族。ハルガルがヌマジと対立したため、ハルガル家の家長(アゼル・アミルの父親)はアゼルを使いに出し、バダンと同盟を組もうとする。敵対相手への手駒としてハルガルを利用しようと考えている。

カラザの町の住人及び関係者

タラス
カラザの町外れに住む美貌の遊牧民。嫁いだ夫が子をなす前に死亡し、その弟と結婚するもまた死亡を繰り返し、5人の夫に先立たれた未亡人。姑と二人で静かに暮らす。愛馬が盗難にあったことからスミスと知り合い、思慕の情を抱くようになった。その後、姑が叔父と結婚したため、自分で結婚相手を選択することが叶わなくなり、スミスとの結婚への道は閉ざされた。
タラスの義母
タラスの5人の夫の母。5人の息子に続いて夫にも先立たれ、意気消沈しつつ静かに暮らしていた。ひょんなことから客となったスミスを大層気に入り、未亡人として生を終えるつもりのタラスを連れて町を出るように頼むが、夫の弟と結婚することによってタラスの幸せを自ら閉ざしてしまった。
タラスの叔父
タラスの亡夫の父の兄。タラスを息子の後妻にと強引に迫っていた。しかしそれはタラスの性格や容姿を気に入ったからではなく、結納金を省きたいからという狭い了見からだった。スミスをタラスから遠ざけるため、スミスが諜報員だと騒ぎ立てたこともあった。最終的にタラスの義母(弟の嫁)と結婚し、タラスの結婚相手を決める権利を得た。
アリ
アルサキルの孫イスマエルの子、タブリーズ出身。ホーキンズ(スミスの友人)に雇われ、スミスをアンカラまで案内することになっていた。カラザの町で待ち合わせする予定だったが、到着が大きく遅れたため捕らわれのスミスと初対面となった。この時カルルクとも面識を得た。
家が貧乏の上に次男のため、嫁を娶るための結納金を自分で稼がなくてはならず、他人が嫌がる案内人の仕事についた。

ムナクの村の住人及び関係者

海産物の宝庫であるアラル海に面した村で漁業が盛ん。村人の大半は浅黒い肌をしている。

ライラ
ムナクの村の漁師の娘。双子の妹のレイリと瓜二つの顔、ほぼ同じ性格をしている。「健康でお金持ちで顔のかっこいい、レイリとふたりでそろって結婚できる」兄弟との玉の輿を夢見ている。のちに幼馴染であるサームと婚約。
レイリ
ライラとは顔も性格も瓜二つ。幼い頃から常に二人で行動してきた。結婚相手を無理やり探そうとしては失敗し、父親に姉妹そろって頭を殴られている。のちに幼馴染であるサーミと婚約。
ライラとレイリの父親
屈強な体格をした漁師。ライラ・レイリ姉妹が暴走するたびに鉄拳を奮う厳しい父親。自分の父親の脱臼を直したスミスに恩義を感じしばらく家に滞在させている。
ミナー
ライラとレイリの母親。夫とは彼女のほうが惚れて恋愛結婚した。ライラ・レイリ姉妹のいたずらには手を焼いているが、同時に深い愛情を注いでいる。ライラ・レイリ以外にも子供を夫との間に儲けている。
ライラとレイリの祖父
脱臼で困っていたところをスミスに治療された。ライラ・レイリ姉妹の父方の祖父か母方の祖父かは明確には語られていないが、ライラ・レイリの父親からは「親父」と呼ばれている。
ライラとレイリの祖母
上記祖父の妻。ライラ・レイリをうまく乗せて手伝いをさせるのが上手い。
ミナーの姉
他家に嫁いでいるミナーの姉。ライラ・レイリ姉妹からは「おばさん」と呼ばれている。
サマーン
ムナクの村の漁師の息子で長男。通称は「サーム」。弟のサーミと共にライラ・レイリ姉妹とは幼馴染。のちにライラと婚約。
ファルサーミ
サームの弟で次男。通称は「サーミ」。兄サームよりもモリ打ちが上手いと自負している。のちにレイリと婚約。
サマーンとファルサーミの父親
漁師。ライラ・レイリの家とは古くからの付き合い。家計の事情は「海水よりしょっぱい」らしい。
ソラヤ
サマーンとファルサーミの母親。かつて紹介された結婚相手候補が気にいらず、強引に面識を持つ形で今の夫と知り合い結婚した。

用語

裁縫
中央アジアの、特に女性にとっては非常に重要な技能である。大量の布に刺繍を施した物を、他家に嫁ぐ娘に嫁入り道具として持たせるのがステータスであり、かなり早い段階から家族総出で準備をするのが風習である。女性にとって裁縫が得意であることは、結婚やその後の社会生活において大きなアドバンテージになる。
また、衣類に施される刺繍には厄除けの意味があり、乳幼児死亡率が高かった当時は長寿を願って子供服にふんだんに刺繍を施すのが慣例だった。
有史以来、人間とともに暮らしてきた哺乳動物。この地域の人たちにとっては貴重な移動手段であり、ラクダと並び荷物を運ぶための役務動物であった。また、自分の乗馬を飾り立てることは自負心を満足させる行為でもあった。そのため、殺すほどではない敵対者への報復として馬の鬣と尾の毛を切って辱めるということも行われた。
この地域で最もポピュラーな家畜。主として毛と肉を得るために飼われている。作者いわく、毛を取るために品種改良されたものではなく、ムフロン種(原種)に近い種類。
遊牧民(一部定住民)にとっては金銭と同義であり、結納金として収められることもある。同時に、結婚式で振舞われる羊肉の量で式の規模が計られる。
ホルキア廟
エイホン家が住む町の近くにある墓。伝説では40人の子供を産んだとされていて、子宝・安産にご利益があるとされ、遠くから詣でに来る人もいる。
結納金
結婚の際に夫側の家から妻側の家に支払われる金銭や家畜。夫の家の格式や妻の価値を示すものでもあるので、大抵は家計が崩壊しかねないほどの資産が支払われる。しかし妻の家からも持参金として結納金に負けないほどの金銭、布などが夫の家に入る(上記「裁縫」の項を参照)ので、収支としては結婚式の費用だけ赤字ですむ場合が多い。
頭に触れる
ムナクの村の風習。男性が女性(未婚既婚ともにかは不明)の頭に触れるということはタブーであり、触れてしまった男性はその女性との結婚を考えなければならないほどの責任が生じる。地域がヒンズー教(頭に神が宿っており、触れることを禁じている)にのっとった文化にあるのか、中世キリスト教の概念(女性の髪が性的アピールに通じるため触れることを禁じている)を持った文化にあるのかは不明。

単行本

  1. 2009年10月15日発売 ISBN 978-4-04-726076-4
  2. 2010年6月15日発売 ISBN 978-4-04-726586-8
  3. 2011年6月15日発売 ISBN 978-4-04-727328-3
  4. 2012年5月14日発売 ISBN 978-4-04-728083-0

乙嫁コンツェルト

ゲッサン』(小学館)連載作品の石井あゆみ作「信長協奏曲」とのコラボレーション企画[2]。『マチ★アソビ vol.7』にて開催された『Fellows!』『ファミ通コミッククリア』『ゲッサン』の合同サイン会が直接の契機となり[3]、両作品とも歴史に深く関わる作品であるという事で出版社の垣根を越えて企画された[2]

これに関連して『ゲッサン』2012年3月号には『Fellows!』連載作家25人による合作漫画「フェローズのできるまで」が掲載され、「乙嫁語り」は計4コマ参加している[4]

出典

外部リンク