一人っ子政策

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「計画生育」のスローガンを記した看板

一人っ子政策(ひとりっこせいさく)は、中華人民共和国改革開放政策が始動した1979年に始まった人口規制政策のことを指す。正式名称は計画生育政策簡体字: 计划生育政策, 拼音: jìhuà shēngyù zhèngcè)である。出産または受胎に計画原理を導入し、幾何級数的な人口の増加に法規制を加えた。この政策の効果によって現在の中国本土では少子化が進行している。

例外規定

  • 漢族に次いで人口が多いチワン族以外の少数民族に対しては免除され、反対に人口が増えるという結果になっている。
  • 中国人(厳密には漢民族)同士の夫婦のみに適用されるため、夫もしくは妻のいずれかが外国人もしくは少数民族の場合、この政策は適用されない。
  • 中国国内の漢民族同士の夫婦でも、香港マカオは適用対象外地域(一国二制度)である。
  • 都市部では一人っ子政策は強化ないし遵守されたが、例外として双子以上の多胎児の場合、全員が戸籍を持つことが許可された。

政策によって引き起こされた問題

2009年の中国の人口ピラミッド。5歳ごとに区切られており、最下段が0-5歳。

一人っ子政策により、中国はある程度の人口抑制に成功した。しかし、その一方で本政策はいくつかの問題を抱えている。

子供は戸籍上では夫婦一組に対し一人しか持たないとしても、密かに産んだ子供が戸籍外で生まれ、成長していった。こうして生まれた子供達は「黒孩子」(ヘイハイズ)と呼ばれ、国民として認められないため、学校教育や医療などの行政サービスを受けることができないといった状況にある。詳細は黒孩子を参照されたい。

また、一人っ子政策は違反すると罰金を払うことになるが、高額所得者は罰金と引き換えに、第二子以降も変わらずに産んでいる。このため、政府は罰金の増加(年収の3倍〜10倍以上)、違反者の公表、税金や社会保障での待遇格差をつけるなど、対策の強化を検討している[1]

一方で、この罰金(「社会扶養費」という)が行政部門の財源として軽視できないものになっているともいう。また、ここから生まれた既得権益による地方行政部門の腐敗も指摘されている。利権の多い罰金徴収を担当する各行政レベルに存在する計画出産委員会は、多くの若者の就職希望先になっているともされる[2]

漢民族の伝統に従うと、男子が親の面倒を見ることになる上、特に農村部においては肉体労働を積極的に手伝ってくれる男児の出産を希望する農民が多いため、妊娠時に性別検査を行い、胎児が女子の場合は中絶手術を行うケースが多発している。このため、結果として男女比が偏っている。21世紀に入り、一人っ子政策の下生まれ育った「80後」(バーリンホウ、1980年代に生まれた人)が成人に達しているが、上述したとおり男女比がいびつなため、男で結婚できない者が急増している。これについては、結婚#中国三高#中国などを参照されたい。

そして、中国の一人っ子は両親と祖父母の6人(全員存命であった場合)の大人から一身に愛情を受けて育つため甘やかされ、小皇帝(女児の場合小公主)とも呼ばれ、それ以前の世代とは異なる価値観を持っている。甘やかされて自分で家事を行う経験も乏しいため、自分だけで生活しなければならなくなっても、家事ができないケースがある[3]

一人っ子政策のため、精神的・肉体的に脆弱な兵士が目立つ。甘やかされて育った若者が兵士として徴兵されている。おかげで過酷な訓練では、倒れる兵士が続出している[4]

ただし、これはあくまで「中国の一人っ子政策によりいびつな形で産み出された一人っ子の実情」であり、様々な事情や背景がある他国の一人っ子の実情とは異なるため「一人っ子」といって他国と同列に論ずるべきものではないことに注意されたい。

人口抑制を進めた結果、2015年頃を境に労働力人口が減少に転じるという統計もあり、中国経済へ深刻な影響を与える可能性も指摘されている[5]

新疆ウイグル自治区広西チワン族自治区などでは、一人っ子政策を進めようとする行政と、それに対抗する民衆との間で、衝突が起きる事例がある。ウイグル族は一人っ子政策の対象外であるが、現在はこれらの地域でも漢民族の方が多数派になっているためである。

規制の緩和

上記の問題を鑑み、中国では地方都市や農村単位で様々な例外を設けるなど、段階的に第2子の出産に対する規制を緩和して来た。2011年現在では河南省を除く殆どの地域で規制は緩和されていたが、同年11月30日に、河南省でも夫婦が共に一人っ子であるか、又は農村戸籍の夫婦で第1子が女児であった場合に第2子の出産を認める様に条例改正案を提出し可決された。これにより条件付きでは有るが中国全土で第2子が認められることになった。前述、第2子は認められることとなったものの、戸籍謄本に載せられる風習が強く根付いていないこと、もしくは、農村夫婦の自発的申告無き事[戸籍事実の隠蔽/隠匿]が為、そういった社会的通念上、地位/身分を満たさない子供らが存在、[第2子の子供達存在]は、『黒胚』(※上記:「黒孩子」(ヘイハイズ))として位置付け捉えられており、規制緩和表面下にはそういった問題も根深く孕んでいるものとされている。[6]

脚注

関連項目

外部リンク