ラインバーンNF8U形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ラインバーンNF8U形電車
3374(2016年撮影)
基本情報
運用者 ラインバーンドイツ語版
製造所 シーメンスフォスロ・キーペ英語版(電気機器)
製造年 2006年 - 2012年
製造数 76両(3301 - 3376)
投入先 デュッセルドルフ・シュタットバーン
主要諸元
編成 5車体連接車、片運転台
2両編成(営業時、最大)
軸配置 2' + Bo + Bo + 2'
軌間 1,435 mm
電気方式 直流750 V
架空電車線方式
最高速度 70 km/h
車両定員 着席50人
折り畳み座席4人分
立席120人(乗客密度4人/m2時)
車両重量 35.5 t
全長 30,040 mm
全幅 2,400 mm
全高 3,500 mm
床面高さ 330 mm
430 mm(後部車体車端)
300 mm(乗降扉付近)
車輪径 600 mm(中間車体、動力台車)
430 mm(前後車体、付随台車)
主電動機 三相誘導電動機
主電動機出力 100 kw
出力 400 kw
制御方式 VVVFインバータ制御方式IGBT素子)
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6][7]に基づく。
テンプレートを表示

NF8Uは、ドイツの大都市・デュッセルドルフ路面電車および地下鉄であるデュッセルドルフ・シュタットバーンで使用されている電車。地下区間の走行に対応した、車内の大部分の床上高さを下げている超低床電車で、ドイツ語で「銀の矢」を意味する「シルバーフェイルII(Silberpfeil II)」と言う愛称も有する[1][3][4][5][6]

概要[編集]

デュッセルドルフ中心部の地下を通るシュタットバーン地下鉄)の1つであるヴェーアハーン線ドイツ語版は、道路が狭く単線区間も存在した地上の路面電車デュッセルドルフ市電ドイツ語版)を地下へ移設し、高速化や本数増加を図ったものである。この区間の開通に先立ち、デュッセルドルフの路面電車で使用されていた旧型電車を置き換えるため運営事業者のライン川鉄道会社(現:ラインバーンドイツ語版[注釈 1]は、シーメンスフォスロ・キーペ英語版によるコンソーシアムであるデュッセルドルフ低床シュタットバーン(Niederflur Stadtbahn Düsseldorf)との間に15両 + オプション61両分の契約を交わした。これがNF8U形である[9][2][3][4][5]

NF8U形はデュッセルドルフ市電の各系統で使用されているNF10形・NF8形コンビーノ)を基に開発された、車内全体が低床構造の超低床電車で、前後車体の両端に車軸付きボギー台車が設置されている関係で生じた下膨れのような前面デザインも共通である。一方、地上区間に加えて地下区間で使用されることを前提にしているため火災検知器を始め車体各部に防火対策を施している他、連結運転を実施する事から前面カバー内に連結器が設けられている。編成は片運転台の5車体連接式で乗降扉は車体両側に設置されており、営業運転時は背中合わせに連結した両運転台の2両編成を組み、設計上は最大3両まで連結運転が可能である[3][7][10]

座席配置は前後車体および中間のフローティング車体はクロスシート、中間の台車付き車体および後部車体の最後尾はロングシートが配置され、前後車体には車椅子ベビーカー用のフリースペースが設けられている[1][3]

台車は車軸がない独立車輪式台車が用いられ、前後車体の両端には付随台車が、中間の全長が短い車体には動力台車が存在し、主電動機にあたる三相誘導電動機は中間台車の外側に配置されている。制御装置はIGBT素子のVVVFインバータ制御が用いられており、これらを含めた車両全体の機器は双方向ネットワークシステム「CAN」を用いて一括管理が行われている。また、補助電源装置や制御装置等の機器の一部は屋根上に配置されており、ユニットとして配置する等メンテナンスの簡素化が図られている[3][1]

運用[編集]

最初の車両(1次車)は2006年から製造が始まり、2007年までに15両(3301 - 3315)が導入された。続いて2010年からはオプション分にあたる2次車(3316 - 3376)の生産が開始され、2012年まで導入が実施された。これらの車両は行き先表示装置が従来のドットマトリクスからLEDに変更されている他、安全対策として車内に監視カメラが搭載されている[11][2]

これらの車両はヴェーアハーン線の開通までデュッセルドルフ市電の各系統で使用され、市電の路線網に残存していた高床式車両(GT8SGT8、B4ドイツ語版)を置き換えた。その後、ヴェアーハーン線が開通した2016年以降は同区間を経由するシュタットバーンの系統に用いられている[6][11][4][5]

このNF8Uは車体や内装のデザインが高く評価され、2007年iFデザイン賞を受賞している[7]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 2005年にライン川鉄道会社時代から通称として用いられていた「ラインバーン」を正式名称としている[8]

出典[編集]

  1. ^ a b c d Rheinbahn Depot & Workshop Lierenfeld 2006, p. 20.
  2. ^ a b c 服部重敬 2017, p. 113.
  3. ^ a b c d e f Niederflur-Stadtbahnwagen NF8U der Rheinbahn AG, Düsseldorf”. Vossloh Kiepe. 2021年1月28日閲覧。
  4. ^ a b c d Wehrhahn-Linie Flotte Fahrt ab 21. Februar 2016”. Landeshauptstadt Düsseldorf (2016年2月20日). 2021年1月28日閲覧。
  5. ^ a b c d Wehrhahn-Linie seit einem Jahr in Betrieb”. Westdeutsche Zeitung (2017年2月16日). 2021年1月28日閲覧。
  6. ^ a b c Niederflur-U-Bahn NF8U „Silberpfeil II“”. Rheinbahn. 2021年1月28日閲覧。
  7. ^ a b c NF8U / Low-floor metro-tram”. iF Design Award. 2021年1月28日閲覧。
  8. ^ 2005: Nennen Sie uns Rheinbahn!”. Rheinbahn. 2021年1月28日閲覧。
  9. ^ 服部重敬 2017, p. 112.
  10. ^ Rheinbahn Depot & Workshop Lierenfeld 2006, p. 18-19.
  11. ^ a b 26. März 2010: Neue NF8U-"Silberpfeile" rollen an.”. Linie D - Arbeitsgemeinschaft historischer Nahverkehr Düsseldorf e. V. (2010年3月26日). 2021年1月28日閲覧。

参考資料[編集]

  • 服部重敬「定点撮影で振り返る路面電車からLRTへの道程 トラムいま・むかし 第5回 ドイツStraßenbahnの盟主 デュッセルドルフ」『路面電車EX 2017』第9巻、イカロス出版、2017年5月20日、108-115頁、ISBN 978-4-8022-0326-5 
  • Rheinbahn Depot & Workshop Lierenfeld (2006年10月28日). Welcome at Rheinbahn AG (PDF) (Report). Düsseldorf. 2021年1月28日閲覧

外部リンク[編集]