フランチャイズ

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流通におけるフランチャイズ (franchise) とは、事業形態(ビジネスモデル)のひとつ。

概説

一方が自己の商号・商標などを使用する権利、自己の開発した商品サービスを含む)を提供する権利、営業上のノウハウなど(これらを総称してフランチャイズパッケージと呼ぶ)を提供し、これにより自己と同一のイメージ(ブランド)で営業を行わせ、他方が、これに対して対価(ロイヤルティー)を支払う約束によって成り立つ事業契約である。

通常、権利や商標、ノウハウなどを提供する側をフランチャイザー(本部)と呼び、受ける側をフランチャイジー(加盟者・加盟店)と呼ぶ。

外部資本を利用し、短期間で多くのチェーンストア店舗展開を進めることを目的とするため、フランチャイズチェーン (FC) と呼ばれることが多い。法的には中小小売商業振興法などによって規制される。

適用される業態としてはコンビニエンスストア等の小売業の他、ラーメン弁当ファストフードなどの外食産業不動産販売、自動車の整備、近年では小型のフィットネスクラブ学習塾CDレンタルといったサービス業に至るまで多岐にわたっている。

世界初のフランチャイズは、アメリカで生まれたケンタッキーフライドチキンとされる。日本では、1960年代不二家レストランおよび洋菓子販売のチェーンストア)やダスキン(清掃用具のレンタルチェーンストア)、1970年代ではセブン-イレブン(コンビニエンスストア)、モスバーガーなどの外食産業がフランチャイズ型の事業展開をしている。また、明治時代に生まれた特定郵便局についても、広義のフランチャイズ事業であると言える。

同じ名前の店舗であっても全てがフランチャイズ店舗とは限らない。実績を積んで成功した直営店を模範にフランチャイズ展開するのが基本であるため、外見上は区別の付かない同名の直営店とフランチャイズ店も存在する。ただし、フランチャイズ展開を行うとFC店舗数が急激に拡大、直営店に比べてその比率は圧倒的にFC店が高くなる。また、本部側にとってリスクの高い直営店では厳しい経営管理が要求され、本部にとってリスクの少ないFC店舗はオーナーによる経営管理、すなわち消費者へのサービスの差が大きくなる傾向にある。

なお、フランチャイズと似た事業形態に、ゲームセンターにおける「共同運営店舗」が存在するが、これは運営をオーナー(フランチャイズにおけるフランチャイジー)ではなく本部(フランチャイズにおけるフランチャイザー)が行う(スタッフの所属も本部側)こと、本部もリスクを負うことがフランチャイズ・チェーンとの大きな違いの、似て非なる事業形態である。[要出典]

利点

FC店舗は、フランチャイザーにとっては低コストでの事業拡大を可能とする。すでに土地や店舗物件を有(あるいは供出)する形で加盟店が参入するため、取得にかかる時間や費用を大幅に短縮できる。そのため、新事業を急速に拡大し、ブランドを確立するための方法として、様々な業種で採用されている。フランチャイズ展開後の収入においても、安定的なロイヤルティーが見込めるという利点を持つ。

一方のフランチャイジーにとっては、開業から実務にいたるビジネスノウハウを比較的短期間かつ容易に身につけられる。しかも、フランチャイザーが持つブランド力、マーケティング力によって、初期段階から安定した経営が期待できるという利点がある。

欠点

FC展開はフランチャイザーにとっては、多数の店舗管理を必要とされるため、各フランチャイジーの質にばらつきが発生することがある。そのため、計画通りの商品提供がなされない、自己のブランドイメージが傷付けられる、といったリスクも伴う。また、フランチャイジーは個人がその資金の全てを負担する事業者であるため、経営に問題があったと本部が判断したとしても、経営者の交代や強力な改善などができない。

フランチャイジーにとっても、ノウハウのほかに店舗の造作を本部の指示の元で作らなければならない。外観等に関しては地元業者に仕様書通りの施工を要求すれば問題ないが、什器備品は本部から購入しなければならないことが多いため、実勢価格より高価となる場合も多い。結果、開業に必要な資金は、加盟料等を加味すると独自に起業する場合よりも多く必要になる場合がほとんどである。

販売・飲食業であれば、材料の仕入れを本部から行う場合も多く、割高となりがちである。例えば、同業種にあたるコーヒー店がフランチャイジー化した場合、それまでベーカリー部門を持つ地元業者から仕入れていたサンドウィッチ等を、地域性に即した、利益率の高いメニューだとしても、提供できなくなる。この他にも、賞味期限が迫った商品を独自判断で値下げして廃棄を防ぐという方法が禁止される等、流通や事業展開において少なからず制約が発生し、オーナーのオリジナリティを発揮することは難しい。 また、そういった本部によるマーケティング、立地条件、経営方針等に問題があったとしても、そのリスクをフランチャイジー側が負うことになる。契約内容にも拠るが、原則として赤字状態であってもロイヤルティーは払い続けなければいけない。

上記理由により、フランチャイジーの出店したフランチャイズ・チェーンはフランチャイザーによるレギュラー・チェーンよりも圧倒的に低い収益性となる。具体例としては、ダイエーグループ傘下時代のウエンコ・ジャパンが挙げられる。この会社は「ウェンディーズ」のフランチャイジーであると同時に、同業である「ドムドム」のフランチャイザーでもあった。フランチャイジー契約には出店目標が設定されており、これを達成するために「ドムドム」を閉店し、同じ場所に「ウェンディーズ」を開店するといったことも行われたが、フランチャイザーとフランチャイジーの収益性の違いのため、店舗の経営は悪化した(ウェンディーズも参照のこと)。現在、ダイエーグループは「ウェンディーズ」は手放したが、「ドムドム」は保有したままである。

問題点

FC展開の特性が生む欠点以外に指摘されているのは、フランチャイザー側が「経営の安定性」「高収入」「低リスク」を前面に出し、慎重なマーケティングや充分な加盟希望者へのリスク説明が適切に行っていない点である。そのため、大きな負債を抱えて廃業するフランチャイズ経営者も少なからず出てきている。

一方、フランチャイジーが事業に関する十分な知識を身に付けないままで開業していることも原因とされる。「フランチャイザーは事業成功の見込みが乏しいと分かっていながら、そのことを告げずにフランチャイズ契約を締結したため、フランチャイジーが見込んでいた収益が得られなかった」として、損害賠償を求めるFC店舗経営者も増えている。しかしながら、開業後、フランチャイザーによる予測範囲内の売上を継続しているにもかかわらず、「思ったよりも儲からない」「諸経費を引けば赤字である」と不満を訴えた末に損害賠償を求めた訴訟事例もある。これは、フランチャイジー側の認識不足にその原因を見つけられる。

現在の日本にはフランチャイジーを保護する特別な法律はなく、また、判例上は事業者間の契約であるされるため、民法や商法のみに従った判断がなされることが多い。結果、契約そのものはフランチャイザーに有利な傾向が多いので、フランチャイジーには不利な結果となることが多い。

こういった状況から、店舗経営やフランチャイズ展開について充分なノウハウを持たずに認識の甘い個人経営者を標的としたフランチャイザー、あるいは加盟金を騙し取ることを目的とした詐欺行為も出てきている。

関連項目

外部リンク