ゼフィルス
ミドリシジミ族 Theclini | ||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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ゼフィルス(Zephyrus)は、樹上性のシジミチョウの一群であり、日本には25種が生息する。
概要
分類学のレベルが低かった時代に、樹上性のシジミチョウの仲間を総括して Zephyrus と呼んでいたのが始まりで、語源はギリシャ神話の西風の神ゼピュロス。
このゼフィルスに属するシジミチョウの雄は、木の枝の先端などで縄張りを張り、同種のチョウの雄が進入して来ると追いかけて縄張りから排除する習性を持つ。一般に翅が縦に長く、森林性が強い。ほとんどの種がブナ科植物を食べ、卵で越冬する。成虫は6月から9月の間に発生し、年一化。
種
日本産ゼフィルス25種
日本産ゼフィルスは以下の25種であるが、広義的にミドリシジミ亜科の他種を含めてゼフィルスと呼ぶ場合もある。
- ウラゴマダラシジミ Artopoetes pryeri
- ウラキンシジミ Ussuriana stygiana
- チョウセンアカシジミ Coreana raphaelis
- ムモンアカシジミ Shirozua jonasi
- アカシジミ Japonica lutea
- キタアカシジミ J. onoi
- ウラナミアカシジミ J. saepestriata
- オナガシジミ Araragi enthea
- ミズイロオナガシジミ Antigius attilia
- ウスイロオナガシジミ A. butleri
- ウラミスジシジミ(ダイセンシジミ) Wagimo sigunatus
- ウラクロシジミ Iratume orsedice
- ミドリシジミ Neozephyrus japonicus
- メスアカミドリシジミ Chrysozephyrus smaragdinus
- アイノミドリシジミ C. brillantinus
- ヒサマツミドリシジミ C. hisamatsusanus
- キリシマミドリシジミ Thermozephyrus(Chrysozephyrus) ataxus
- フジミドリシジミ Shibataniozephyrus fujisanus
- ウラジロミドリシジミ Favonius saphirinus
- オオミドリシジミ F. orientalis
- クロミドリシジミ F. yuasai
- エゾミドリシジミ F. jezoensis
- ハヤシミドリシジミ F. ultramarinus
- ジョウザンミドリシジミ F. taxila
- ヒロオビミドリシジミ F. latifasciatus
生態的な例外
ゼフィルスのほとんどの種は上記「概要」の項に記述した通りの生態・形態であるが、例外も多い。以下の種はブナ科植物を食べない。
- ウラキンシジミ : モクセイ科のトネリコ。
- オナガシジミ : クルミ科のオニグルミ。
- チョウセンアカシジミ : モクセイ科のトネリコ。
- ムモンアカシジミ : ブナ科のナラ類を食べるが、アブラムシおよびその蜜を食べる半肉食性。
- ミドリシジミ : カバノキ科のハンノキ。
- メスアカミドリシジミ : バラ科のサクラ。
ブナ科を食べるゼフィルスのなかでも、コナラ属を好む種、ブナ属を好む種などがある。ハヤシミドリシジミはカシワ類しか食べない。
ゼフィルスの3群
ゼフィルスはおもに3群に分けられる。
- 1群 : ウラキンシジミ、ウラゴマダラシジミ、チョウセンアカシジミ、ムモンアカシジミ
- 2群 : アカシジミ、オナガシジミ、ダイセンシジミ、ミズイロオナガシジミ
- 3群 : ウラクロシジミ、オオミドリシジミ、キリシマミドリシジミ、フジミドリシジミ、ミドリシジミ、メスアカミドリシジミ
これは進化の度合いを表しており、1群が低く、3群が高いとされる。オス・メスによる形態の差が著しいものが進化レベルが高いとみなされる。
ギャラリー
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ウラナミアカシジミ
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ミズイロオナガシジミ
関連項目
参考文献
- 猪又敏男編・解説、松本克臣写真 『蝶』 山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年、ISBN 4-635-06062-4。
- 小岩屋敏 著、藤田宏編 編『世界のゼフィルス大図鑑』上田恭一郎監修、むし社〈月刊むし・昆虫大図鑑シリーズ〉、2007年。ISBN 9784943955054。