シーラ・ジョーダン

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シーラ・ジョーダン
Sheila Jordan
シーラ・ジョーダン
基本情報
出生名 Sheila Jeanette Dawson
生誕 (1928-11-18) 1928年11月18日(95歳)
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ミシガン州デトロイト
ジャンル ジャズフリー・ジャズ
職業 ミュージシャン歌手ソングライター
担当楽器 ボーカルピアノ
レーベル ブルーノート・レコードスティープルチェイスハイノートECMイースト・ウィンドPalo AltoミューズJustin Time
共同作業者 スティーヴ・キューンジョルジュ・グルンツハーヴィー・Sキャメロン・ブラウンカーラ・ブレイスティーヴ・スワロウ

シーラ・ジョーダン[注 1]Sheila Jordan1928年11月18日 - )は、アメリカ出身の歌手音楽家アップライトベースを唯一の伴奏として使用し[1]ビバップスキャットジャズの歌唱スタイルを開拓した。

スコット・ヤナウは、彼女を「あらゆるジャズ・シンガーの中で最も一貫して創造的な人物」と評し[2]チャーリー・パーカーは、彼女を「百万ドルの耳を持つ歌手」として紹介した[1]

略歴[編集]

生い立ち[編集]

1928年11月18日ミシガン州デトロイトで生まれる。母親はアルコール依存症で、虐待的な夫と結婚していた[1]。母親がまだ17歳だったため、ペンシルベニア州に住む祖父母のもとで育ち、15歳(13歳[1]や14歳[3]説もあり)のときにデトロイトの母親のもとに戻った[4]。彼女はデトロイトのジャズ・クラブで歌い、ピアノを弾いた。

1951年、彼女はニューヨークに移り、レニー・トリスターノチャールズ・ミンガスらとハーモニー音楽理論を学ぶ一方、彼女はチャーリー・パーカーを「師」と仰ぎ、パーカーの音楽を熱心に研究した[5]1952年、パーカーのバンドでピアノを演奏していたデューク・ジョーダンと結婚[6]1955年には娘のトレーシーが生まれた[3]

彼女とパーカーは、1955年にパーカーが亡くなるまで友人としての関係が続き[5]、彼女はパーカーを「兄のよう」[4]な存在として慕った。

1960年代[編集]

ニューヨークへ移ったあと、彼女は広告代理店でタイピストとして働く[1]傍ら、グリニッジビレッジのクラブで、ピアニストのハービー・ニコルスとライブを行った[7]ほか、ニューヨークのバーやクラブに出演。長年にわたり仕事を共にすることになる盟友スティーヴ・キューンとの関係も、1960年代初頭に始まった[8]

1962年、彼女はジョージ・ラッセルのアルバム『The Outer View』(リバーサイド・レコード)収録の楽曲「You Are My Sunshine」の録音に参加[9]。同年、初のリーダー作『ポートレイト・オブ・シェイラ』をブルーノート・レコードから発表[1]。彼女はまた、ドン・ヘックマンリー・コニッツラズウェル・ラッドらと共演した[6]

私生活では、夫デュークの薬物使用量が増加[1]し、1962年に離婚。娘を育てるため、以後20年間フルタイムで働いた。音楽に専念できるようになるのは58歳を迎えてから[4]のことだった。

1970年代以降[編集]

シーラ・ジョーダン(1985年)

1974年、彼女はニューヨーク市立大学シティカレッジアーティスト・イン・レジデンスを務め、1978年から2005年までのあいだ教鞭をとった。2006年、マンハッタン・キャバレー・クラブ(MAC)の生涯功労賞を受賞し、音楽の非常勤教授として28年目を迎えた[10]。彼女は、マサチューセッツ大学アマースト校バーモントジャズセンター、InterplayJazz and Artsおよび国際的なワークショップで音楽を教えている[6][11]

1975年に、彼女はイースト・ウィンド・レーベルからアルバム『コンファメーション』を発表。翌年、彼女はベース奏者のアリルド・アンデルセンとアルバムを制作、スティープルチェイス・レーベルから発表された。1979年、彼女はスティーヴ・キューン、ハーヴィー・Sボブ・モーゼスとともにカルテットを結成。1980年代には、ハーヴィー・Sとデュオを組み活動。いくつかのアルバムを発表した。1987年まで彼女は広告代理店で働き、1989年にアルバム『ロスト・アンド・ファウンド』を録音した。

2012年、彼女はNEAジャズ・マスターズを受賞[12]

2014年、歌手兼教育者のエレン・ジョンソンによって書かれた彼女の伝記『Jazz Child: A Portrait of Sheila Jordan』が出版された[13]

ディスコグラフィ[編集]

リーダー・アルバム[編集]

  • 『ポートレイト・オブ・シェイラ』 - Portrait of Sheila (1962年、Blue Note)
  • 『コンファメーション』 - Confirmation (1975年、East Wind)
  • Sheila (1977年、Grapevine)
  • 『シーラ』 - Sheila (1978年、SteepleChase) ※with アリルド・アンデルセン
  • Blown Bone (1979年、Philips)
  • Playground (1980年、ECM)
  • 『オールド・タイム・フィーリング』 - Old Time Feeling (1983年、Palo Alto) ※with ハーヴィー・シュワルツ
  • 『ザ・クロッシング』 - The Crossing (1984年、BlackHawk)
  • 『ボディ・アンド・ソウル』 - Body and Soul (1987年、CBS/Sony)
  • 『ロスト・アンド・ファウンド』 - Lost and Found (1990年、Muse)
  • 『ソングス・フロム・ウィズイン』 - Songs from Within (1993年、MA)
  • One for Junior (1993年、Muse)
  • Heart Strings (1994年、Muse)
  • Jazz Child (1999年、HighNote)
  • Sheila's Back in Town (1999年、Splasc(h))
  • 『ザ・ベリー・ソート・オブ・トゥー』 - The Very Thought of Two (2000年、MA) ※with ハーヴィー・シュワルツ
  • Little Song (2003年、HighNote)
  • Celebration (2005年、HighNote)
  • Straight Ahead (2005年、Splasc(h))
  • 『ウィンター・サンシャイン』 - Winter Sunshine (2008年、Justin Time)

参加アルバム[編集]

カーラ・ブレイ

キャメロン・ブラウン

  • Here and How! (1997年、OmniTone)

ジェーン・バネット

  • The Water Is Wide (1993年)

ジョルジュ・グルンツ

  • 『シアター』 - Theatre (1983年、ECM)

ボブ・モーゼス

  • When Elephants Dream of Music (1982年、Rykodisc)

ラズウェル・ラッド

  • Flexible Flyer (1974年、Arista/Freedom)

スティーヴ・スワロウ

  • 『ホーム』 - Home (1980年、ECM)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ シェイラ・ジョーダン」の表記もある。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g Latimer, Charles L.. “Bebop and Beyond: Sheila Jordan Speaks”. Detroit Music History. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年8月3日閲覧。
  2. ^ Yanow, Scott. “Sheila Jordan”. Artist Biography. AllMusic. 2013年8月3日閲覧。 “One of the most consistently creative of all jazz singers, Sheila Jordan has a relatively small voice, but has done the maximum with her instrument.”
  3. ^ a b Dagan, Ori (2009年1月28日). “Joy and Justice: the Jazz Journey of Sheila Jordan”. TheWholeNote. 2013年8月3日閲覧。
  4. ^ a b c Vitro, Roseanna (2012年11月29日). “Sheila Jordan: Vocal Shaman”. JazzTimes. 2013年8月3日閲覧。
  5. ^ a b Billy Taylor's Jazz at the Kennedy Center”. Sheila Jordan. National Public Radio. 2013年8月3日閲覧。
  6. ^ a b c Lifetime Honors”. Biography. National Endowment for the Arts (2012年). 2013年8月3日閲覧。
  7. ^ Spellman, A.B. (1985). Four Lives in the Bebop Business (1st Limelight ed.). New York: Limelight Editions. p. 156. ISBN 0-87910-042-7 
  8. ^ Reney, Tom (2012年4月27日). “Sheila Jordan and Steve Kuhn”. New England Public Radio. 2012年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年8月3日閲覧。
  9. ^ Witherden, Barry (1987年5月). “A Singer in the Mirror”. The Wire: p. 16 
  10. ^ Jazz Great & Ccny Music Professor Sheila Jordan Wins MAC Lifetime Achievement Award”. Tribeca Performing Arts Center: The City College of New York (2006年4月10日). 2006年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年8月3日閲覧。
  11. ^ Feather, Leonard (1989年2月23日). “Sheila Jordan's Slow Rise to Recognition”. Los Angeles Times. http://articles.latimes.com/1989-02-23/entertainment/ca-452_1_sheila-jordan 2013年8月3日閲覧。 
  12. ^ Lifetime Honors”. National Endowment for the Arts Jazz Masters. National Endowment for the Arts (2012年). 2010年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年8月2日閲覧。
  13. ^ Johnson, Ellen (2014年9月). “ISBN 978-)-8108-8836-4”. Rowman and Littlefield. 2019年9月1日閲覧。

外部リンク[編集]