ウォシュレット

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初代ウォシュレット
TOTOウォシュレット(ユニットバス用モデル)
ウォシュレットのボタン
38個ものボタンがあるウォシュレット操作パネル

ウォシュレットとはTOTOが販売する温水洗浄便座及び商品名である。

1980年6月に発売以来、2011年1月には累計販売台数が3000万台を突破した。温水洗浄便座では高いシェアを誇り、INAX(同社の名称はシャワートイレ)や他社製の同種類のものも含め「ウォシュレット」と呼ばれるほど定着しているが、ウォシュレットの名称はTOTOの登録商標(日本第1665963号など)である。

概要

TOTOは1960年代に米国からの輸入によって温水洗浄便座(ウォッシュエアシート)の販売を行っていた。主に病院向けに医療用や福祉施設用に導入されていたものである。1969年にはこれを国産化したが当時は販売価格も高く、なおかつ温水の温度が安定しないために火傷を負う利用者もいた。

TOTOは独自に研究開発を進め清潔好きな土壌を持つ日本での普及が見込めることなどから、1980年に2機種の設定によって発売を開始した。特に肛門位置などの数値データは存在していなかったので社員などの協力を得てデータを収集し、噴出位置を設計するという工夫をこらした。

温水貯蔵式でおしり洗浄のほか乾燥と「ウォームレット」の機能である暖房便座機能を持つ「Gシリーズ」(Gはゴージャスの意)と水を瞬間式で温水にしおしり洗浄と暖房便座機能に絞った「Sシリーズ」(Sはスタンダードの意)の2種類があり、以後現在まで基本モデルはこの2種類でこれにコンパクトシリーズが1993年以降追加されるようになった。また、便器の大きさによってレギュラー(標準)サイズとエロンゲート(大型)が用意されている。

1982年には当時話題のタレント・戸川純を起用したCMでコピーライター仲畑貴志による「おしりだって洗ってほしい」のキャッチコピー(第2弾コピーは「人の、おしりを洗いたい」)、そしてその独特のCM中の歌によって一気に知名度を高めた。CMについては初回の放映時間がゴールデンタイムであったことより視聴者から「今は食事の時間だ。飯を食っている時に便所の宣伝とは何だ!」などとクレームが入り[1]おしりという言葉を使用したことなどについても批判されたがそれを乗り越えるだけのインパクトがあった。

以後、すべてのラインナップで着座センサーを導入した(それまでは着座していなくても温水が噴出した)。ふたの自動開閉や便器洗浄、さらには消臭脱臭芳香の機能の搭載にも成功した。ウォシュレットを装備した一体形便器(商品名「ネオレスト」「Zシリーズ」など)の登場、また住宅用に限らず公共施設やオフィス、ホテル用のラインナップも整備された。

抗菌・防汚にも配慮がなされノズル部分は肛門から跳ね返ってきた温水が周囲に掛からないような角度(43度、ビデは53度)に設定されており、格納時やおしり洗浄前にノズルを温水で洗浄する機能も付属している。また、おしり洗浄とビデ洗浄では吐水する配管も変えられている。他にも省エネルギーにも配慮して節電機能を設けたほか、操作部も一部機種では壁付けの別体リモコンの採用で使いやすくするなどの改良が加えられている。また2005年10月には音楽のMP3再生機能が備わったウォシュレットが発売されるなど、多機能化が進んでいる。このようなトイレの多機能化は日本独特のものであり日本の水の安全性の高さや日本の水は軟水であるためなどの理由で世界的にはこのような便座はまだ普及しているとはいえない。歌手のマドンナが2005年に来日した時、「日本の暖かい便座が懐かしかった」とコメントしている。2006年10月現在、中国・香港・台湾・韓国・ベトナム・シンガポール・インド・ドバイなどの中東地域・アメリカ・カナダで販売されている。

また、変わったところでは1996年に和式便器用の機種も発売されている。しかし、和式では使用しにくいことや一般家庭が洋式への移行が進んだことから普及せずに生産が終わった。一方で、旅行先などで使用できる携帯タイプは現在も発売されている。

1998年には累計販売台数1000万台を突破したがこの頃から多くの便器で装備するようになり、以後7年で倍の2000万台に達した。他社製品も含めれば普及率は6割程度まで伸び、新規に建設されるオフィスビルでも標準的に取り付けられるようになっている。

工業デザイナーの坂本鐵司(当時TOTOウォシュレット開発メンバー幹部であり、静岡文化芸術大学教授)の講演会や講義で、普及までの苦労や研究開発等の経緯の一端を聞く事ができる。

またウォームレットとウォシュレットでは説明書や便座の開閉ふたに便座や乾燥使用中は火傷に注意するように記載されておりお年寄りや小さい子供がいる家庭では電源を切ったり、温度を低くするなどの対策をするように呼びかけている。一部機種では清掃時の利便性を向上するために便座ごと外れる機能が搭載されているものもある。

歴史

  • 1964年 - 東洋陶器(現・TOTO)が、米国から温水洗浄便座「ウォッシュエアシート」を輸入、販売を開始
  • 1969年 - 「ウォッシュエアシート」を国産化
  • 1980年
    • 2月 - 商標「ウォシュレット」を商標登録出願する
    • 6月 - 初代ウォシュレット(G、S)を発売
  • 1982年 - 「おしりだって洗ってほしい」のキャッチコピーを使ったCMが話題に
  • 1983年
    • 7月 - ウォシュレットGII、SIIを発売 セルフクリーニング(ノズル洗浄)機能(GII)、水量調節(SII)
    • 11月 - ビデ機能追加(ウォシュレットGII)
  • 1984年3月 - 商標「ウォシュレット」が登録となる
  • 1985年4月 - ウォシュレットGIII、SIIIを発売 カラーバリエーションの追加、乾燥機能の追加(SIII)
  • 1987年11月 - ウォシュレットQueen(ウォシュレット一体型便器)、ホテル向け商品を発売
  • 1988年9月 - ウォシュレットGXI・II、SXI・IIを発売 ビデ標準装備(Sシリーズ)、消臭機能、着座センサー、便座ソフト閉止、リモコンなどを追加(Gシリーズ)
  • 1991年
    • 6月 - ウォシュレット(パブリック、オフィス向け)を発売
    • 12月 - ウォシュレット一体型便器ZGシリーズ(初代)を発売 オゾン脱臭を初搭載
  • 1992年2月 - ウォシュレットGαI・II、SαI・IIを発売 オゾン脱臭(Gシリーズ)、ムーブ機能・着座センサーを追加(Sシリーズ)
  • 1993年
    • 3月 - コンパクトシリーズとして、ウォシュレットCαI・IIを発売
    • 4月 - タンクレス便器・ネオレストを発売、ウォシュレットも装備
  • 1994年2月 - ZG(初代)に防露便器(結露を防ぐための断熱層を設けた便器)搭載機種追加、ZS(初代)発売
  • 1995年3月 - ウォシュレットGN・I・II、SI・II・IIIを発売 ワンタッチ脱着など清掃機能の充実
  • 1996年
    • 7月 - 和式便器用ウォシュレットWを発売
    • 9月 - ウォシュレット一体型便器ZG・ZS(2代目)発売
  • 1997年11月 - ウォシュレットGA・Bを発売 やわらか洗浄を追加
  • 1998年
    • 1月 - ウォシュレットSA・B・Cを発売 便座の座面を拡大
    • 5月 - ウォシュレットSSを発売 袖部分がなくなる。リモコンなしのウォシュレットGPも追加
    • 7月 - 累計販売台数1000万台を突破
  • 1999年10月 - ウォシュレットアプリコットC1・2・3を発売 ワンダーウェーブ洗浄を導入、節水を実現
    ウォシュレットアプリコットシリーズ(現行モデル)
  • 2000年
    • 8月 - ウォシュレット一体型便器ZG・ZS(3代目)を発売
    • 9月 - ウォシュレットアプリコットC4を発売 室内暖房機能を装備
  • 2001年11月 - ウォシュレットSA・B・Cをモデルチェンジ、節電機能を装備
  • 2002年7月 - ウォシュレット一体型便器ネオレストEXを発売 - 便器部にフチなしトルネード洗浄を装備
  • 2003年
    • 2月 - ウォシュレット一体型便器ネオレストSDを発売
    • 7月 - ウォシュレットアプリコットN1・N2・N3・N4を発売 便ふた自動開閉、自動便器洗浄機能を搭載
  • 2004年2月 - ウォシュレットS2・S1発売(これにより従来のSAは製造停止)
  • 2005年
    • 2月 - NEWネオレストシリーズを発売 上位機種に音楽機能、芳香機能を搭載
    • 4月 - ウォシュレット一体型便器Zシリーズを発売
    • 6月 - 累計販売台数2000万台を突破
  • 2006年
    • 2月 - ウォシュレットSB・SCをモデルチェンジ
    • 8月 - ネオレストシリーズをモデルチェンジ、A・X・Dの3シリーズ、洗浄水量を大6L・小5Lに変更
    • 11月 - ウォシュレット一体型便器Zシリーズを仕様変更、洗浄水量を大6L・小5Lに
  • 2007年
    • 2月 - アプリコットシリーズをフルモデルチェンジ。デザインを一新し、清掃性を改善。「Nシリーズ」から「Fシリーズ」に
    • 5月 - 創業90周年、東陶機器株式会社は「TOTO株式会社」に社名を変更
    • 8月1日 - 「ハイブリッドエコロジーシステム」を搭載したネオレストハイブリッドAHを発売
  • 2009年
    • 3月31日 - Gシリーズの製造が停止される[2]
    • 8月3日 - ネオレストハイブリッドシリーズをマイナーチェンジ、新たにRHタイプを追加[3]
  • 2011年
    • 1月 - 累計販売台数3000万台を突破

現在の製造機種

シートタイプ

  • ウォシュレットアプリコット(瞬間式)
    • グレード
      • F1A・F2A・F3A・F3AW(オート便器洗浄・リモコン便器洗浄機能付き)
      • F1・F2・F3・F3W(オート便器洗浄・リモコン便器洗浄機能なし)(F4系・F5系は2012年1月末で製造停止。これによってシートタイプから音楽再生機能付リモコンは消滅した。)

‐ワンダーウェーブ洗浄を売りに現行品は2012年2月に発売。初代(1999年発売)はCαの後継品であったが2代目のN(2003年発売)からはシートタイプの上級機種(N1を除く)として2007年発売のFに至る。先代のFは途中、マイナーチェンジを2回行っており2009年発売品は断熱材を入れたダブル保温便座を採用。2011年2月発売品には電解除菌水ノズル洗浄を追加して2012年2月に新型にモデルチェンジを行った。N以降の製品からバリアフリー(リモコン)仕様も発売され、多目的トイレなどを中心に採用されている。なお2012年1月まではレギュラーサイズも用意されていた(現行品は大形・普通共用便座。2004年下期発売のN以降も大形サイズは共用便座になった)。

  • ウォシュレットS2・S1(貯湯式)
    • グレード
      • S2A・S1A(リモコン便器洗浄機能付き)
      • S2・S1(リモコン便器洗浄機能なし) -現在の製品は2010年発売の2代目で初代は2004年に発売された。量販店用で採用された大形・普通共用便座(便座サイズは大形。現行品は若干小さくなった。)を一般商品としては初採用された。アプリコット同様バリアフリー(リモコン)仕様も初代から発売されている。

また途中からデザイン便器専用(エバジオン・ロマンシア・デリシアシリーズ)の商品を発売した。ただしGシリーズで発売された製品と異なり若干形状が異なる。 なおデザイン便器用は初代のタイプを継続販売されている。

  • ウォシュレットSB(貯湯式)

 グレード SB  -初代Sシリーズからの系譜を受け継いでいる本体スィッチ式。現行品は脱臭付でデザインはS2・S1と共通。かつては温風乾燥付の製品や脱臭無しの製品も発売されていた。

  • ウォシュレットG(2009年3月限りで製造停止。後継品はアプリコット)
    • グレード GA・GB・GP(GPのみ本体スィッチ式、他はリモコン式)
  • ウォシュレットAR - ミドルシルエット便器(2005年10月発売)専用(機能はアプリコットNとほぼ共通。2009年頃製造停止)
  • ウォシュレットP(パブリック・オフィス向け) - 過去に男性用と女性用があった。現在は男女兼用。男性用はおしり洗浄と脱臭機能、女性用はこれにビデと擬音装置(商品名「音姫」)が追加される。またPのモデルチェンジの2011年2月からはリモコンタイプのPSが追加された。デザインはそれぞれウォシュレットS1・S2・SBに準じる。Pと違い、オート洗浄タイプ (PSA) も用意されている。
  • ホテル用ウォシュレット - ホテル全体の給湯設備から温水の供給を受ける。洗浄機能のみの場合は電装がノズル駆動部分のみとなるため、バッテリ駆動が可能。
  • トラベルウォシュレット・プチウォシュレット - 携帯用のウォシュレット。プチウォシュレットは女性用
  • 量販店向け製品 - 量販店で販売し取り付けはユーザーが自ら出来るよう、工具や接続用フレキホースを添付。賃貸住宅などでの設置にも対応する。なお上記の一般商品は総合カタログに掲載されるが、これら量販店用は掲載されない。また、専用カタログも別個に用意されている。
    • KNシリーズ(形状はアプリコットFの2009年発売品に類似するが機能が若干異なる。)
    • KVシリーズ(形状はアプリコットNと共通。かつてはアプリコットの量販店向け製品も発売されていた。)
    • KSシリーズ
    • K・KHシリーズ(形状はSBと共通で機能が異なる。)

ウォシュレット一体型便器

ウォシュレット一体型の便器。従来は機能部の老朽化による取り替え時には便器も含めた取り替えが必要であったが、機能部のみの取り替えも可能になった。●印の機種はフチなし形状・トルネード洗浄を採用している。

●ネオレストD(旧SD)
D1・2の2機種。ローシルエット(タンクレス)・シーケンシャルバルブ洗浄を採用(ネオレスト全機種に共通)。
●ネオレストA
A1・2・3の3機種。ネオレストDの上位機種。A2以上の機種は室内暖房・オートフレグランス、A3はワイヤレスリモコンに音楽再生機能を搭載。2009年10月いっぱいで製造停止。
●ネオレストX(旧EX)
X1・2・3の3機種。ネオレストシリーズの最上位機種。全機種でオートフレグランスを搭載、X2以上の機種は室内暖房、X3はワイヤレスリモコンに音楽再生機能を搭載。
ネオレストハイブリットAH
ネオレストAシリーズをベースに水道直圧式(ボール内洗浄用)に小型タンク(ゼット穴洗浄用)を組み合わせ新開発のポンプで加圧して低水圧でも対応可能にし、更に洗浄水量を大3.8L・小3.3L(2012年2月までは大4.8L・小4L、2009年8月までは大5.5L・小4.5L)に引き下げた「ハイブリッドエコロジーシステム」を搭載した機種。AH1・2Wの2機種。AH2 (AH2W) 以上の機種は室内暖房・オートフレグランス、AH3はワイヤレスリモコンに音楽再生機能を搭載。2007年8月1日から発売開始。
なお、AH3は2012年1月いっぱいで製造停止。
●ネオレストハイブリッドRH
ネオレストハイブリッドAHシリーズをベースに丸みを帯びた形状とし、2009年2月モデル以降のアプリコットと同様に便座の蓋を断熱仕様としている。更に機能を絞って定価を20万円台とした機種を追加した。RH1以上のモデルは基本的にAHと同じ機能。RH0・1・2Wの3機種。2009年8月3日から発売開始。
こちらも、AHと同じくRH3は2012年1月いっぱいで製造停止。
●レストパルDX
住宅用システムトイレ。当時のネオレストSDに準じたシーケンシャルバルブ洗浄を採用。2007年1月31日をもって製造停止。
●レストパルSX
住宅用システムトイレ。タンク式洗浄。ウォシュレットシートタイプのはアプリコットFシリーズを使用する。2006年12月から洗浄水量を大6L・小5Lに改良している。
●NEW Zシリーズ
ハイシルエット(タンク付)、基本機能はネオレストD・Aや2004年発売のS1・S2に準じる。2005年4月発売。2006年11月から洗浄水量を大6L・小5Lに改良している。
2010年8月ごろ製造停止、後継はGG、GG-800
NEW ZKシリーズ
2006年2月発売。ウォシュレット一体型便器の廉価機種。大6L・小5L洗浄には対応していない。
2011年3月いっぱいで製造停止、また、これが廃盤して、ウォシュレット一体便器は全てフチなしトイレになった。このため、住宅用従来型洗浄タイプの便器はCS20ABとCS670のみとなった。
ウォシュレット一体形取替機能部
旧型ウォシュレット一体型便器機能部の取り替えに対応(2005年8月29日発売)。
●GGシリーズ
Zシリーズの後継機種、GGは2010年4月発売、派生機種のGG-800は2010年8月発売。基本機能はGG1・2はウォシュレットS1A・S2Aに準じ、GG3はS2Aにオート開閉とオート小洗浄がプラスされる。派生機種としてGG-800もあり、GGとの違いは、ローシルエット(タンク式)ではなく、手洗い付きのタンク式であること。
●パブリックウォシュレット一体形便器
2011年2月にPSAと同時に追加され、INAXのセンサー大便器の対抗品である。デザインはGGシリーズに準じる。なお、INAXのセンサー大便器とは違い、ウォームレット(暖房便座)タイプは用意されていない。価格は対抗のセンサー大便器と比べ、10万程度安い。

ネオレストシリーズは2006年8月10日にモデルチェンジし新たにA typeを追加、SDはD type、EXはX typeにそれぞれ改称。同時に洗浄水量を大6リットル・小5リットルに改良した。

なお、競合他社製品については温水洗浄便座#各社の温水洗浄便座を参照。

普及率

1980年に発売され、18年後の1998年に国内・海外市場合わせて1000万台突破。その7年後の2005年に2000万台突破。さらに2011年には3000万台突破。なお、ウォシュレットに限らず国内温水洗浄便座市場全体での家庭での普及率は71.6%(2010年3月内閣府調べ)。

脚注

  1. ^ 2002年9月17日放送 NHKプロジェクトX〜挑戦者たち〜』第97回「革命トイレ・市場を制す」
  2. ^ TOTO住宅向け商品総合カタログ 704ページ
  3. ^ TOTOニュースリリース 2009年6月23日

関連項目

外部リンク