おこわ
解説
元々は女房詞であり、強飯(こわめし)ともいう。
強飯とはこわい(堅い)飯のことで、かつてはうるち米を蒸したものをそう呼んだ。中世から近世にかけて米を炊くことが一般化していくと、主にもち米を蒸したものを「こわいい」、「おこわ」と呼ぶようになった。炊き上げたご飯に対し、独特のもちもちとした食感と甘味がある。
赤飯もおこわに含まれ、狭義では赤飯のことを指す。
昔はもち米は貴重品であり、もち米を蒸したおこわは慶事や祭り、正月など晴れの日しか口にすることができない祝いの席のご馳走であった。また、肉類を含まないものは、精進料理として僧侶に好まれた。
味付けはもち米のほのかな甘味を壊さないために、あっさりしたものが好まれる。調味料は醤油、味醂、酒などが風味付けに用いられる程度である。具は栗、きのこ類や山菜、筍、鶏肉、白身魚など淡泊なものが好まれる。また、何の味付けもせずに炊き上げたものを白蒸しと呼ぶ。
本格的なものでは蒸籠や蒸し器を使って蒸して拵えるが、家庭では炊飯器や餅つき器、または電子レンジや圧力鍋で作ることも可能である。
材料は糅飯(かてめし)に似るが、おこわはハレの日の祝いご飯であり、対義語にあたる。
北陸では「御霊」(みたま)という、小豆で炊いた御赤飯のかわりに黒豆でもち米で炊いたおこわが通夜や法要、上棟式で用意される。上棟式では赤飯の小豆が火に通じるとされ、白米で作るみたまを振る舞う習慣がある。
主な作り方
ここでは炊飯器を使った家庭向けの方法(一例)を記載する。
- もち米は炊く前に洗い、ざるに揚げておいて水気を切る。
- 一緒に入れる具の下ごしらえを行う。それと同時に炊き込みに使うだし汁を作る。
- もち米とだし汁を内釜に入れて、その上に調味料を回し、具材を載せる。
- 炊きあがったらしゃもじを使って、よく混ぜながら水分を飛ばしてできあがり。
おこわのバリエーション
- 赤飯(小豆や大角豆を入れたおこわ。祝いの席のごちそうとして知られる)
- 栗おこわ(甘く味付けした栗を入れる)
- 山菜おこわ
- 鯛おこわ(鯛めしともいう)
- きのこおこわ
- 鰻おこわ
- 鶏おこわ
- 五目おこわ
- 梅おこわ
- しらむし
- 小籠飯(中国おこわ。海老、椎茸、貝柱、中国ソーセージ等を入れる)
- クロラン(カンボジアおこわ。もち米にあずき・ココナッツミルクを混ぜ竹筒で炊いたもの)
など。
そのほか、鮭、じゃこ、松茸、筍など旬のものが好まれる傾向がある。
また、コンビニエンスストアなどではおこわをそのまま“おにぎり”とした商品が販売されているところもある。