Wish (ECサイト)

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Wish.com
ウィッシュ・ドットコム
URL www.wish.com
種類 EコマースD2C
言語 多言語
設立 2010年7月4日 (13年前) (2010-07-04)
本社所在地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国サンフランシスコ
事業地域 世界各地(越境EC
設立者 ピーター・シュルチェフスキー(Piotr Szulczewski)
シェン・チャン(Sheng Zhang)
主要人物 CEO:ピーター・シュルチェフスキー
業種 Eマーケットプレイス
収益 増加 21億ドル
従業員数 900名
株主 ContextLogic Inc. (NASDAQ: WISH)
子会社 Wish Outlet
Wish Express
Wish Local for Partner Stores
広告 あり
登録 必要
開始 2011年5月
現在の状態 運営中

Wish(ウィッシュ)は、アメリカ合衆国インターネットショッピング。およびそのプラットフォーム(オンラインマーケットプレイス)の越境ECサイト。ウィッシュはポーランドカナダ人であるピーター・シュルチェフスキー(Piotr Szulczewski)と、前CTOであったダニー・チャン(Danny Zhang)によって2010年、サンフランシスコで設立された。

ウィッシュは、サンフランシスコに拠点を置く「ContextLogic Inc.」によって運営されている。検索バー形式だけに頼らず、顧客ごとに視覚的にショッピング体験をパーソナライズするプラットフォームサービスとなる。売り手はウィッシュに商品を掲載し、消費者に直接販売することが可能である。ウィッシュは決済サービスプロバイダーと連携して決済を行い、商品の仕入れや返品管理は自社では一切行っていない。

歴史[編集]

ウィッシュは、元Googleエンジニアであるシュルチェフスキーによってコンテキストロジック(ContextLogic)というソフトウェア会社としてスタートした。2010年9月、コンテキストロジック170万ドルの投資を受け、YelpCEOであったジェレミー・ストッペルマン(Jeremy Stoppelman)が関与している[1]

2011年5月、シュルチェフスキーは、大学時代の友人であったダニー・チャンを招致し「Wish」として再スタート[1]。企業名であるWishとは「ウィッシュリスト」から取られており、買い物客がお気に入りの商品のウィッシュリストを作成してから、その販売者とマッチングできるようにするアプリケーションとしてプログラミングされた。また、Facebookに広告を掲載することで、クリック報酬型広告による公告収益で運営するビジネスモデルであった[2]

2013年、シュルチェフスキーは、カリフォルニア州メンロパークにあるGGVCapitalの投資家と出会っており、ここで売上の多くがニューヨーク州やカリフォルニア州では無く[1]フロリダ州テキサス州中西部から来ていることを指摘した。この指摘からウィッシュは、クリック型広告収入モデルからWishのアプリに直接製品を販売できる様サイトの運営方式を変更しており、ウィッシュでの売上の一部を手数料収入として受け取るEコマースサイトへと変化を遂げている[3]

2017年には、ウィッシュはアメリカで最もダウンロードされたeコマースアプリケーションとなっている[4]。この年、NBAチームであるロサンゼルス・レイカーズと複数年にわたるパートナーシップに署名しており[5][6]、2018年にはネイマールポール・ポグバなど数々の有名サッカー選手をフィーチャーしたワールドカップキャンペーンを実施している[7]

2018年、ウィッシュは世界中で最もダウンロードされたアプリとなり[8]、同社の収益は2倍の19億ドルに達している。

2019年の時点で、ウィッシュは売上高で米国で3番目に大きなEマーケットプレイスとなり[1]、2019年8月、運営会社であるコンテキストロジックは、プライベート・エクイティ・ファンドであるGeneral Atlanticが主導する資金調達ラウンドで資金提供を受けたことで、同社の評価額は112億ドルとなった[9] 。また、中国の大手Eコマースサイトである京東商城はウィッシュの投資家として名を連ねる[10]。コンテキストロジックは2020年に新規公開株式を行い、ナスダックへの上場を果たしている[11]

サービス[編集]

100万を超えるセラーが直接販売を行うためウィッシュのプラットフォームに製品を掲載している[12][13]。アプリを通じ入手できる商品の大半は中国及びアメリカ以外の国からとなっており[14][10]、商品の大半が軽量な小包であるため、中国郵政アメリカ合衆国郵便公社間で重量が2kg未満の商品に関して送料を下げる合意がとられている[1]。また、ウィッシュでは、配達の速度よりも送料節約を優先する顧客向けに、5日から場合により6〜8日での速達サービスと、2〜3週間程度掛かる通常の発送サービスを提供している[15][8]

諸問題[編集]

ウィッシュは消費者直接取引(D2C)を軸とするため、主要な電子商取引サイトの間で共通の懸念となる、低品質または偽造品を掲載しているとして批判されている[16][17][18]。顧客は、売り手からのコミュニケーションの欠如と品質について多くの不満を持っており、批判に応え、シュルチェフスキーはフェイスブックの幹部を雇い、商品の無料提供や割引と引き換えに約10,000人のウィッシュユーザーコミュニティを組織し、悪質な販売者リストを作成し公開を行っている[1]

購入者の国で違法とされるアイテムをウィッシュ上で購入することが可能であり、2020年1月、イギリスランカシャー州の男性が、ウィッシュを通じスタンガンを購入したとして11か月の懲役刑を言い渡されている[19]

フランスでは2021年11月に、プラットフォームで販売されている多くの商品がヨーロッパの規制に準拠していないとフランス当局が告発したため[20][21]、ウィッシュのウェブサイトやGoogleのよるウィッシュの検索結果などが閲覧不可となり[22]、スマートフォン用アプリはフランスのGoogleアプリストアから排除された。また、プラットフォーム上で模倣品が販売されているとして同様に批判した[23]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f Olson, Parmy (2019年3月13日). “Meet The Billionaire Who Defied Amazon And Built Wish, The World's Most-Downloaded E-Commerce App”. Forbes. 2019年11月5日閲覧。
  2. ^ “Meet Wish, the $3 Billion App That Could Be the Next Walmart”. Recode. https://www.recode.net/2015/12/28/11621724/meet-wish-the-3-billion-app-that-could-be-the-next-walmart 2018年1月24日閲覧。 
  3. ^ Del Ray, Jason (2013年7月12日). “Mobile-Commerce App Wish Says It Knows What Its Users Want to Buy”. Dow Jones & Co.. http://allthingsd.com/20130712/mobile-commerce-app-wish-says-it-knows-what-its-users-want-to-buy/ 2018年6月30日閲覧。 
  4. ^ Wish was most downloaded US shopping app in 2017”. Tamebay (2018年1月17日). 2019年11月5日閲覧。
  5. ^ Melton, James (2017年9月22日). “Wish.com teams up with LA Lakers to put the online marketplace's logo on jerseys”. Digitalcommerce360.com. 2019年11月5日閲覧。
  6. ^ L.A. Lakers Partner Wish Jumps to No. 1 in Earned Social Media Value Among NBA Jersey Patch Sponsors”. Martechseries.com (2019年6月7日). 2019年11月5日閲覧。
  7. ^ Ostrander, Paris (2018年7月13日). “Wish Recruits Howard, Neymar For 'Time On Your Hands' Campaign”. Sports Business Daily. 2019年11月5日閲覧。
  8. ^ a b George-Parkin, Hilary (2019年6月17日). “Wish, the super popular, ultra-cheap shopping app, explained”. Vox.com. 2019年11月5日閲覧。
  9. ^ Wish Valuation Rises to More Than $11 Billion Following Series H Financing Led by General Atlantic”. Bloomberg (2019年8月1日). 2019年11月5日閲覧。
  10. ^ a b Loizos, Connie (2016年3月1日). “The hot e-commerce app Wish has "hundreds of millions of users" (plus other fascinating stats)”. Tech Crunch. 2019年11月5日閲覧。
  11. ^ Farrell, Dave Sebastian and Maureen (2020年12月16日). “Wish Parent ContextLogic Ends Debut Below IPO Price”. The Wall Street Journal. ISSN 0099-9660. https://www.wsj.com/articles/wish-parent-contextlogic-starts-trading-below-ipo-price-11608137585 2021年6月21日閲覧。 
  12. ^ Step-by-Step Guide to Sell on Wish for Beginners (Products, Benefits & Comparison)”. Chinabrands.com (2018年10月27日). 2019年11月5日閲覧。
  13. ^ Olson, Parmy (2018年6月15日). “Wish Founder Revamps 'Culture And Operations' To Tackle Walmart, Amazon”. Forbes.com. 2019年11月5日閲覧。
  14. ^ The Problem With Buying Cheap Stuff Online” (2018年5月22日). 2020年5月26日閲覧。
  15. ^ Everything you need to know about Wish Express”. Cedcommerce.com (2019年9月26日). 2019年11月5日閲覧。
  16. ^ Wish faces criticism over suspected counterfeits”. Digital Commerce 360 (2018年6月17日). 2019年11月5日閲覧。
  17. ^ Semuels, Alana (2018年5月22日). “The Problem With Buying Cheap Stuff Online” (英語). The Atlantic. 2019年11月5日閲覧。
  18. ^ Hays, Kali (2018年4月4日). “Off-White Going After Fakes Being Sold on Wish.com With Lawsuit”. WWD. 2019年11月5日閲覧。
  19. ^ Quaynor, Aban (2020年1月14日). “Man who bought £5 stun gun from wish.com to protect harassed girlfriend jailed”. Lancashire Telegraph. https://www.lancashiretelegraph.co.uk/news/18158786.man-bought-5-stun-gun-wish-com-protect-harassed-girlfriend-jailed/ 
  20. ^ Google pulls the plug on e-commerce giant Wish in France for listing unsafe goods”. Fortune (2021年11月30日). 2022年5月5日閲覧。
  21. ^ France asks search engines and app stores to remove Wish”. Techcrunch (2021年11月24日). 2022年5月5日閲覧。
  22. ^ Government Request Removal Complaint to Google”. Lumen. 2022年5月5日閲覧。
  23. ^ French administration suspects Wish of selling counterfeit products”. Techcrunch (2021年11月30日). 2022年5月5日閲覧。

外部リンク[編集]