71-628

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KTM-28(71-628)
КТМ-28
71-628(タガンログ市電
2021年撮影)
基本情報
製造所 ウスチ=カタフスキー車両製造工場
製造年 2021年 -
投入先 タガンログ市電チェリャビンスク市電サンクトペテルブルク市電リペツク市電マグニトゴルスク市電ヤロスラヴリ市電クラスノヤルスク市電トムスク市電
主要諸元
編成 単車(ボギー車)、片運転台
軌間 1,524 mm
電気方式 直流550 V
架空電車線方式
設計最高速度 75 km/h
車両定員 着席33人
定員116人
最大166人
車両重量 22.0 t
全長 16,500 mm
全幅 2,500 mm
全高 3,700 mm(集電装置含)
床面高さ 低床率100 %
車輪径 620 mm
固定軸距 1,800 mm
主電動機 誘導電動機
主電動機出力 62 kw
出力 248 kw
制御装置 VVVFインバータ制御IGBT素子)
制動装置 ディスクブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4]に基づく。
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71-628は、ロシア連邦の鉄道車両メーカーのウスチ=カタフスキー車両製造工場が製造・展開する路面電車車両。車内全体の床上高さを抑えた超低床電車である[1]

概要[編集]

2021年に試作車が公開された、ウスチ=カタフスキー車両製造工場が展開する路面電車車両。同企業は2010年代以降各都市へ向けて超低床電車(KTM-23KTM-31等)の生産を実施しているが、これらの車両と異なり71-628は車内全体の床上高さを下げ、段差をなくした100 %低床構造を採用している他、床下に台車が設置されている箇所でも最大700 mmの通路幅を確保しており、流動性の向上が図られている。また、台車は1次・2次ばね双方を採用しており、騒音や振動が抑制される[1][2]

車内は冷暖房双方に対応した空調が設けられている他、LEDを用いた車内照明は色を任意に調整可能である。また、製造過程で用いた材料は環境負荷を低減したものが使われている[1][5]

導入都市[編集]

2023年現在、71-628が使用されている、もしくは導入が予定されている都市は以下の通りである[2]

タガンログ[編集]

タガンログ市内を走るタガンログ市電2021年5月に線路や施設の改修に加え、既存の車両の全面置き換えを目的にウスチ=カタフスキー車両製造工場との間に71-628に関する60両分の発注を実施した。2022年の秋季までに全車の納入が完了する予定となっており、そのうち同年導入分の一部については次項で述べる「71-628M」となっている。塗装については事前に住民投票が行われ、その結果選択された赤地に白帯という塗り分けが採用されている[3][6][7]

チェリャビンスク[編集]

71-628の試作車の公開や試運転が実施されたチェリャビンスクの路面電車であるチェリャビンスク市電では当初導入予定は存在しなかったが、2022年に量産車の製造契約が締結された。同年6月から順次チェリャビンスクへの納入が開始されており、合計30両が導入されることになっている[2][8][9]

リペツク[編集]

リペツク市内に存在する路面電車であるリペツク市電には、2023年以降初の超低床電車として71-628(71-628-02)の導入が実施された。これらはモビスタ・リージョンズ・リペツク(Мовиста Регионы Липецк)を介した納入が進められ、2023年内に28両、2024年までに全46両の製造が行われている[4][10][11]

サンクトペテルブルク[編集]

サンクトペテルブルクの路面電車であるサンクトペテルブルク市電には、合計14両の71-628(71-628-02)が導入される事になっている。これらの車両は回生ブレーキを備えた充電システムが搭載され、停電時にも架線から電力を得ずに最大3 kmの自立走行が可能である他、人工知能技術を用いた運転支援・安全対策システム「Cognitive Tram Pilot」が搭載されている。当初は2023年9月から2024年4月にかけて導入が実施される予定であったが、実際は2023年12月までに全車の導入が完了し、営業運転への投入も行われている[12][13]

マグニトゴルスク[編集]

マグニトゴルスク市内に路線網を有するマグニトゴルスク市電には、同路線初の100 %低床構造の車両として、2023年11月に2両の71-628が納入された。以降、2024年末までにこれらの車両を含め合計12両の71-628が導入される事になっている[14][15]

ヤロスラヴリ[編集]

ヤロスラヴリの路面電車であるヤロスラヴリ市電には、2023年12月以降2025年までに合計47両の71-628(71-628-02)が導入される事になっている[13]

クラスノヤルスク[編集]

2023年、ウスチ=カタフスキー車両製造工場はクラスノヤルスク市内の路面電車であるクラスノヤルスク市電向けの新型車両の製造契約をクラスノヤルスク市との間に結んだ。それを基に1両の71-628Mが生産され、翌2024年2月に納入が行われている[16][17]

トムスク[編集]

2023年11月、ウスチ=カタフスキー車両製造工場は、リース会社を介する形でトムスク市内の路面電車であるトムスク市電向けの車両の導入契約を獲得した。これに基づき、2024年4月から7月の間に5両の車両(71-628-01)が製造される事になっている[18]

未導入都市[編集]

モスクワ[編集]

ロシア連邦の首都モスクワの路面電車であるモスクワ市電の運営事業者は、2020年に旧型電車の置き換えを目的にシナラ・グループロシア語版に属するSTMトレーディングハウス(Торговый дом СТМ)との間に新型超低床電車の導入に関する契約を結んだ。シナラ・グループ全体に路面電車車両の製造実績が存在しなかったため複数の鉄道車両メーカーと交渉を実施した結果、ウスチ=カタフスキー車両製造工場が車両の製造を担当する事となった[19][20]

これを受けて製造が行われる新型車両は「71-628M(71-628М)」と言う形式名が付けられ、試作車やタガンログ向け車両からデザインが変更された他、電圧の低下などの非常時に備えて最長1 kmの走行が可能なスーパーキャパシタが搭載される事になっていた。また、車内には充電用のUSBコネクタが複数設置された[19][21]

2021年中に50両が、2022年までに計画されている全90両が導入される予定であったが、2022年時点で完成した車両は1両のみであり、その後も納入スケジュールの遅延を始めとした契約違反が相次いだ結果、モスクワ市電の運営権を従来の事業者から受け継いだ単一企業体モスクワメトロ公社ロシア語版は2021年11月に契約の打ち切りを発表し、モスクワ市電に71-628Mが導入されることはなかった[22]

関連形式[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 71-628”. Ust-Katav car-building plant. 2021年10月5日閲覧。
  2. ^ a b c d Теперь синенький: в Челябинск пригнали новый низкопольный трамвай, но опять ненадолго”. 74.RU (2021年1月16日). 2021年10月5日閲覧。
  3. ^ a b В Таганрог направили первый вагон для обновленной трамвайной сети”. Аргументы и Факты (2021年7月20日). 2021年10月5日閲覧。
  4. ^ a b Дарья Гербер (2023年7月11日). “Барнаул, Липецк и Самара получили первые новые трамваи”. TR.ru. 2023年7月15日閲覧。
  5. ^ Губернатор Ростовской области прокатился на новом трамвае УКВЗ”. tramuk.ru (2021年7月30日). 2021年10月5日閲覧。
  6. ^ Taganrog/Russia: First new trams under the concession contract in service”. Urban Transport Magazine (2021年9月21日). 2021年10月5日閲覧。
  7. ^ Наши до винтика: в Таганрог прибыли новые современные трамваи”. Fabricators.ru (2022年4月13日). 2022年9月3日閲覧。
  8. ^ В Челябинске выбрали подрядчика на поставку 30 низкопольных трамваев за 1,8 миллиарда”. 74.ru (2022年2月25日). 2022年9月3日閲覧。
  9. ^ Первый из 30 трамваев, выпущенных специально для Челябинска, привезли в город”. 74.ru (2022年6月15日). 2022年9月3日閲覧。
  10. ^ УКВЗ поставил в Липецк первые трамваи”. MASHNEWS (2023年7月5日). 2023年7月15日閲覧。
  11. ^ Latest rolling stock procurements and supplies: Skoda Group, Pesa, Newag, CRRC, Stadler, Bozankaya, UKCP”. RollingStock (2024年4月22日). 2024年4月25日閲覧。
  12. ^ Павел Яблоков (2023年5月17日). “Определились производители трамваев для Петербурга и троллейбусов для Владимира”. TR.ru. 2023年5月22日閲覧。
  13. ^ a b Дарья Гербер (2024年1月4日). “Новые трамваи: поставки в Петербург, Ярославль, Пермь, Краснодар, Самару и Нижний Новгород”. TR.ru. 2024年1月10日閲覧。
  14. ^ Дарья Гербер (2023年11月21日). “Новые трамваи — в Барнаул, Мозырь, Новотроицк, Ярославль и на Южный Урал: поставки и планы”. TR.ru. 2023年11月23日閲覧。
  15. ^ Павел Яблоков (2023年10月9日). “УКВЗ готовится к отправке 220 трамваев в 10 городов России”. TR.ru. 2023年11月23日閲覧。
  16. ^ «Стильный дизайн и повышенная плавность хода»: трамвай за 83 млн рублей едет в Красноярск”. newslab.ru (2024年2月15日). 2024年2月18日閲覧。
  17. ^ Дарья Гербер (2024年2月15日). “Новые трамваи готовят для Красноярска, Волгограда и Хабаровска, в Курске — выбирают имена”. TR.ru. 2024年2月18日閲覧。
  18. ^ UKCP to deliver first trams to Tomsk”. RollingStock (2024年4月23日). 2024年4月25日閲覧。
  19. ^ a b В МОСКВЕ ПОЯВЯТСЯ 90 НИЗКОПОЛЬНЫХ ТРАМВАЕВ НОВОГО ТИПА”. STRELKA MAG (2021年3月31日). 2021年10月5日閲覧。
  20. ^ Анастасия Львова (2020年3月30日). “В Москве появятся трамваи нового типа”. Ведомости. 2021年10月5日閲覧。
  21. ^ Дептранс Москвы💉”. Telegram (2021年6月4日). 2021年10月5日閲覧。
  22. ^ Павел Яблоков (2021年11月25日). “В Москве расторгнут крупный трамвайный контракт, Красноярск, Калининград и Нижний Новгород ждут свои вагоны”. TR.ru. 2023年1月19日閲覧。
  23. ^ Белов Сергей (2024年1月22日). “УКВЗ планирует в феврале передать в Санкт-Петербург низкопольный трехсекционный трамвай”. RollingStock. 2024年1月28日閲覧。
  24. ^ Дарья Гербер (2024年1月24日). “Новые трамваи строят для Улан-Удэ, Новотроицка, Пятигорска, Петербурга и Челябинска”. TR.ru. 2024年1月28日閲覧。