寒剤

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寒剤(かんざい、: freezing mixture[1])とは、科学実験などで低温を得るために用いる冷却剤のこと。塩類など、2種類以上の物質混合物を指すが、液体窒素などクーリングバスで使う冷却材を広く含めることもある。理想的な系では共晶点の温度を得ることが可能。溶解吸熱反応の場合、寒剤を断熱的に溶解させると溶液全体が冷える。このようにある物質を溶解することにより温度が下がるような混合物である。

通常は、、氷と塩、アルカリかドライアイス等と有機溶媒エチルアルコールエチルエーテルなど)である。

メカニズム[編集]

そのメカニズムは、氷と塩類の場合、まず氷の一部が融解して融解熱を奪い、その解けた水に塩類が溶解して溶解熱を奪うため温度は徐々に降下し、共融点に近い低温で降下が止まる、というものである。端的に言うと融解熱や溶解熱が奪われることによって冷却が起こる。

タイプ[編集]

主な寒剤と到達温度
混合物 質量比 到達可能温度 (°C)
氷/水 1:1  0
食塩/水 1:0.36 (低下温度)2.5℃低下
塩化アンモニウム/炭酸ナトリウム/水 1:1:3 (低下温度)29.0℃低下
塩化アンモニウム/水 3:10 (低下温度)2℃低下
亜硝酸ナトリウム/水 6:10 (低下温度)12℃低下
チオシアン酸アンモニウム/水 13:10 (低下温度)15℃低下
酢酸ナトリウム/氷 9:10 −15
塩化カルシウム(六水和物CaCl2・6H2O/ 81:100 −21.5
CaCl2・6H2O/氷 123:100 −41
CaCl2・6H2O/氷 58.8:41.2 −54.9
食塩/氷 22.4:77.6 −21.2
塩化アンモニウム/氷 3:10 -18
硝酸アンモニウム/氷 1:1 −25
塩化アンモニウム/硝酸カリウム/氷 1:1:1 −25
臭化ナトリウム/氷 65:100 −28
塩化カリウム/氷 1:1 −30
塩化マグネシウム/氷 3:10 −33
塩化亜鉛/氷 51:49 −62
硫酸(66%)/氷 1:1 −37
四塩化炭素CCl4/ドライアイス 無し –23
アセトニトリル/ドライアイス  無し −42
エチルアルコール/ドライアイス  無し -72.0
アセトン/ドライアイス  無し −86
エチルエーテル/ドライアイス  無し −77.0
エーテル/ドライアイス  無し −98
エチルアルコール/液体空気(*) −100 
エーテル/液体空気(*) −116 
石油エーテル/液体空気(*) −150 
液体窒素 −196
液体水素 −253
液体ヘリウム −269
なお、これらの数値は資料によって僅差がある
(*)寒剤に直接液体空気は混ぜない。

寒剤に用いられる主な物質は3種類ある。

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最も簡単な寒剤としてはと水を混ぜたものがある。この物質は1気圧下では水の融点、0°Cに保たれる。適当な無機塩を混ぜることにより0°C以下にすることができる。

ドライアイス[編集]

ドライアイス昇華点は−79°C(1気圧)であるが、有機溶媒を用いることで寒剤を作ることができる。エーテルとの寒剤は−98°C近くまで下げることができる。

一般的に、ドライアイス/エタノールやドライアイス/アセトンの混合物が使用されるが、特に可燃性蒸気の発生を嫌う場合にはドライアイス/塩化メチレンやドライアイス/四塩化炭素を用いる。

液体窒素[編集]

液体窒素沸点は−196°Cである。液体窒素は一般に安価であり原料の窒素大気から潤沢に得られるが、さらに低温が必要な場合は液体水素液体ヘリウムを用いる。液体水素は非常に引火性が高く危険であり、液体ヘリウムは希少資源でかつ非常に高価という欠点がある。

脚注[編集]

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  1. ^ 文部省日本物理学会編 『学術用語集 : 物理学編』 培風館1990年ISBN 4-563-02195-4

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]