南官杓

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ナム・グァンピョ

南 官杓
生誕 1957年(66 - 67歳)
大韓民国の旗 韓国釜山市(現在の釜山広域市)
国籍 大韓民国の旗 韓国
職業 外交官
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ナム・グァンピョ
各種表記
ハングル 남관표
漢字 南官杓
発音: ナム・グァンピョ
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南 官杓(ナム・グァンピョ、: 남관표: Nam Gwan Pyo1957年 - )は、大韓民国外交官ハンガリースウェーデン日本の特命全権大使、国家安保室第2次長(次官級)を歴任した。

来歴[編集]

1957年、釜山市生まれ[1]京畿高等学校を卒業後、ソウル大学校法学部を卒業し、ジョンズ・ホプキンズ大学大学院の国際政治学修士課程を終えた[1][2]

外交官として[編集]

1978年に第12回外交官試験に合格し、1981年12月に外務部(現在の外交部)に入職。以降、外交畑を歩むこととなる。国外の赴任経験は1986年6月のアメリカ合衆国シカゴ総領事館を皮切りに、日本フィリピンベトナムの大使館にて勤務した[2][3]

2002年より外交通商部の条約局(現:国際法律局)審議官。盧武鉉政権下では同部署などアメリカと一線を画した自主外交を趣向する自主派と、北米局などアメリカとの同盟を重視する同盟派の対立が激しく、条約局に属する南官杓もまた自主派に分類されていた。盧武鉉政権自体も自主外交政策をとっており、2007年に外交官としては異例となる青瓦台民情首席室に派遣され[1]、規制改革調整官、規制改革室室長を務めた[2]。当時の民情首席室首席が文在寅である[1]。2011年よりハンガリー、2015年よりスウェーデンの特命全権大使を務めた[2][3]

2017年6月20日、民情首席室時代の上司で大統領となっていた文在寅より国家安保室の第2次長(次官級)に任命された[1][3]。第2次長として、THAADミサイル配備問題をめぐって対立が深まった中国との関係改善を図るため、中国側との実務協議を事実上主導した[4][5]ほか、2018年開催の南北高官級会談の韓国側代表団にも名を連ね[6][7]、同年9月の南北首脳会談実施[8][9]北朝鮮との共同連絡事務所の開設につながった[10]

駐日大使として[編集]

2019年2月28日、文在寅大統領は青瓦台次長級の人事を一新し、第2次長を退任した南官杓は悪化する日本との関係を改善するために駐日大韓民国大使へ起用されることが有力視され[11]、3月4日に発表された公館長人事にて内定が判明した[12][13]。5月3日に外交部より正式に駐日大使に任命され[14]、5月9日に着任[15]。5月13日には河野太郎外務大臣を表敬訪問した[16]。5月20日に皇居信任状を捧呈した[17]

2019年7月19日、日本の河野外相が南大使を召致して両者の会談が持たれた。マスコミが集まっていたこの会談の席上で、南大使は、旧朝鮮半島出身労働者問題(いわゆる「徴用工訴訟問題」)[18]の解決手段として日本側が既に拒否している「日韓双方の企業が賠償相当額を支払う」という案を繰り返し要求したが、当時の河野外相は受諾せず、先方の通訳を遮る形で「韓国側の提案は全く受け入れられるものでない。極めて無礼でございます。」と発言して南大使に強い不快感を表明した[19]。但し、これは河野外相が南個人への失望を吐露したというよりは、国際条約に抵触している文在寅政権への批難を表明したものであり、早くも7月下旬には河野外相は南大使を「仲直りの食事会」に招いている[20]。また、河野防衛相(2019年9月に外相から防衛相に転任)は同年10月3日に韓国大使館が主催した国軍の日のイベントに日本の閣僚級として唯一参加し、会場で南大使と挨拶を交わしている[21]

2019年10月4日、駐日韓国大使館で行われた国政監査の中で、尹相現朝鮮語版自由韓国党)議員からの質問に答える形で、南大使は既に解消が決定している日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)については復帰が望ましいとする考えを述べた[22]。この発言は文大統領が2017年の大統領選で掲げた公約を否定するものであり[23]、本来であれば大使としての職務権限を逸脱した問題発言と見なされて文大統領から謝罪や発言撤回を求められる可能性の高い発言であるが、実際にはそうならず、南大使はGSOMIA継続を推奨する発言に対して謝罪も取り消しもしないまま、その後1年以上にわたって駐日大使として奉職した。

2020年11月23日、文大統領は知日派かつ反日強硬派の姜昌一を次期駐日大使に任命した。12月25日に加藤勝信官房長官に離任挨拶を行い[24]、2021年1月16日午後に日本を離れたが、その際の菅義偉総理との面会は直前まで調整が行われたものの最終的には実現しなかった[25]。但し、さかのぼる1月6日に離任の挨拶をするため赤坂御所で天皇に面会する機会には与っている[26]

受賞歴[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e “文大統領の外交安保ライン「自主派」が全面に”. 中央日報. (2017年6月21日). https://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=230388 2019年3月1日閲覧。 
  2. ^ a b c d e 남관표”. NAVER人物検索. 2019年3月1日閲覧。
  3. ^ a b c “国家安保室第2次長に職業外交官 大統領府の外交担当=韓国”. 聯合ニュース. (2017年6月20日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20170620001000882 2019年3月1日閲覧。 
  4. ^ “韓中関係の雪解け…韓国は青瓦台、中国は外交部が主導”. 中央日報. (2017年11月3日). https://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=235047 2019年3月1日閲覧。 
  5. ^ “韓中がTHAAD関連協議の結果発表 「あらゆる交流協力を早期に戻す」”. 聯合ニュース. (2017年10月31日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20171031001700882 2019年3月1日閲覧。 
  6. ^ “南北高位級会談の代表団確定…韓国は趙明均氏、北朝鮮は李善権氏”. 中央日報. (2018年8月12日). https://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=243949 2019年3月1日閲覧。 
  7. ^ “「同じ気持ちなら解けぬ問題ない」 南北閣僚級会談で韓国統一相”. 聯合ニュース. (2018年8月13日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20180813001700882 2019年3月1日閲覧。 
  8. ^ “8月末-9月上旬に平壌で3回目の南北首脳会談 「今日の合意に期待」”. 中央日報. (2018年8月13日). https://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=243963 2019年3月1日閲覧。 
  9. ^ “南北 9月に平壌で首脳会談開催=具体的日程には合意できず”. 聯合ニュース. (2018年8月13日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20180813002600882 2019年3月1日閲覧。 
  10. ^ “南北24時間疎通時代が開幕…共同連絡事務所きょう開所”. 中央日報. (2018年9月14日). https://japanese.joins.com/article/171/245171.html 2019年3月1日閲覧。 
  11. ^ “次期駐日大使 南官杓・前国家安保室第2次長が有力=韓国”. 聯合ニュース. (2019年2月28日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190228004700882 2019年3月1日閲覧。 
  12. ^ “韓国の駐日大使に南官杓氏=大統領府高官を投入”. 時事ドットコム. 時事通信社. (2019年3月4日). https://web.archive.org/web/20190329074515/https://www.jiji.com/jc/article?k=2019030400926&g=int 2019年3月14日閲覧。 
  13. ^ “青瓦台出身で使い回す文在寅式の「身内リサイクル人事」…なぜ?”. 中央日報. (2019年3月6日). https://japanese.joins.com/article/935/250935.html 2019年3月14日閲覧。 
  14. ^ “外交部 駐日大使含む海外公館長22人を任命”. KBW WORLD Radio. KBSワールドラジオ. (2019年5月3日). http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=71950 2019年5月9日閲覧。 
  15. ^ “駐日大使が着任 「日本との意思疎通に努める」”. KBW WORLD Radio. KBSワールドラジオ. (2019年5月10日). http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=72018 2019年5月12日閲覧。 
  16. ^ 南官杓駐日韓国大使による河野外務大臣表敬 | 外務省
  17. ^ 駐日韓国大使の信任状捧呈 | 外務省
  18. ^ 国際条約上は、1965年に締結された日韓請求権協定第二条の規定により解決済。但し、2018年10月30日、韓国の最高裁判所が国際条約を反故にして徴用工に対する損害賠償の請求先を韓国政府ではなく日本企業であるとする判決を下し、韓国側のみが第二次大戦中の朝鮮半島出身工場労働者からの賠償請求を国内問題ではなく対日「問題」であると見做している。日本国外務省による旧朝鮮半島出身労働者問題の解説ページを参照されたし。
  19. ^ 「極めて無礼だ」 河野外相が韓国大使に激怒! 通訳さえぎり異例の猛抗議のワケ - FNN.jpプライムオンライン
  20. ^ 河野氏、駐日韓国大使と「仲直りの食事会」(高橋浩祐) - 個人 - Yahoo!ニュース
  21. ^ 東京で韓国国慶日行事…茂木外相は出席せず、河野防衛相だけ顔出す”. 中央日報 (2019年10月4日). 2019年10月5日閲覧。
  22. ^ 南官杓駐日大使「GSOMIA破棄は遺憾、復帰が望ましい」”. 朝鮮日報 (2019年10月5日). 2019年10月6日閲覧。
  23. ^ 米日南の軍事一体化進む/GSOMIAを延長、THAAD配備を強行 | 朝鮮新報
  24. ^ “南官杓駐日大使が離任あいさつ”. KBW WORLD Radio. KBSワールドラジオ. (2020年12月28日). https://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=77817 2021年1月18日閲覧。 
  25. ^ “【独自】駐日韓国大使が帰国 菅首相との離任面会は見送り”. TBS News. (2021年1月16日). https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4175644.html 2021年1月18日閲覧。 
  26. ^ 天皇皇后両陛下のご日程:令和3年(1月~) - 宮内庁
  27. ^ 『官報』第554号11頁 令和3年8月16日号

外部リンク[編集]

外交職
先代
徐正河
大韓民国の旗ハンガリー大韓民国大使
2011年 - 2014年
次代
任根亨
先代
孫聖煥
大韓民国の旗スウェーデン大韓民国大使
2015年 - 2018年
次代
李汀圭
先代
李洙勲
大韓民国の旗 駐日大韓民国大使 日本の旗
2019年5月9日 - 2021年1月16日
次代
姜昌一