世の終わりのための四重奏曲
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『世の終わりのための四重奏曲』(よのおわりのためのしじゅうそうきょく、仏: Quatuor pour la Fin du Temps)は、1940年にオリヴィエ・メシアンが作曲した四重奏曲。第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜となり、ゲルリッツにあった「Stalag VIII-A」収容所に収容されていたときに作曲された。曲想は『ヨハネの黙示録』10章に基づく。
原題は直訳すれば『時の終わりのための四重奏曲』であり(そのように訳される場合もある)、『世の終わり〜』は意訳であると言える。
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[編集] 編成
演奏時間は約50分。
[編集] 初演
1941年1月15日、ゲルリッツ(現ザクセン州、一部は現在ポーランドのズゴジェレツ)のStalag VIII-A収容所(8A収容所)にて、一説には数千人の捕虜を前にジャン・ル・ブーレール(ヴァイオリン)、アンリ・アコカ(クラリネット)、エティエンヌ・パスキエ(チェロ)、オリヴィエ・メシアン(ピアノ)によって行われた。極寒の収容所内でチェロの弦は3本しかなく、ピアノもアップライトで切れていた弦もあった中、メシアンは後にこのときのことを「私の作品がこれほどの集中と理解をもって聴かれたことはなかった」と語っている[1]。2008年は生誕100年にあたり、ゲルリッツの収容所でこの曲の再演が行われた。
[編集] 構成
8楽章からなる。8は、天地創造の6日の後の7日目の安息日が延長し不変の平穏な8日目が訪れる、その8に由来する、とされる。
- 1. 水晶の典礼 Liturgie de cristal
- Bien modéré, en poudroiement harmonieux
- 移調の限られた旋法とリズム・セリーによって異なる周期の時間を重ね合わせ、ピアノによる透明な水晶の和音とチェロによる高音のグリッサンドとが多次元的に層をなし、その朝靄の中にヴァイオリンによるクロウタドリとクラリネットによるナイチンゲールが即興的に囀る。それらが光の中で高揚の頂点を迎えた後、静寂の中に前奏曲としての役割を終える。
- 2. 世の終わりを告げる天使のためのヴォカリーズ Vocalise, pour l'Ange qui annonce la fin du Temps
- Robuste, modéré
- ABaの3部形式で構成され、A部分は御使いの強い力を喚起させる強固な表現を持つ。減8度音程、増8度音程や7度音程などを骨格に組み込んだ大胆でリズム的な和音がピアノによって担当されるが、その畏怖の中に、ヴァイオリンとチェロとがユニゾンで世の終わりの切迫感を表現し、クラリネットは鳥の囀りを繰り返す。A部分の結尾部は、移調の限られた旋法第2番を上行する弦によるユニゾンの後、恐怖を煽るトリルがヴァイオリン、チェロ、クラリネットと階梯導入され、ピアノは上行する複調和音のアルペジオの後、下行する和音で閉じられる。中間のB部分は天使のヴォカリーズに該当し、弦による美しいユニゾンの上を、メシアン自身が「ブルー=オレンジ」と表現した和音が水の滝を穏やかに落とし、遥か彼方のカリヨンの響きでそれを包む。最後のa部分は、A部分の結尾部を反行型にしたもので、移調の限られた旋法第2番を下行する弦によるユニゾンの後、恐怖を煽るトリルがチェロ、ヴァイオリン、クラリネットと階梯導入され、ピアノは下行する複調和音のアルペジオの後、上行する和音で閉じられる。
- 3. 鳥たちの深淵 Abîme des oiseaux
- Lent, expressif et triste
- 鳥の歌を使用したクラリネットの独奏曲で、有効に使った休符の中に満ちた深い精神的な空間と、長く引き伸ばされたクレッシェンドはクラリネットの表現力を充分に生かしており、単独に抜粋されてアンコールなどの演奏会で演奏されることもある。
- 4. 間奏曲 Intermède
- Décidé, modéré, un peu vif
- ヴァイオリン、クラリネット、チェロの三重奏。ユニゾンで協調する部分と、アンサンブル的に掛け合う部分とが効果的に構成されている。3者が模倣を引き継いだり、2者と1者とが呼応したり、短い中に三重奏の様々な姿が凝集されている。全体を通して4分の2拍子で書かれている。
- 5. イエスの永遠性への賛歌 Louange à l'Éternité de Jésus
- Infiniment lent, extatique
- チェロとピアノの二重奏。1937年にオンド・マルトノの六重奏のために作曲した組曲「美しき水の祭典」からの一曲を引用して編曲されている。全長転位音ともみなされる解決されない非和声音が曲の推進力を強く保ち、高らかに賛美を歌った後、永遠の彼方へと消えていく。
- 6. 7つのトランペットのための狂乱の踊り Danse de la fureur, pour les sept trompettes
- Décidé, vigoureux, grantique, un peu vif
- ユニゾンに終始する。変型された4分の4拍子とも見なされ、そこに付加リズムを含んで拡大・縮小される。即興的に主題が拡大され、それが大規模な姿を呈した絶頂の後、非可逆リズムによって神の奥義の成就を象徴する。
- 7. 世の終わりを告げる天使のための虹の混乱 Fouillis d'arcs-en-ciel, pour l'Ange qui annonce la fin du Temps
- Rêverur, presque lent
- ピアノの伴奏に乗ってチェロが息の長い旋律を歌うが、ヴァイオリン、ピアノが入った激しいアンサンブルにより中断される。その後はクラリネットが旋律を歌ったのち激しいアンサンブルが再現され、ピアノを中心とした色彩豊かな部分が続いた後に、激しいアンサンブルにより締めくくられる。
- 8. イエスの不滅性への賛歌 Louange à l'Immortalité de Jésus
- Extrêmement lent et tendre, extatique
- ヴァイオリンとピアノの二重奏。1930年にオルガンのために作曲した「二枚折絵」の第二部(後にこの部分に"Le Paradis「天国」"と副題を付けている)から編曲されている。メシアンらしい、天国的な遅さの中に、じっくりと賛歌が歌われる。
[編集] 同じ編成の曲
- パウル・ヒンデミット:クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための四重奏曲(1938年)
- 武満徹:「カトレーンII」(クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ独奏とオーケストラのための「カトレーン」から、独奏を室内楽として独立)