ユッカ

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ユッカ属
Yucca queretaroensis fh 0360 MEX B.jpg
Yucca queretaroensisメキシコ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: クサスギカズラ目 Asparagales
: クサスギカズラ科 Asparagaceae
亜科 : リュウゼツラン亜科 Agavoideae
: ユッカ属 Yucca
学名
Yucca
L.

ユッカ (学名 Yucca) はリュウゼツラン科ユッカ属の植物の総称。英語ではヤッカ (yucca)。ユッカという名前は、初期にカリブ諸島でユカ(Yuca)と呼ばれるキャッサバと混同したために付けられた名前である[1]

特徴[編集]

ユッカ属の種は同じリュウゼツラン科のリュウゼツランと形態が似通っている。 ユッカは常緑多年生植物で多くは低木であるが、中には樹高10メートルを超すものもある。葉は放射状(ロゼット)に生え、多くの種では、葉は硬く厚みがあり、形状は剣状で先が針のように硬く尖り、縁にノコギリ状の歯があり取り扱いには注意を要する。この葉の特徴から多くの種の通称に銃剣(bayonet)、短剣(dagger)、剣(Sword)、針(needle)等と名付けられている。多くの種は乾燥地帯のある程度標高の高い所で自生する。いずれも長い花茎を伸ばし多くの白から乳白色の花をつける。主な原産地はメキシコを含む北米である。

ユッカは虫媒花昆虫との相利共生関係にある。ユッカの花の雌しべ雄しべは離れており、自然には受粉しない、ユッカ蛾により受粉し、ユッカ蛾は花に産卵する。ユッカの種子しか食べない幼虫寄生宿主となっている。ユッカの実は大きく殆どを食べ残しユッカとユッカ蛾はともに子孫を残す[2]

通称ユッカガはホソヒゲマガリガ科に属する3属(Tegeticula, Parategeticula, Prodoxus)のである[3]

リュウゼツランとユッカの違い[編集]

近縁の種であるリュウゼツラン属とユッカ属は原生地が主にメキシコ・米国南西部の乾燥地帯、多肉植物で葉の形、ロゼット状の形態など類似点が多い。 

主な違い(例外もある)は[4][5]

  • 葉はいずれも放射状に生えるがリュウゼツランの方がより肉厚で葉の先にとげ、葉の縁にのこぎり刃状のとげがあるのに対し、ユッカはより薄く、細く、葉は真っ直ぐでとげがないものが多い。またユッカは成長に伴い幹を形成し高く成長するがリュウゼツランはほとんど幹を形成しない。 
  • 受粉はユッカはユッカガによるが、リュウゼツランはハチ、ガ、鳥、コウモリなどによる。 リュウゼツランの大半は一回結実性で10年から数十年に一度しか開花せず、結実後には枯れるが、ユッカは成熟個体はほぼ毎年開花し結実後も枯れず成長を続ける。

分布[編集]

ユッカの米国周辺での分布

ユッカ属(49種、24亜種(subspecies))[6]中米から北米にかけて広く自生しており、南はガテマラから北はカナダアルバータ州に及んでいる。特にメキシコ北部のバハ・カリフォルニア州ソノラ砂漠チワワ砂漠英語版、米国中西部の乾燥地帯に多く分布している。

生育環境は 主に乾燥帯(arid) からステップ気候(semi-arid)の乾燥した環境であるが、亜熱帯(subtropical)から亜温帯(semi-temperate)にも分布している。地形的には砂漠悪地地形プレーリーなどの草原地帯山岳地帯から海岸の砂丘地帯と幅広い。

利用[編集]

17-8世紀に原産地の北米から各地へ移植され、観賞用に多くの品種が開発された。 ユッカは耐寒性耐暑性があり、あまり水を必要とせず、手入れも殆ど必要としないので、米国西部では庭園植物として広く栽培されている。

ジョシュア・ツリーに関しては米国のいくつかの州では保護されており、採取は規制されている。また夏季の休眠期に過度の水をやると死んでしまう為、造園家は避けている。

米国のニューメキシコ州ではユッカを州の花としている。

原産地の北米では多くの種の果実、種、花、花茎、稀に根が先住民により食用・薬用に利用されていた。また葉や茎から取れる繊維は衣料や日用品に加工されて使われていた。サポニンを含む樹液は洗剤としても使われた。

高血圧高脂血症の改善」、「骨関節症の痛み、こわばり、むくみなどの症状を改善」という報告があるが薬用としての有効性は証明されていない[7]。米国ではMojave yuccaとJoshua tree は安全な食品添加物(GRAS)として認可されている。

主な種[編集]

Y. aloifolia センジュラン
en:Yucca aloifolia 和名:センジュラン(千寿蘭)
アメリカ・メキシコ・ジャマイカ原産、樹高は4-6m、葉は長さ40cmで先端が針のように尖り、縁に細かい鋸歯がある。別名はSpanish bayonet(銃剣)[1]。花茎は30-60cmになる。葉の端に黄色の入るものはキンポウラン、若葉に黄色、白色の条線が入るものはサンシキセンジョウランと呼ぶ[8]
Y. baccata
Yucca baccata 英語版
通称 Datil yucca、Banana yucca。青緑色の長さ30-100cmの葉がロゼット状に生え、幹は無いか非常に短い。開花時期は4月から7月で白から乳白色で5-13cmの花を咲かせる。花茎はあまり高くはなく1-1.5mほどである。果実はバナナの形をしており長さが8-18cmで甘い、Paiute族は干した果実を冬季の食料にしている。植生はロッキー山脈シエラネヴァダ山脈の間のグレートベースンモハーヴェ砂漠ソノラ砂漠チワワ砂漠英語版等の標高1500-2500m砂漠地である。
Y. brevifolia ジョシュア・ツリー
Yucca brevifolia 英語版
通称 ジョシュア・ツリー。モハーヴェ砂漠の標高400-1800mで生育しており、特にカリフォルニアのジョシュア・ツリー国立公園はその名が示すように多くのジョシュア・ツリーが見られる。ジョシュア・ツリーの名前の由来は当地にたどり着いたモルモン教徒聖書ヨシュアが天を仰ぐ姿に因んで名付けたものである。
ジョシュア・ツリーは砂漠の植物としては生育が早く、最初の10年は平均年7.6cm、その後も3.8cm/年成長する。幹は数千の繊維からできており、年輪は形成されないため樹齢は測りがたいが数百年以上の樹齢が推測されている。樹高は15mに及び、その根は11mまで広がっている[9]。葉は濃緑色で長さは15-35cmで幅は7-15cmである。2月から4月にかけて開花し円錐花序は長さ30-55cmで幅が30-38cmとなり各々の花は4-7cmの大きさである。ユッカ蛾により受粉する虫媒花である。枝分かれは開花後に起きる。また開花は毎年おきるとは限らず降水量に依存し、また開花前の冬に氷点下になった場合に開花する。Cahuilla族アメリカ州の先住民は実を食料に繊維をサンダルやバスケットに編んでいた。
Y. elata
Yucca elata 英語版
通称 Soaptree yucca。ソノラ砂漠、チワワ砂漠、樹高1.2-4.5m、葉;長さ25-95cm、幅0.2-1.3cm、花3.2-5.7cm、毎年は開花しない。
耐寒性があり、ワシントン州ブリティッシュコロンビア中央ヨーロッパでも生育している。アメリカ州の先住民は葉の繊維を様々な用途で用いていた。根や幹からとれるサポニンは洗剤として使われていた。
Y. faxoniana
Yucca faxoniana 英語版
通称 Spanish-dagger, Torrey's yucca, Torrey Yucca。チワワ砂漠原産。


Y. filamentosa, イトラン
en:Yucca filamentosa 和名イトラン(糸蘭)
通称 Adam's needle。樹高は75-120cm程で葉は長さ30-50cm、日本での開花時期は6月から7月[10]、花茎は90-180cm(最長3m)程に伸びる。原産地は米国の南東部であるが、現在では広く栽培されている。
葉は先端が垂れ、縁から白い繊維が剥離する、この状態が和名の由来[1][11]
Y. gigantea メキシコチモラン
en:Yucca gigantea (syn. Y. elephantipes) 和名メキシコチモラン
通称 spineless yucca, soft-tip yucca, blue-stem yucca, giant yucca and itabo。
樹高は6m程であるが最大9m幅4.5mのものもある。葉は他の種と違い柔らかく棘が無い。長さは1.2mほどになる。象の足に例えられる特徴のある幹を持ち学名にもなっている。開花時期は夏。俗に「青年の木」といわれるものの多くは、本種である。鉢植えの観葉植物の状態と自生のものとでは相当印象が違う。
Y. glauca
Yucca glauca 英語版(syn. Y. angustifolia)
通称 soapweed yucca, narrowleaf yucca, plains yucca, beargrass。原産地米国中部、アメリカ州の先住民は薬草として利用していた。


Y. gloriosa アツバキミガヨラン
en:Yucca gloriosa 和名アツバキミガヨラン(厚葉君が代蘭)
通称 Spanish Dagger, Moundlily Yucca, Soft-tipped Yucca, Spanish Bayonet、Sea Islands Yucca。高さ0.5-2.5m、葉は固く幅2-3.5cm長さ50-70cmで先端は尖っている。花茎は1-2m[12]バリアー島砂丘で生育する、皮膚の炎症を起こすことがある。日本へは明治時代に渡来、庭園樹・庭木として利用されている。日本での開花時期は5-6月または10月頃であるが、受粉を媒介するユッカ蛾がいないため自然には結実しないといわれている。和名のキミガヨランは学名のgloriosa(栄光ある)から「君が代」へ関連付けたものである[13]
Y. pallida
Yucca pallida 英語版
通称 Pale yucca。高さ20-50cm、直径30-80cm、葉は幅2-3cm長さ15-40cm、幹は殆ど無い。花茎は1-2.5mの高さで100近い花をつける。個々の花は5-7cmの長さである。
Y. rostrata
Yucca rostrata 英語版
通称 Beaked yucca。植生米国南部、メキシコ北部、樹高4.5m。開花時期は秋
Y. schidigera
Yucca schidigera 英語版
通称 Mojave yucca, Spanish Dagger。モハーヴェ砂漠、ソノラ砂漠、標高300-1200m、樹高5m、葉は幅4-11cm長さ30-150cm
繊維が衣類などに利用され、果実は種も含めて食料、樹液は洗剤として利用された。


Y. schottii
Yucca schottii 英語版
通称 Schott's Yucca, Hoary Yucca, Mountain Yucca。米国南部メキシコ北部の山岳地帯に自生。


脚注[編集]

  1. ^ a b c 京都けえ園芸企画舎・ヤサシイエンゲイ 「ゆっか」 閲覧2012-8-16
  2. ^ 筑波実験植物園 「キミガヨラン」
  3. ^ Olle Pellmyr, James Leebens-Mack (1999), Forty million years of mutualism: Evidence for Eocene origin of the yucca-yucca moth association, doi:10.1073/pnas.96.16.9178 
  4. ^ Silverbell Nursery Cactus, Agave & Yucca閲覧2012-9-1
  5. ^ eHow What is the difference between a Yucca and and Agave? 閲覧2012-9-1
  6. ^ World Checklist of Selected Plant Families, キューガーデン, http://apps.kew.org/wcsp/home.do 2012年8月17日閲覧。 , "Yucca"で検索、61種が公認とある。49種+24亜種は英版の記述から
  7. ^ 国立健康・栄養研究所 「健康食品の素材情報データベース ユッカ」閲覧2012-8-16
  8. ^ ボタニックガーデン「せんじゅらん(千寿蘭)」閲覧2012-8-18
  9. ^ アメリカ合衆国農務省 Yucca brevifolia
  10. ^ 筑波実験植物園 「イトラン」
  11. ^ ボタニックガーデン「いとらん (糸蘭)」閲覧2012-8-16
  12. ^ 筑波実験植物園 「アツバキミガヨラン」閲覧2012-8-17
  13. ^ ヤサシイエンゲイ・京都けえ園芸企画舎アツバキミガヨラン閲覧2012-8-17