マゴットセラピー

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マゴットセラピーMaggot therapy)は、ハエの幼虫である(マゴット、Maggot)を使って傷を治療する療法のことである。

Maggot debridement therapy(MDT)や蛆虫療法などと呼ばれる事もある。

歴史[編集]

いくつかの文化圏ではハエの幼虫である蛆が傷の治療に使用されていた。また、近代の戦争において、傷口に蛆が湧いた方が傷の治癒が早い、という事も経験的に知られていた。1940年代に到るまで、マゴットセラピーは積極的に行われていた。その後、様々な抗生物質の開発、及び外科治療の進化によってマゴットセラピーは衰退していくことになる。しかし、現代においては抗生物質の多用による、抗生物質が効かない耐性菌の出現(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌等が有名)や糖尿病患者の急増による糖尿病慢性期合併症の一つである糖尿病性壊疽患者の増加によって再びマゴットセラピーは注目されるようになった。

医療用蛆は2004年に米国のFDA(食品医薬品局)によって医療用機器として認可された[1]事に代表されるようにマゴットセラピーは欧米圏で普及している。

日本ではまだ一般的な療法とは言いがたいが、日本国内のいくつかの病院でマゴットセラピーが行われており、医療用蛆を製造する業者も存在している。現時点では日本ではマゴットセラピーは自由診療(保険外診療)である。

概要[編集]

無菌状態で繁殖させた蛆を利用する。医師(治療者)は専門の業者からマゴットセラピー用の蛆を入手し使用する。マゴットセラピーに使用される蛆はヒロズキンバエの蛆である。

マゴットセラピー用の蛆は潰瘍部に置き、蛆が逃げ出さないように、しかし呼吸は出来るようにカバーをかける。蛆は、選択的に腐って死んだ組織のみを分泌液(タンパク質分解酵素等を含む)で溶かして食べ、健常な組織は食害しない。これによって、正確に壊死組織のみが患部から除去される。また、同時に蛆が分泌する抗菌物質によって殺菌も行われる。この分泌液は、MRSAなどの薬剤耐性菌を含む様々な病原菌を殺菌することが知られている。蛆からの抗菌物質の分泌は、壊死物質の栄養素が細菌に収奪されることを妨げるという意味で合目的である。これらの蛆による活動によって潰瘍の改善がもたらされる。蛆は蛹になる前に除去され、治療を継続する場合はまた新たに蛆を投入する。

マゴットセラピーは特に糖尿病性壊疽に有効であり、日本国内においても実践例報告が行われており、良好な結果を得ている[2]

マゴットセラピーのメリット、デメリットとしては

メリット
禁忌症例が無い
麻酔を必要としない
安価(従来の治療と比較して)
副作用が少ない
その他の治療と併用が可能
デメリット
蛆が体に住み着く可能性がある
違和感を覚える場合がある(蛆が体の上を這いまわるため)
マゴットセラピーが無効な潰瘍がある
ある種の細菌が取り除かれることにより、別の細菌が台頭する菌交代現象が起こり、既存の感染が悪化することがある

などがあげられる。

外部リンク[編集]