トヨタ生産方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トヨタ生産方式(トヨタせいさんほうしき、Toyota Production System、略称TPS)は、工場における生産活動の運用方式の一つ。トヨタ自動車の強さを支える要素の一つとされる。
目次 |
[編集] 基本概念
豊田喜一郎らが提唱していた考えを大野耐一らが体系化したものである。その柱となるのが“7つのムダ”削減、ジャストインタイム、自働化である。おもに製造現場およびそれに付随するスタッフ部門で用いられている手法であるが、その考え方を基に間接部門や非製造業へ適用させていった業務改善手法をトヨタ式とも呼ぶ。
- ジャストインタイム(Just In Time;JIT)
- かんばん(Kanban)
- ムダ(Muda)
- 平準化(Heijunka)
- アンドン(Andon)
- ポカヨケ(Poka-yoke)
- 自働化(Jidoka)
- 改善(Kaizen)
- 見える化
[編集] 7つのムダ
トヨタ生産方式では、ムダを「付加価値を高めない各種現象や結果」と定義している。このムダを無くすことが重要な取り組みとされる。ムダとは、代表的なものとして以下の7つがあり、それを「7つのムダ」と表現している。
- 作り過ぎのムダ
- 手待ちのムダ
- 運搬のムダ
- 加工のムダ
- 在庫のムダ
- 動作のムダ
- 不良をつくるムダ
「手待ち(てまち)のムダ」は、「手持ち(てもち)のムダ」と誤表記・誤解される場合がある。また、上記のムダを改善しないことを8つ目のムダとすることもある。
「加工」の「か」、「在庫」の「ざ」、「作りすぎ」の「っ」、「手待ち」の「て」、「動作」の「と」、「運搬」の「う」、「不良」の「ふ」、と頭文字を取れることから、「飾って豆腐」とも呼ばれている。
[編集] ジャストインタイム
[編集] かんばん方式
「かんばん方式」を参照
上記「7つのムダ」を排除し、極力在庫を持たず、必要なものを、必要なだけ、必要な時にジャストインタイムで生産するなどの特徴を持つ。
使用した部品の補充を知らせる「帳票」をかんばんということから、かんばん方式とも呼ばれる。
一般にはジャストインタイム生産システムと知られている。
[編集] 多能工
1人の作業者が複数の工程の作業をこなせるようにトレーニングすることである。これにより
- 生産負荷が低い工程から高い工程へ人員を柔軟に移動させ、負荷の平準化を常に行えるようにする。
- 1人で複数の加工機械を受け持ち、工程の少人化を実施する。
[編集] 自働化
「無駄の徹底的な排除」を実現するための方法の一例として、「自動化」・「機械化」の意味合いを持つ言葉である、自働化がある。
無駄は排除しなければならないが、合理化を進めるあまりに従業員の人間性やインセンティブ(労働意欲)を無視してはならない。このことから、トヨタ自動車では自動化の事を自働化と呼んでいる。
[編集] にんべんのついた自働化
「自働化」とは、不良が発生した際に機械が自動的に停止し、後の工程へ良品のみを送るようにすること、公式ページでは通常の加工が完了したら機械を安全に停止させることも指すとしている。 豊田佐吉が発明した自動織機に、稼動中に糸が切れた際に自動で停止する装置が組み込まれていたことに由来している。
自動機械は人が止めるまで動き続けるが、その最中に調整がずれたり、供給される材料に異常があっても止まることなく動きつづける。この結果、多くの不良品を作りつづけることなり、7番目の無駄の元凶となってしまう。
最近でこそ各種センサーが高性能・低価格で普及し、自動停止は浸透しているが、この言葉が言われ始めた昭和40年代は、「オートメーション」という言葉が「最先端=高効率」と同義語として受け取られる風潮があり、「止まらない」機械が殆どであった。
[編集] カタログエンジニア
トヨタ生産方式では、買ってきた機械類を何の工夫もせずにそのまま使うことは好ましいとはされていない。機械を買ってきて、そのまま組み合わせて使用しているだけの人は「カタログエンジニア」などと呼ばれる。買ってきた機械に人間の知恵を織り込み、カタログ通りに機械を使う他社に対して差をつけることが求められる。
人が関わらない自動化をしてしまうと、機械へカイゼン(改善)の知恵を織り込めなくなることから、カイゼンを持続的に行うためにも人が関わる自働化が重要となってくる。
[編集] 問題点
なお、このトヨタ生産方式は、企業側からは賞賛され諸外国でも「カイゼン」の名で採用する企業も増え始めた。しかしこのトヨタ生産方式は会社側にとっての効率を考えたもので、そこで働く人員のことを考えていない面がある。「無駄」を省こうとする行為が過度の功利主義・拝金主義な考えに変わり、多くの効率化を従業員へ求めると結果的に従業員への負担が著しく増える結果となっている現状がある。
この事から会社と従業員双方にとって最良の方式かと問われると改善点が多く残る方式で、例えば過度の高効率化・利益追求型システムは人員抑制・人件費削減などにより格差を生み、部品を中国など人件費が安く低コストで製造できる海外へ大量に製造委託すると国内の製造業が非常に冷え込み、日本の経済、ひいてはその国民の生活まで冷え込む。
ジャストインタイムといっても、消費者は車を購入する際にディーラーの在庫から購入するわけではないので、結果的に納車まで時間がかかる。期間工や派遣社員といった非正規労働者を多く抱えた流動的な生産体制を取らないと実施できないシステムであるのも事実である。
資本主義・競争化社会の中で高い効率性を求めるシステムは企業として必須事項だが、日本の過剰労働問題や格差社会と重なり、近年ではこの方式を取り入れて企業業績は伸びても国内経済や下請け含めた従業員の雇用環境の改善が見られないなど問題点が多く指摘されはじめている。被雇用者に過労死や過労自殺、過労によるうつ病などを発生させていることも少なくない。現に、「トヨタ生産方式」生みの親であるトヨタ自動車自身が、社員へのサービス残業強要や過労死問題で労働基準監督署の査察を受けている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- トヨタ自動車株式会社 グローバルサイト
- 企業情報>トヨタの生産方式 - トヨタ自動車によるトヨタ生産方式の紹介

