ダッカメトロ6号線

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ダッカメトロ6号線
アガルガオン駅を走る6号線
アガルガオン駅を走る6号線
基本情報
現況 営業中
バングラデシュの旗 バングラデシュ
所在地 ダッカ
路線網 ダッカメトロ6号線
起点 ウッタラ北駅
終点 モティジール駅
駅数 17
路線番号 6
路線色 深緑色
開業 2022年12月29日
所有者 ダッカ・マス・トランジット・カンパニー・リミテッド
路線構造 高架
路線諸元
路線距離 21.17km
軌間 1,435 mm (標準軌)
線路数 複線
電化方式 直流1500V 架空電車線方式
最高速度 100 km/h
路線図
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ダッカメトロ6号線あるいはMRT6号線ベンガル語: এমআরটি লাইন ৬、MRTはマス・ラピッド・トランジットの略)は、バングラデシュダッカを走るダッカメトロの都市鉄道路線である。同国初の都市鉄道として円借款を用いて日本企業群が関与して建設され、ウッタラ北駅からカマラプール駅迄を結ぶ予定で、2022年12月29日にウッタラ北駅からアガルガオン駅迄が先行開業し2023年12月13日にウッタラ北駅~モティジール駅開業

概要[編集]

バングラデシュ史上初となる都市鉄道として首都ダッカに開業した鉄道路線で、ダッカの中心街を貫通する鉄道路線である。過密による交通渋滞や大気汚染が問題となっている同地では、本路線の開業によって道路交通では2時間弱かかる地域を鉄道で35分で移動出来るようになるとされ、中心部の過密を分散させる効果も期待される路線である[1]

建設に際しては日本政府のインフラシステム輸出戦略に伴って、国際協力機構の協力の下、川崎重工業鉄建建設三菱商事日本信号日本工営三井住友建設等の日本企業も参画した[2]

歴史[編集]

計画[編集]

2005年、世界銀行はバングラデシュ政府に対してダッカでのマス・ラピッド・トランジットの導入を勧めた。同年に米国のルイ・バーガー・グループはダッカの交通計画を準備[3]、世界銀行はこれを修正して3路線の計画を出した。

3年後、国際協力機構がメトロレール計画に加わると、計画のうち6号線が最も重要で且つ経済的影響も大きい路線と判断した。2010年度から翌年度にかけて、実現可能性の調査が始まった。2013年に国際協力機構が資金提供する事を決定した[4]

大凡のルートは2011年時点で策定されており、ウッタラからサイェダバード迄の路線と決まっていた[5]。その後、一部のルートを再設定する事となった他、国際協力機構の求めていた地下鉄計画を建設費の問題から全線高架に切り替える等の変更が行われた。そうして最終的に2014年12月28日に6号線計画の最終決定が行われた。より詳細な計画は2016年8月に示された[3]

建設[編集]

建設中の6号線

2016年7月1日にダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件が発生。当時、6号線は入札が行われていた最中であったため、安全上の理由から数社が撤退した。また、この事件で国際協力機構の日本人職員7名が殉死した。そのためバングラデシュ政府が保証をつけ、半年後に着工された[6]。着工後、バンガバンドゥ軍事博物館前に作る予定であった駅に対してバングラデシュ空軍が反対したため、この駅を国会議事堂附近に移動させる事とした[7]。その後、新型コロナウイルス感染症の世界的流行に伴うロックダウン政策によって数ヶ月間の工事中断時期があった[4]

2021年8月29日、未だ1/3程が建設中ではあるものの、試運転も開始された[8][9]。高架橋への全資材の搬入は2022年1月27日に完了した[10]

2022年にはプラットホームが狭いと公社から申告されたため、プラットホーム拡張用に新たに土地を取得する事となった[11]

開業  各駅の詳細な開業日は駅一覧を参照願います。[編集]

ウッタラ北駅に停車する6号線車輛

2022年12月28日、ウッタラ北駅アガルガオン駅の間が開業し、開業式典にはシェイク・ハシナ首相も出席した。翌日に一般利用が始まったが、この時点で開業した駅は両駅のみで、途中駅は全て工事中であった[12]。また、営業時間も1日4時間、火曜日運休という状況の中での運行開始であった[13]。翌2023年1月25日に途中駅のパラビ駅が開業した[14]

2023年12月31日 ウッタラ北駅~モティジール駅までの16駅すべて開業               駅構内での乗車券販売の混雑解消のために、新たにラピッドパスカード(預り金 200タカ(約260円)+乗車券分 200タカ)を外部の売店、Dutch Bangla Bankの特定の支店で販売を開始した。  駅構内での販売は当日券およびMRTパス(預り金 200タカ+乗車券分 300タカ(約390円))  尚、ラピッドパスカード、MRTパスを使用した場合当日券の料金より10%割引が適応される。

2024年1月20日 ウッタラ北駅⇒モティジール駅行き 7時10分始発 モティジール駅⇒ウッタラ北駅行き 20時40分最終 11時30分~16時は12分間隔 それ以外は10分間隔にて運行開始 金曜日は運休

2024年2月17日 ウッタラ北駅⇒モティジール駅行き 7時10分始発 モティジール駅⇒ウッタラ北駅行き 20時40分最終 11時30分~16時は12分間隔 それ以外は8分間隔に短縮    金曜日は運休

2024年3月27日~4月10日 (ラマダン後半の15日間)ウッタラ北駅⇒モティジール駅行き 20時~21時 モティジール駅⇒ウッタラ北駅行き 20時40分~21時40分 12分間隔での臨時運転

延伸[編集]

6号線のカマラプール駅迄の延長計画は2019年に策定された[15]。しかし鹿島建設はこの計画に難色を示し、撤退を示唆した。そこでダッカ・マス・トランジット・カンパニー・リミテッドは、同社に対して3つの案を提出した。地下鉄となるダッカメトロ1号線の上に6号線の駅を建設する計画と現行の駅の外側に新たに駅を建設する計画にも難色を示されたが、鉄道省が用地を提供する計画で承認された[16]。これによって総工費は2200億タカから3350億タカまで増加した。また総延長も21kmに延びる事となった。2023年12月にモティジール駅迄の開業を見込んでいるが、そこからカマラプール駅迄の開通は2025年12月の見込みとなった[17]。延伸工事は2023年1月に始まった[18]

車輛[編集]

駅に到着する列車

川崎重工業製の6両編成の車輛が24編成導入された[2]。車長は19.8m、幅は2.95m、高さは4.1m。直流電化1500V架空電車線方式で集電し、最大運行速度は時速100km、エアーコンディショナーが1車両2セット完備されている[19]。2024年1月4日より1編成に車内広告が施されて営業運転を行っている。

女性専用車両も各編成に1両導入されている[20]

駅一覧[編集]

駅名の開業日が”建設中”になっている駅は未開業である。

駅番号 駅名 駅間
キロ
累計
キロ
接続路線 所在地 開業日
日本語 ベンガル語
1 ウッタラ北駅 উত্তরা উত্তর 0.0 0.0 バス停 バングラデシュ道路交通公社シャトルバス ウッタラ 2022年12月29日[14]
2 ウッタラ中央駅 উত্তরা মধ্য 2023年2月18日
3 ウッタラ南駅 উত্তরা দক্ষিণ 2023年3月31日
4 パラビ駅 পল্লবী パラビ 2023年1月25日[21]
5 ミルプール11駅 মিরপুর ১১ ミルプール 2023年3月15日
6 ミルプール10駅 মিরপুর ১০ 地下鉄 ダッカメトロ5号北線(計画中) 2023年3月1日
7 カジパラ駅 কাজীপাড়া 2023年3月15日
8 シェウラパラ駅 শেওড়াপাড়া 2023年3月31日
9 アガルガオン駅 আগারগাঁও 11.73 バス停 バングラデシュ道路交通公社シャトルバス アガルガオン 2022年12月29日
10 ビジョイ・サラニ駅 বিজয় সরণি テイガオン 2023年12月13日
11 ファームゲート駅 ফার্মগেট 2023年11月5日
12 カルワン・バザール駅 কারওয়ান বাজার 地下鉄 ダッカメトロ5号南線(計画中) 2023年12月31日
13 シャーバグ駅 শাহবাগ シャーバグ 2023年12月31日
14 ダッカ大学駅 ঢাকা বিশ্ববিদ্যালয় 2023年12月7日
15 バングラデシュ事務局駅 বাংলাদেশ সচিবালয় シェグンバギチャ 2023年11月5日
16 モティジール駅 মতিঝিল 20.1 地下鉄 ダッカメトロ2号線(計画中) モティジール 2023年11月5日
17 カマルプール駅 কমলাপুর 1.16 21.17 鉄道駅 バングラデシュ鉄道
地下鉄 ダッカメトロ1号線(建設中)、2/4号線(計画中)
建設中

2024年12月完成予定


参考文献[編集]

  1. ^ バングラ初の都市鉄道開業 日本支援、渋滞緩和へ”. 時事通信 (2022年12月29日). 2023年2月10日閲覧。
  2. ^ a b さかい もとみ (2021年9月17日). “日本製電車が快走、バングラ初「都市鉄道」の全貌”. 東洋経済. 2023年2月10日閲覧。
  3. ^ a b Rahman, Shamim (2022年12月23日). “পুরোটাই উড়ালপথে নির্মাণ ভারতের ‘মেট্রো ম্যান’ শ্রীধরনের পরামর্শে”. Bonikbarta.net. 2022年12月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月26日閲覧。
  4. ^ a b Zaman, Sheikh Shahriar (2022年12月25日). “মেট্রোরেল ছিল বিরাট এক চ্যালেঞ্জ”. Bangla Tribune. 2022年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月26日閲覧。
  5. ^ Rahman, Shamim (2022年12月24日). “মেট্রোরেলেও ছাপ রেখে গেছেন অধ্যাপক জামিলুর রেজা চৌধুরী”. Bonikbarta.net. 2022年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月27日閲覧。
  6. ^ “Fact box: All you need to know about metro rail project”. (2018年4月30日). オリジナルの2022年11月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221129023600/https://www.thedailystar.net/country/dhaka-metro-rail-project-in-bangladesh-fact-box-all-you-need-to-know-about-this-1569868 2022年12月27日閲覧。 
  7. ^ “যানজটের শহরে শুরু হচ্ছে মেট্রোরেলের যাত্রা”. Prothom Alo. (2022年12月28日). オリジナルの2022年12月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221228002006/https://www.prothomalo.com/bangladesh/5wc4ytuou9 2022年12月28日閲覧。 
  8. ^ Roy Kaushik, Abhijit (2022年9月5日). “মেট্রোরেল স্টেশনে পদে পদে প্রযুক্তি, শেষের পথে ৯ স্টেশন”. Dhakatimes24.com. 2022年12月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月26日閲覧。
  9. ^ মেট্রোরেল: পরীক্ষামূলক ট্রেন চলাচল শুরু, ঢাকার যাত্রীরা কবে চড়তে পারবেন?”. BBC Bangla (2021年8月29日). 2022年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月27日閲覧。
  10. ^ “Dhaka Metro Rail milestone: Last girder segment of MRT-6 installed”. The Daily Star. (2022年1月27日). オリジナルの2022年12月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221227001723/https://www.thedailystar.net/news/bangladesh/transport/news/dhaka-metro-rail-milestone-last-girder-segment-mrt-6-installed-2948391 2022年12月27日閲覧。 
  11. ^ Rahman Rubel, Maidur (2022年5月28日). “মেট্রোরেলের ল্যান্ডিং স্টেশন নিয়ে জটিলতা, পরিকল্পনায় ভুল (ভিডিও)”. Rtvonline.com. 2022年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月27日閲覧。
  12. ^ “মেট্রোরেলে চড়তে ভিড়, যাত্রীদের আনন্দ-উচ্ছ্বাস”. Prothom Alo. (2022年12月29日). オリジナルの2022年12月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221229054010/https://www.prothomalo.com/bangladesh/capital/l29f3fq5iy 2022年12月29日閲覧。 
  13. ^ “প্রধানমন্ত্রীকে নিয়ে মাত্র ১০ মিনিটে দিয়াবাড়ি থেকে আগারগাঁওয়ে মেট্রোরেল”. Prothom Alo. (2022年12月28日). オリジナルの2022年12月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221228083448/https://www.prothomalo.com/bangladesh/capital/iu9w2xal8t 2022年12月28日閲覧。 
  14. ^ a b প্রতিবেদক, নিজস্ব. “চালু হলো পল্লবী স্টেশন, ৭ মিনিটে পল্লবী টু আগারগাঁও” (ベンガル語). Prothomalo. 2023年1月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
  15. ^ Adhikari, Tuhin Subhra (2019年12月6日). “Metro Line-6 to link Kamalapur”. The Daily Star. オリジナルの2022年11月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221129094329/https://www.thedailystar.net/backpage/news/metro-line-6-link-kamalapur-1836388 2022年12月27日閲覧。 
  16. ^ Adhikari, Tuhin Subhra (2020年1月22日). “মেট্রো লাইন ৬ এর বর্ধিত পরিকল্পনা নিয়ে রেলওয়ের আপত্তি”. The Daily Star. オリジナルの2022年12月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221226223205/https://bangla.thedailystar.net/node/132025 2022年12月26日閲覧。 
  17. ^ মেট্রোরেলে ব্যয় বাড়ছে ১১ হাজার ৫১৪ কোটি, সময় লাগবে আরও দেড় বছর”. Jago News (2022年7月18日). 2022年12月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月26日閲覧。
  18. ^ “মেট্রোরেলের কমলাপুর অংশের নির্মাণকাজ শুরু”. Daily Inqilab. (2023年1月13日). オリジナルの2023年1月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230123061248/https://www.dailyinqilab.com/article/548094/%E0%A6%AE%E0%A7%87%E0%A6%9F%E0%A7%8D%E0%A6%B0%E0%A7%8B%E0%A6%B0%E0%A7%87%E0%A6%B2%E0%A7%87%E0%A6%B0-%E0%A6%95%E0%A6%AE%E0%A6%B2%E0%A6%BE%E0%A6%AA%E0%A7%81%E0%A6%B0-%E0%A6%85%E0%A6%82%E0%A6%B6%E0%A7%87%E0%A6%B0-%E0%A6%A8%E0%A6%BF%E0%A6%B0%E0%A7%8D%E0%A6%AE%E0%A6%BE%E0%A6%A3%E0%A6%95%E0%A6%BE%E0%A6%9C-%E0%A6%B6%E0%A7%81%E0%A6%B0%E0%A7%81 2023年1月23日閲覧。 
  19. ^ Rolling Stock for Dhaka MRT Line-6 First Shipment”. Kawasaki.com (2021年3月4日). 2022年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月27日閲覧。
  20. ^ মেট্রোরেলে নারীদের জন্য আলাদা কোচ”. Bdnews24.com (2022年12月26日). 2022年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月27日閲覧。
  21. ^ মেট্রোরেলের পল্লবী স্টেশনে থামা শুরু করলো ট্র্রেন” (ベンガル語). bangla.dhakatribune.com (2023年1月25日). 2023年1月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。

外部リンク[編集]