ショート スターリング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ショート スターリング

編隊を組んで飛行するスターリング

編隊を組んで飛行するスターリング

ショート スターリング(Short Stirling)は、第二次世界大戦初期のイギリス空軍で使用されたショート・ブラザーズ社製の爆撃機である。イギリス空軍初の4発爆撃機で、ハンドレページ ハリファックスアブロ ランカスターと共に戦略爆撃機三本柱となったが、高高度性能が悪かったことと爆弾搭載に制限があったことが原因で3機種の内で一番早く退役した。

開発経緯[編集]

スターリングは、1936年にイギリス空軍から出された4発爆撃機の仕様に従って開発された機体である。飛行艇専門メーカーであったショート社に試作命令が出された背景には、4発の飛行艇の製造経験があったことが大きい。事実、スターリングの設計は1934年から開発が始まっていたサンダーランド飛行艇を基礎にしている。しかし、陸上機の製造に慣れていないショート社では、まず、1/2に縮小した実験機(会社名S.31)を製作、飛行させて各種データを取得した後、試作機の製造にとりかかった。試作第1号機は1939年5月に初飛行したが着陸に失敗して破損し、その後に飛行した試作2号機が実質生産第1号機となった。

空軍からの仕様では当時の標準格納庫で使用できるよう全幅を厳しく制限したため、出来上がった機体は爆撃機としては異常な程アスペクト比が小さく総重量も機体規模の割りに少ない窮屈な物になった。また、サンダーランド飛行艇と主翼やフラップの配置が同じであり、飛行艇のように肩翼式を採用したため主脚は長く複雑な形をしていた。尾輪は引き込み式だが、独立した2輪が並んでいる他では例のないタイプであった。爆弾倉は胴体下面の他、主翼内にも小型爆弾用の爆弾倉が設けられていた。

2号機の試験後量産を開始し、1940年8月には部隊配備された。しかし、機体の不具合の調整に時間をとったこととドイツ軍の爆撃による生産の遅れがあって、実戦に参加したのは1941年に入ってからである。

活動[編集]

1941年から本機は爆撃任務に参加した。初陣は1941年2月のロッテルダムへの夜間爆撃で、昼夜を問わず爆撃任務を行った。初期においては昼間爆撃を援護戦闘機無しでおこなったが、強力な武装によって大きな戦果をあげた。ドイツ占領下のフランスへの攻撃をブレニム軽爆撃機に代わって行ったり、ベルリンチェコ、北イタリアへの爆撃も行っている。1941年末には、流石に昼間作戦に従事するには無理があったため、夜間攻撃任務に従事するようになった。

スターリングは、イギリス空軍初の近代的な4発戦略爆撃機だったが、欠点も多かった。アスペクト比の小さな窮屈な機体のせいで、高高度性能が悪く爆弾搭載量が制限されていた。また、爆弾倉が胴体、主翼に細分化されていることにより、大型爆弾が搭載できなかった。加えて、主脚や尾輪の複雑な構造は、しばしば着陸時に破損事故を引き起こした。このため、後から出現したハリファックス 、ランカスターと比べると、性能的に見劣りした。

1943年に入ると性能的に時代遅れになってきたため、あまり重要ではない目標の攻撃や機雷敷設、レーダー妨害作戦に利用されるようになった。そして1944年9月に最後の爆撃任務を行った後は、グライダー曳航や輸送任務に就いた。グライダー曳航型の初陣は1944年6月のノルマンディー上陸作戦である。しかし、この任務でも長続きせずハリファックスやランカスターの派生型に取って代わられ、1946年には全機退役した。

形式[編集]

MK.1
最初の量産型で1940年から部隊配備された。エンジンは、ブリストル ハーキュリーズ11を装備した。ごく初期にはプロペラにスピンナーが装備されていたが、早い内に外された。756機製造。
MK.2
エンジンをライト サイクロンに換装した型だが、2機の試作のみ。
MK.3
MK.1の改良型で、エンジンをブリストル ハーキュリーズ16に換装し、胴体背面の銃座を新型にして防御武装強化した。1943年~1944年の標準型で875機製造。
MK.4
輸送・グライダー曳航型で、機首と胴体背面の銃座が外され、グライダー曳航装置が取り付けられていた。また、エンジンの過熱強制冷却ファンを装備し、プロペラ・スピンナーの装備が復活した。577機(MK.3からの改造機も含む)製造。
MK.5
貨物輸送機型で、武装は完全に撤去されていた。1945年1月から就役を開始し主に極東方面で使用されたが、1946年にはアブロ ヨークと交替して退役した。160機製造。

スペック (MK.3)[編集]

  • 全長:26.60 m
  • 全幅:30.21 m
  • 全高:6.93 m
  • 機体重量:19,580 kg
  • 全備重量:31,750 kg
  • エンジン:ブリストル ハーキュリーズ16 空冷14気筒エンジン 1650 hp× 4
  • 最大速度:434 km/h
  • 実用上限高度:5,190m
  • 航続距離:3,240 km
  • 武装
    • 爆弾 6,350 kg
    • 7.7 mm機銃×8
  • 乗員:7~8名

関連項目[編集]