シェフ救済ライブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

シェフ救済ライブ』(シェフきゅうさいライブ、原題:Chef Aid、直訳:シェフの救済)はアメリカコメディ・セントラルのテレビアニメシリーズ『サウスパーク』の第27話(シーズン2第14話)である。1998年12月7日に放送された。監督はトレイ・パーカー、脚本はパーカーとマット・ストーン

内容としてはOJシンプソン事件の被告弁護人を務めたジョニー・コクランへの風刺回となっており、特にここで用いられた「チューバッカ弁論」は、実際にOJシンプソン事件について論説する専門家に引用されるなど、インターネットミームの1つとなった。また、シェフが大スター達の成功に一役買っていたことが明らかになり、エルトン・ジョンオジー・オズボーンらが登場する(声も実際に彼らが担当している)。このメインストーリーからはほぼ独立する形で、ギャリソンの話も展開され、第11話から始まったハット君との問題が解決する。

あらすじ[編集]

20年前に作った曲をレコード会社が無断で使用していることを知ったシェフは、金銭はいらないものの作曲者として名前を載せて欲しいとレコード会社に頼み込む。ところがレコード会社は、シェフの頼みを拒否した挙句、シェフを業務妨害で訴える。

シェフにはカイルの父が弁護につき、20年前のシェフの録音もあるため、勝訴は確実と思われたが、レコード会社は、OJシンプソン事件で活躍したジョニー・コクランを雇う。そしてコクランはOJシンプソン事件でも用いたというチューバッカ弁論を用いて陪審員を混乱させ、レコード会社を勝たせる。そしてシェフは裁判所より、24時間以内に200万ドルをレコード会社に払うか、4年の懲役を受けることを宣告される。

期限内にもかかわらず、シェフの私物を一切合財取り立てるレコード会社の横暴さに怒ったシェフは、大金を集めて、自分もコクランを雇い、逆にレコード会社を提訴することに決める。

エルトン・ジョンなど、音楽業界の大物達がシェフの昔の知り合いと知ったスタンらは彼らにシェフのお菓子を売ってお金を得ようとする。その際に、彼ら大スター達がシェフのおかげで現在の地位を築けたことが判明し、彼らはシェフに多大な感謝の念を抱いてた(そのためお菓子をたくさん買ってもらえるが、しょせんは小額)。一方、シェフはカイルの母や市長を相手に娼夫として大金を稼いでいた。しかし、到底目標額には達せず、シェフは警察署に収監される。

その後、スタンらはシェフを助ける大金を得るため、シェフ救済ライブを開く。するとエルトン・ジョンが、自分と同じくシェフに恩のあるスター達を呼び集めて駆けつけてくる。オジー・オズボーンなど、大スター達の競演にライブは大成功を収めつつあったが、レコード会社の社長はステージを破壊し、ライブを失敗させる。しかし、そのライブを見たコクランは改心し、無償でシェフの弁護を引き受ける。

コクランは再びチューバッカ弁論を用いて、今度はシェフを勝訴させ、解放されたシェフは自分を助けてくれた人たちに感謝の言葉を述べる。

ギャリソンのパート[編集]

この回は上記のメインストーリーからほぼ独立してギャリソンの話が平行展開される。

ギャリソンは相変わらず、ハット君の代わりに小枝君を人形として扱っており、ハット君の名前が出るたびに(あたかも別れた彼氏に未練を残し嫉妬する女性のように)癇癪を起こす。やがて小枝君が何者かに襲われ(ギャリソン自身がやった暗喩的な描写があるが、ギャリソンにはその記憶がない)、ギャリソンは小枝君が本当に人間であるかのように病院や警察を巻き込むが、単なる小枝のため、まともに相手にされない。

やがてハット君が見つかるがギャリソンは再度ヒステリーを起こし、半裸で家の外に出て人形に本気で怒っていたので、拘置所に収監される。何で自分が捕まったのかわからず混乱するギャリソンに、同じく収監されていたシェフが、分裂症だと指摘する(しかし、ギャリソンは認めない)。

その後、車を使って拘置所の壁が破壊され、ギャリソン(とシェフ)は脱獄するが、その車の運転席には(人形なのに自律して動いたかのような)ハット君がいる。最終的にギャリソンは自分の心に素直になり、ハット君と寄りを戻す。

チューバッカ弁論と反響[編集]

この回はOJシンプソン事件を風刺した回であり、実際に被告弁護人を務めたジョニー・コクラン本人が登場し、作中でもOJシンプソン事件についてたびたび言及される。ここでレコード会社が勝利するきっかけとなったコクランの弁論が以下のものである。

コクラン:
「…この「仮想」陪審団の皆さんに、最後に考えていただきたいことがひとつあります。みなさん、これがチューバッカです。チューバッカは惑星キャッシーク出身のウーキーです。しかし、チューバッカが住んでいるのは惑星エンドアです。さあ、考えてみてください。これは何とも理屈に合わないことではありませんか!」

ジェラルド・ブロフロフスキー(シェフの弁護人):
「クソっ! ... チューバッカ弁論を使ってるぞ!」

コクラン:
「何でまた、8フィートもあるウーキーが、2フィートしかないイウォークがうじゃうじゃしているエンドアに住みたがったりするんでしょう? これはまったく理屈に合いません。しかし、もっと重要で、皆さん自身が問うべきなのは、このことが本件裁判に何の関係があるのか?ということです。何もありません。皆さん、これは本件に何も関係がありません! まったく理屈に合いません! 私を見てください。私は、大手レコード会社を弁護する弁護士ですが、話しているのはチューバッカのことです! これは理屈に合っていますか? 皆さん、私は理屈に合う話なんか何もしていないのです。何も理屈なんか通っていません! ですから皆さんには、思い出していただかなければなりません。皆さんが陪審員室で審議したり、奴隷解放宣言を文法的に活用させたりすることは、理屈に合っているのでしょうか? ノー! この仮想陪審団の皆さん、そんなことは何も理屈に合いません! チューバッカがエンドアに住んでいるのなら、皆さんは無罪放免にすべきです! 弁護側の弁論を終わります。」


この特に最後の部分が、コクランによる、O・J・シンプソン事件の最終弁論のパロディ、風刺になっている。裁判の過程で検察は殺人現場で発見された血の付いた手袋を被告にはめるよう促したが、手袋が小さすぎてはめるのが容易ではなかった。コクランは最終弁論でこのことを持ちだし、「手袋が入らなかったのなら、皆さんは無罪放免にすべきです!」と陪審員達に主張した。これは、他にもシンプソンを犯人とみなせる有力な証拠があったにもかかわらず、様々な事象を並べ立てて聞き手を混乱させ、あたかも手袋のみが決定的な証拠であるかのように印象付けた[1]。これは最終的にシンプソンが無罪を勝ち取った一因になったと考えられている。

これはそのまま「チューバッカ弁論」として、専門家や著名人に引用されインターネット・ミームとして広がった。

オリジナルアルバム[編集]

このエピソードに基づいて、全21曲のオリジナルアルバムが発売されている。内容としてはこの回を含めたそれ以前の楽曲や未放送曲が収録されており、ジャンルを問わない多くの著名なアーティストがカメオ出演しているのが特徴である。

脚注[編集]

  1. ^ CNN Interactive: Video Almanac - 1995”. 2011年1月20日閲覧。